記事・レポート
『ケロッグ大学大学院 モーニング・セッション「日本から米国、そして世界への挑戦~サイボウズからLUNARRへ~」』
更新日 : 2008年09月10日
(水)
第1章 創業への思いとベンチャー企業の醍醐味
—高須賀宣さんは、日本のグループウェアのトップベンダーであるサイボウズを創業者社長として立ち上げ、マザーズ、そして東証への上場に導いた日本を代表する起業家の1人です。そうした成功の中で突然社長を退任し、現在ポートランドでLUNARRという全く新しいインターネットサービスの立ち上げにチャレンジなさっています。
モデレーターの高橋さんは、ケロッグ在籍時からZmagの環境技術を世界に展開するために奔走されていました。高須賀さんとはポートランドで同じフロアだった旧知の仲ということで、ご自身の経験からも米国での起業について高須賀さんに鋭く切り込んでいただけるのではないかと思います。
高須賀宣: SaaS(※編注:Software as a Service)とかASP(※編注:Application Service Provider)といわれている、インターネットを通じてソフトウェアを提供するLUNARRという会社をアメリカで起業しました。実質、稼働は1年半ぐらいですので、まだまだこれからで、社員も12名と非常に少なく、スタートアップしたばかりです。(2008年6月現在)
大学を卒業した後、松下電工に就職し7年勤めて、社内ベンチャー制度で1つ会社をつくらせていただいた後、97年にサイボウズという会社をつくりました。その後、7年後に退社して今に至っています。
高橋英伸: ケロッグを卒業後、オレゴンに戻ってから高須賀さんと出会いました。まず、アメリカでLUNARRの起業にチャレンジされている目的は何なのかをお聞きしたいと思います。
高須賀宣: 僕は松下時代、もともとコンピュータのエンジニアでしたが、経営企画に席が移ったときにビジネス的、経営的な観点を持つようになり、僕のライフワークになっているナレッジ・ワーカーの生産性向上に興味を覚えました。既存の経営に違和感を持っていましたし、それをサポートするコン ピュータシステムにおいても、まだまだナレッジ・ワーカーの方の生産性や創造性を高めていくというインフラができていないなと感じて、そこを自分のなりわ いとして生きていこうと思うようになりました。
LUNARRには2つの趣旨があります。1つは僕がコンピュータのエンジニアだったということで、それをコンピュータのツールで実現したいということと、新しい経営のスタイルみたいなものをつくっていこうということ。
高橋英伸: ナレッジ・ワーカーの方々に受け入れていただけるようなピ ンポイントな製品づくりをお考えだと思うのですが、実現するうえでは、他に競合するいろいろなサービスがあると思うのです。ストラテジィとして考えたと き、差別化でき、ユニークであるということが非常に重要だと思うのですが……。
高須賀宣: 通常でしたら、コンペティターへの対優位性というものをコア・コンピタンスなどと言ったりするのですが、僕は基本的にベンチャーの運営の仕方というのは、それとは違っていると思っています。
一言でいうと「不確実性をいかに極大化するか」ということを考えるのがベンチャーだと。ある市場に対して、僕が考えたユニークなビジネスコンセプト があって、それを市場に投げ込むと、強いプレイヤーも弱いプレイヤーも、みんなひっくるめて大混乱になってしまうような不確実性の高さです。
いかにスマートなストラテジィを立てたとしても、不確実性の高い興味深いコンセプトには一撃で吹き飛ばされてしまいます。ベンチャーの面白いところは、その不確実性を極大化したうえで、新たな確実性をつくり上げていけるというところです。
もちろん、市場を混乱させるだけだとただの迷惑ですが、それを上回る大きな価値を提供すると信じてやっているわけです。日本のIT企業の方々は、事 業をいかに拡大するかとか、マーケットキャップを大きくしていくかとか、そういうことに興味を持たれる方が多いのですが、むしろ高付加価値であればこそ市 場は混乱していくので、僕はそれを楽しみたいんですね。
大学を卒業した後、松下電工に就職し7年勤めて、社内ベンチャー制度で1つ会社をつくらせていただいた後、97年にサイボウズという会社をつくりました。その後、7年後に退社して今に至っています。
高橋英伸: ケロッグを卒業後、オレゴンに戻ってから高須賀さんと出会いました。まず、アメリカでLUNARRの起業にチャレンジされている目的は何なのかをお聞きしたいと思います。
高須賀宣: 僕は松下時代、もともとコンピュータのエンジニアでしたが、経営企画に席が移ったときにビジネス的、経営的な観点を持つようになり、僕のライフワークになっているナレッジ・ワーカーの生産性向上に興味を覚えました。既存の経営に違和感を持っていましたし、それをサポートするコン ピュータシステムにおいても、まだまだナレッジ・ワーカーの方の生産性や創造性を高めていくというインフラができていないなと感じて、そこを自分のなりわ いとして生きていこうと思うようになりました。
LUNARRには2つの趣旨があります。1つは僕がコンピュータのエンジニアだったということで、それをコンピュータのツールで実現したいということと、新しい経営のスタイルみたいなものをつくっていこうということ。
高橋英伸: ナレッジ・ワーカーの方々に受け入れていただけるようなピ ンポイントな製品づくりをお考えだと思うのですが、実現するうえでは、他に競合するいろいろなサービスがあると思うのです。ストラテジィとして考えたと き、差別化でき、ユニークであるということが非常に重要だと思うのですが……。
高須賀宣: 通常でしたら、コンペティターへの対優位性というものをコア・コンピタンスなどと言ったりするのですが、僕は基本的にベンチャーの運営の仕方というのは、それとは違っていると思っています。
一言でいうと「不確実性をいかに極大化するか」ということを考えるのがベンチャーだと。ある市場に対して、僕が考えたユニークなビジネスコンセプト があって、それを市場に投げ込むと、強いプレイヤーも弱いプレイヤーも、みんなひっくるめて大混乱になってしまうような不確実性の高さです。
いかにスマートなストラテジィを立てたとしても、不確実性の高い興味深いコンセプトには一撃で吹き飛ばされてしまいます。ベンチャーの面白いところは、その不確実性を極大化したうえで、新たな確実性をつくり上げていけるというところです。
もちろん、市場を混乱させるだけだとただの迷惑ですが、それを上回る大きな価値を提供すると信じてやっているわけです。日本のIT企業の方々は、事 業をいかに拡大するかとか、マーケットキャップを大きくしていくかとか、そういうことに興味を持たれる方が多いのですが、むしろ高付加価値であればこそ市 場は混乱していくので、僕はそれを楽しみたいんですね。
『ケロッグ大学大学院 モーニング・セッション「日本から米国、そして世界への挑戦~サイボウズからLUNARRへ~」』 インデックス
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第1章 創業への思いとベンチャー企業の醍醐味
2008年09月10日 (水)
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第2章 日本型経営への疲弊感と、優秀&結果主義への抵抗感
2008年09月22日 (月)
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第3章 設定した目的・目標があれば、チームはまとまる
2008年10月01日 (水)
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第4章 グーグルやアマゾンが日本で誕生しない理由とは?
2008年10月10日 (金)
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第5章 情報共有の概念を変える
2008年10月24日 (金)
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第6章 人・モノ・金の次へ。「見えないものをマネジメントする」新しい経営
2008年11月04日 (火)
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第7章 マーケットを制する企業立地とサービスのポイント
2008年11月14日 (金)
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