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おもてなしの天才 
全米屈指のレストラン「ユニオン・スクエア・カフェ」の創業者が語るホスピタリティ・ビジネスの本質

更新日 : 2009年01月21日 (水)

第1章 祖母の「花壇のレッスン」で学んだこと

ダニー・マイヤーさん

マイヤー:  皆様、こんばんは。今日私が話をすることは、どこでも通用する普遍的なホスピタリティについてです。ホスピタリティ——おもてなしの心は、東西でも違いのない人間の文化です。

私は、「なぜ私たちのレストランがうまくいっているのか」を知りたくて、著書『おもてなしの天才』を書きました。どんなビジネスでもミスは起こるもので、ずっとミスをなくしたいと考えてきました。でもある日、ミスを振り返ることも重要だけれど、自分がよくやったことに着目して、そこから学ぶことも重要だと思ったのです。

私は、アメリカ中部のミズーリ州セントルイスで幼少を過ごしました。幼い頃、近くに住む祖母の家を訪ねるのが大好きでした。祖母はガーデニングに長けていて、彼女が花を見つめると花が開くかのような印象でした。彼女は私に軍手を渡して、草むしりの方法やあらゆる種類の雑草について教えてくれました。まだ6歳でしたが、草取りをすることをとても誇りに思っていました。祖母はそうやって私に仕事をさせたわけです。

翌年また雑草を抜こうと思った時、祖母は「どうやったらすてきな花壇がつくれるのか教えてあげよう」と言ったのです。「花壇作りの過ちは、雑草にばかり注目してしまうことだよ」と。祖母は、花が大きく美しく育つと日光を遮蔽するので、雑草を抜かなくても大丈夫なのだということを教えてくれたのです。

ダニー・マイヤーさん
自分がレストランを経営するようになって、そのことを思い出しました。「なんで、あのコックは、あのウエイターはああいうミスをするんだ?」と思っていた頃です。祖母の「花壇のレッスン」は、ビジネスでもとても重要だったのです。私は本当に優秀なウエイターや、本当においしい食事をつくれるコックと十分な時間をとっていませんでした。その結果、何が起きたのかというと、雑草がたくさん出てきて大きな花が育たない、ということでした。

私たちは、レストラン事業を「ホスピタリティのビジネス」と呼んでいます。ホスピタリティとはどういうものなのでしょう。「サービスとは何ぞや」ということは、ビジネスを始めた頃に聞きました。例えば、「レストラン事業で成功するには、すごいサービスをすることだ」と。でも、ホスピタリティについては、誰も教えてくれませんでした。

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全米屈指のレストラン『ユニオン・スクエア・カフェ』の創業者が語る
ホスピタリティ・ビジネスの本質
Danny Meyer (ユニオン・スクエア・ホスピタリティグループ(USHG)の最高経営責任者)

「ニューヨークで最も予約が取れないレストラン」として名を馳せるユニオン・スクエア・カフェの創業者ダニー・マイヤー氏は、27歳で起業して以来、ニューヨーカーを惹きつけて止まない数々のレストランビジネスを成功させてきました。 「おもてなしの心がもつ力を理解し、うまく活用したいという思いが、成功の鍵とな....


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