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カフェブレイク・ブックトーク『にじみ出る素養~「品格」を問う~』

更新日 : 2008年07月18日 (金)

第2章 『国家の品格』はグローバリズムを否定し、日本の伝統や美意識を重んじた

『国家の品格』、『女性の品格』

澁川雅俊: 『国家の品格』は無邪気なグローバリズムを否定し、「情緒と形の文明」である日本の伝統や人情や美意識を尊重することの重要性を説いています。ライブラリー所蔵本の中にある『女性の品格』(板東眞理子著、08年PHP研究所刊)と『品格ある日本人』(名越眞之著、08年PHP研究所刊)などは、少し視点は違いますが、一応は『国家の品格』と同じ線上にあります。

しかしデータベースで拾い上げた他の品格本の内容をよく見てみると、その線は随分と幅広で、線の中心点と端際では相当の開きがあり、「品格」(品位、気品)に名前負けしている本やミスリードする書名のものもあります。

●品格を問う視点

それらの品格本が対象にしているものごとは一様ではありません。おおまかに類別すると

・<国家や国民総体の品格>を問題にしている本のグループ
・<企業や業界や職業など組織あるいは集団の品格>を問題としている本のグループ
・<製品や商品やサービスの品格>を問題としている本のグループ
・ <個人の品格>を問題としている本のグループ

があります。
『ヤマダ電機の品格』
国家や国民総体にかかわる品格本の代表が『国家の品格』であるわけですが、それを企業・業界・職業のスコープで論じているものに、『銀行の品格』、『学校の品格』、『老舗の品格』、『病院の品格』、『ヤマダ電機の品格』(立石泰則著、講談社刊)や『企業の品格』(皆木和義著、07年PHP研究所刊)などがあります。しかし内容と「品格」がミスマッチのものが多くあります。

『アウン・サン・スー・チー—戦う気品』
個人の品格を問題にする本を細区分してみると、まず<女性の品格>を問題にしている本のグループがまず挙げられます。このグループに属する本の数は品格本の中で最も多いようです。内容的には『アウン・サン・スー・チー—戦う気品』(三上義一著、08年ランダムハウス講談社刊)などがその中核的な存在ですが、『気品のコツ—品格ある女性のマナーブック』、『「源氏物語」に学ぶ女性の気品』、『大人の女性のための品格とマナーレッスン』、『3行で身につく女の品格』、『よくわかる女性の品格あるマナー』、『母の品格』、『「和の呼吸」でキレイになる!—日本女性の美と品格の源』、『日本女性の気品』などになると、書名がそれぞれの内容をミスリードしています。

女性の品格に対して、<男性の品格>を問題にする本もあっていいのですが、実はその数が少ないのです。今年になって出版されたもののなかでは『「武士道」子育て—強くて品格ある男の子を育てる方法』というのがあるだけです。たしかに『「生きる力」をつけるための高校生の品格』、『私学の伝統 品格のある子どもを育てる格言集』、『夫婦の品格』、『親の品格』、『老いの品格』などなど、男女にかかわらないものは少なからずあるのですが、男性の品格にかかわる本がなぜか少ないのです。どうしたわけでしょうか。

その差は、まず女性が男性よりもこの問題を気に掛けているからだろう。男性は企業とか職業とかに気がいってしまい、個人の問題ではないと考えているからではなかろうか。おそらく品格本を企画する編集者たちがそう考えているからそういう結果になってしまうのだろうと私は考えました。

『銀座のプロは世界一』
モノの品格に関する本も少なからずありますが、多くの場合品格(品位や品質など)の挿入に無意味なものがほとんどです。例えば『銀座のプロは世界一』(須藤靖男著、08年日本経済新聞社刊)のようにそれを挿入していなくともモノのそれを問題にしている本は他にたくさんあります。

※書籍情報は、株式会社紀伊国屋書店の書籍データからの転載です。

関連書籍

国家の品格

藤原 正彦
新潮社

女性の品格—装いから生き方まで

坂東 眞理子
PHP研究所

品格ある日本人—私たちはどのように行動すれば美しいか

名越 眞之
PHP研究所

ヤマダ電機の品格—No.1企業の激安哲学

立石 泰則
講談社

企業の品格

皆木 和義
PHP研究所

アウン・サン・スー・チー—戦う気品

三上 義一
ランダムハウス講談社

銀座のプロは世界一—名店を支える匠を訪ねて

須藤 靖貴
日本経済新聞出版社