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『ケロッグ大学大学院 モーニング・セッション「日本から米国、そして世界への挑戦~サイボウズからLUNARRへ~」』

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更新日 : 2008年11月14日 (金)

第7章 マーケットを制する企業立地とサービスのポイント

高須賀宣さん(右)と高橋英伸さん

会場からの質問: どうしてポートランド、オレゴンを起業の場に選ばれたのでしょうか。例えばIT系で、日本であれば東京に人・モノ・金・情報が集まって、そちらの方が起業するうえでアドバンテージがいっぱいあると思います。それと同じように西海岸であれば、シリコンバレーであったり、シアトルであったりすると思うのですが。

高橋英伸: それはよく聞かれる事なのですが、まず、シリコンバレーを選ぶのは大きな間違いで、ベイエリアはすごいからそこに行くんだというのは、幻想だと思います。確かに、情報や流通ステージがあって、お金も流通していますが、競争が激しすぎて、日本人が行って本当の意味での情報とお金にアクセスすることは不可能です。

僕は愛媛県松山でサイボウズをつくったのですが、松下電工から外に出たとき、全然知られていないわけじゃないですか。でも松山に行った97年当時、地元紙が取り上げてくれたことで、そこから愛媛のいろいろな人とつながったんですね。

東京はノイズが多いんです。起業した時点で情報を求めていたら自分が決めたところに集中できないから、スタートアップのときは、もうそんなに情報は要らないんですよ。

僕がポートランドを選んだ理由は、「ここなら頭ひとつ突き抜けて目立てる」と思ったからです。ポートランドの経済人と友達になって、そこから全米の経済人の人を紹介してもらおうと思いました。ベンチャーは弱者ですから、僕の力量だったらここならいけるかな、という感覚でポートランドを選んだんです。

会場からの質問: 日本発のITベンチャーが世界に出て行く、あるいは新たに生まれてくる可能性があるのかどうか、その辺をどうお考えでしょうか?

高橋英伸: それを信じてサイボウズでやっていたのですが、僕の結論としては不可能だと思いました。僕らの業界というのは言語とすごく結びついているので、まず「サービスを英語で始められるか」というのは非常に大きいと思います。

重要なのは「英語でサービスをスタートして、英語のマーケットを取れるか」というところにあると思います。日本でやってもいいと思いますが、ただベンチャーの場合、マーケットが足元にない。つまり日本のユーザーを取れないというのは、なかなか難しいと思います。

会場からの質問: ビジョンや戦略を人に伝えて動いてもらうのは非常に難しいと思うのですが、ご自身が普段コミュニケーション上心掛けている点はありますか? それと経営者の中で、この人はコミュニケーションが上手いなという人がいれば、なぜそう思うのかを教えていただければと思います。

高橋英伸: 僕は多分コミュニケーションはめちゃくちゃ下手だと思います。ただ、いつも気をつけているのが、ごまかさないようにしようということです。例えば「まあこいつが言っているから、こいつの顔をつぶしたらあかんから」といったことで、小さい自分の自由を犠牲にすると、大きな自分の自由を犠牲にすることになるし、小さいごまかしが大きなごまかしになって、それが事業を率いていくにおいては最悪な状態を招くと思うのです。

とにかく本当に自分が面白いものは面白いと言うし、「これはあかんな」と思うのは、上手に「あかん」と言わないといかんと。絶対にごまかさない、妥協しないということをコミュニケーション上、注意しています。

この人はすごいなと思ったのは松下幸之助さん。言い尽くせませんが、まず「絶対に難しい言葉を使わない」ということを徹底されています。僕なんかつい自分にとって楽だからIT業界の言葉を使ってしまうのですが、それは本当によくないと思います。

もう1つ、彼は話を聞いていると、同じことを繰り返すんですね。しかも違う表現で同じことを相手に分かりやすく3回ぐらい言うので、何となく残ってしまう。そういう意味で本当にすごい人だと思っています。

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