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カフェブレイク・ブックトーク『にじみ出る素養~「品格」を問う~』

更新日 : 2008年07月29日 (火)

第3章 なぜいま品格が問われるのか

澁川雅俊さん

澁川雅俊: 品格本についてはその字面にこだわるのではなく、なぜいまそれが問われなければならないのかを考えて読む本を選ぶべきでしょう。

ある新聞社はこの4月に「品格の復権とは」というテーマでフォーラムを開催しました。主催者は品格本ブームがこのテーマを取りあげたきっかけとなったと表明していますが、背景には、船場吉兆の「使い回し」などの食品偽装問題やコンプライアンス違反、防衛庁事務次官の汚職や年金処理における行政の怠慢や「後期老齢者医療制度」におけるネーミング、連続する衝動的な殺人、予備校による補習授業やモンスター・マザーの学校介入、サブプライム・ローンやオイル投機などの拝金志向の蔓延、エトセトラ、エトセトラと「どうしてそうなるの?」といったことが頻発している世相があるからです。

『世界秩序の崩壊—「自分さえよければ社会」への警鐘』
そういう世相については、「品格」などを使わずに、例えば、『世界秩序の崩壊—「自分さえよければ社会」への警鐘』(ジョージ・ソロス著、06年ランダムハウス講談社)や『日本はなぜここまで壊れたのか』(マークス寿子著、06年草思社刊)など少なからぬ本に書かれています。『モンスターマザー—世界は「わたし」でまわっている』(石川結貴著、07年光文社刊)などはパラドクシカルなアプローチですが女性、とりわけ小学生をもつ年代の若い母親の品格を問う面白い本です。

『日本はなぜここまで壊れたのか』、『モンスターマザー—世界は「わたし」でまわっている』

ところでフォーラムには、学者、科学者、財界人、官僚出身者、元銀行マン、映画監督など6名が参加し、いま品格が問われている理由について見解を明らかにしていますが、共通して述べられていることはいまの世の中の進展、変化に対する不安が根底にある、ということです。そしてそういう不安はいまに始まったこととではなく、いつも、どの時代にもあったわけですが、ある学者の見解に納得しました。それは品格とか品位とか気品というのは、「品格は、ドロドロして、醜くて、やり切れないわれわれの生活、人生、社会から出てきた概念。人間が生きていく過程で出会う、難しい現実との戦いをバックボーンとした、重み、存在感です」ということでした。(「第8回新世紀懇話会 品格の復権とは」東京新聞)

つまりそういう意味でのどっしりとしたプレゼンスをもっている人たちが少なくなった。そういう人たちが少なくなったので組織や集団の品格も低下した。従ってそういう組織や集団が作り出すモノやサービスも品位や品質も落ちた。そういう状況を改善しなければならないというのがいま問うことの理由で、どうしたら品格を高めることができるか、その方策を議論するのがこのシンポジウムの趣意であり、品格本ブームの奥底にあるわけです。

※書籍情報は、株式会社紀伊国屋書店の書籍データからの転載です。

関連書籍

世界秩序の崩壊—「自分さえよければ社会」への警鐘

ソロス,ジョージ, 越智 道雄【訳】
慶応義塾大学出版会

日本はなぜここまで壊れたのか

マークス 寿子
草思社

モンスターマザー—世界は「わたし」でまわっている

石川 結貴
光文社