記事・レポート

フジマキ流「自分ブランド」のつくり方

BIZセミナーその他
更新日 : 2008年04月16日 (水)

第5章 これから注目すべき「プロデュース」という役割

藤巻幸夫

藤巻幸夫: 第三法則は、PR・宣伝を積極的に行うこと。これもよく話すことですが、伊勢丹時代にバーゲン告知のため、日本テレビの、ある朝番組をジャックしたことがあります。正確に言えば、学園祭などの看板をもって学生たちが立つ場所に、アルバイトを動員して伊勢丹のバーゲン看板を並べてテレビに映るようにしたのです。局側からは厳重に注意されましたが、バーゲンの売上は、通常の30万円が300万円になりました。

確かに強引な手法は慎むべきですが、いいモノなら機会を見つけて堂々と宣伝すべきです。以前、アメリカでマーケティングを研究している学者と話をしている時、「藤巻君は本当に"語る"よね。藤巻君のような人が、もっと日本に増えたらいい」と言われました。聞きたくない人にとっては単なる耳障りな人間なのだと思いますが、自分の言いたいことを語ることは大切です。

スピーチが嫌いだとか、人前で話すのが苦手だという人はもしかすると語るべきものがない人なのではないかと、否定的に見てしまうこともあります。そういう私も昔は苦手だったし、かなり有名なプロデューサーのS氏もそうだと言っていましたが、総じて日本人はPRすることが苦手です。これからは積極的に売り込むことは善と考え、自分を訓練していかなくてはいけません。

法則の最後は、ホスピタリティの精神をもつこと。やはり伊勢丹時代、私は先輩からこう言われました。「いい仕事をしたかったら、宴会の盛り上げぐらい一人前になれ」と。そもそも、宴会・パーティを盛り上げられない人にリーダーシップはとれない、が私の持論です。これまで私も宴会やパーティに際して、常にいろいろ知恵を絞り、時間を割いて盛り上げる方法を考えてきました。いろいろな小道具を作ったり、仮装もしました。

部下にも、宴会の盛り上げ役は買ってでもしろと言ってきましたが、私がセブン&アイ生活デザイン研究所をやめる時、みんなが最高の送別会を開いてくれました。あまりに素晴らしかったので、涙が出てしまったほどです。

人を楽しませること、いわゆる「ティーアップ」はよりよく生きる基本でもあります。「自分ブランド」づくりに、誰にでも当てはまる正解はありません。だからこそ、自分そのものを人に理解してもらい、いい関係を築き上げることが重要です。そこではホスピタリティが重要なキーになります。

ここでちょっと話は飛びますが、ある日、アートディレクターの佐藤可士和さんと語り合う機会を得て、そこで聞いた「プロデュースする」という行為にとても共感しました。彼は商品もデザイン・プロデュースしているし、自分自身もデザイン・プロデュースしていると思います。

その後、スタジオジブリの鈴木さんと会って、いい話を聞かせてもらいました。後日、彼から手紙をもらうと、そこに肩書きが「代表取締役プロデューサー」になりましたと書いてありました。鈴木さんというプロデューサーがいなければ、宮崎駿さんも高畑勲さんも、ここまで大きな素晴らしい仕事ができなかったのではないかと思います。鈴木さん自身「プロデューサーという仕事はこれからますます必要に、大事になる」と言っていました。

私も、これから注目すべきは、「プロデュース」だと考えています。そこで大切になるのは人脈。これまで、私は人一倍友人を大切にしてきたと自負しています。友達をつくることをコンセプトに生きてきたことは間違いじゃなかったな、と感じています。