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おもてなしの天才 
全米屈指のレストラン「ユニオン・スクエア・カフェ」の創業者が語るホスピタリティ・ビジネスの本質

更新日 : 2009年03月09日 (月)

第4章 ホスピタリティとサービスとの違いとは?

ダニー・マイヤーさん

マイヤー:  ホスピタリティとサービスは全く別物です。今の時代、パフォーマンスは質とサービスによって定義されますが、その部分で差別化できるのは全体の49%にしか過ぎないと私は信じています。

パフォーマンスは、例えばローストチキンがおいしいということ。ローストチキンがおいしくなければ、そもそもスタートラインに立てません。しかし、一番お気に入りの店になるには十分ではないのです。

残りの51%を獲得するためには、いかにしてお客さまを喜ばせるか、それこそがホスピタリティです。ザガット氏は間違っていました。サービスとホスピタリティは一緒ではありません。サービスは頭を使う、ホスピタリティは心を使うのです。サービスは技術、ホスピタリティは感情を使います。

サービスは一方通行です。私はレストランのタイプによって異なったサービスをするようにしています。でもホスピタリティは、どこでも同じでなければならない。

ホスピタリティというのは対話です。例えば、オーダーメードの服を着たことのある方はいませんか。それはものすごく特別なことではないですか。自分の腕の長さを測ってもらい、ちゃんと寸法を調べて作ってもらう。それは本当に特別な体験で、ただ単にブティックに行って買うのとは違う。それこそがホスピタリティです。

ダニー・マイヤーさん
本を書いている時、ホスピタリティとは何なのかを説明するために言葉を選ばなければなりませんでした。従業員には「for somebody(誰々のために)」はホスピタリティ、サービスは「to somebody(誰々に対して)」だと言いました。誰かが自分の側に立ってくれているように感じる時、ホスピタリティがあるとわかるという話もします。誰も自分の側に立っていない気がする時は、そこにホスピタリティはありません。

例えば、飛行機に乗るとキャビンアテンダント(CA)が食事を配ります。「何をお飲みになりますか?」と聞かれて、「氷抜きでお水をください」とお願いします。それでも、ときどき氷を入れて持ってきたりします。パフォーマンスが悪いですね。

きちんと氷なしでお水を持ってきてくれたとしても、私の顔も見ないでテーブルの上にボンと置いて次のお客さまのところに行ってしまう。これはホスピタリティがないですね、私の側に立って行動してくれていません。ちなみに、サービスとホスピタリティでは、本当に日本の航空会社は素晴らしい。アメリカの航空会社よりずっと素晴らしいと、私は恥ずかしく思うぐらいです。

でも、こんなこともありました。アメリカの航空会社、ジェットブルーに乗った時のことです。CAに「氷なしでお水をお願いします」と言ったら、その通りに持ってきてくれました。それから2時間ほど経った頃、またCAが来て「お水お持ちしましょうか。氷なしがよろしかったですよね?」と聞いてくれたのです。びっくりしました。これがホスピタリティです。

航空会社は何百万ドルというお金を燃料やコンピュータ、航空機、座席、そして人件費などに使っているのに、ほんのちょっとの資金を使って乗務員にトレーニングを行うことがなぜできないのかと思います。でも、氷なしのお水を覚えていてもらえたので、私はジェットブルー航空が大好きになりました。

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ホスピタリティ・ビジネスの本質
Danny Meyer (ユニオン・スクエア・ホスピタリティグループ(USHG)の最高経営責任者)

「ニューヨークで最も予約が取れないレストラン」として名を馳せるユニオン・スクエア・カフェの創業者ダニー・マイヤー氏は、27歳で起業して以来、ニューヨーカーを惹きつけて止まない数々のレストランビジネスを成功させてきました。 「おもてなしの心がもつ力を理解し、うまく活用したいという思いが、成功の鍵とな....


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