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突き抜けるアート ~社会と人をつなぐもの~

変容するアートが人を変え、世界を変える:猪子寿之×津田大介

更新日 : 2015年12月09日 (水)

第7章 アートの力で人々の関係性を変えていく


 
作品と個人、作品と集団

猪子寿之: 実は2014年10月、国東半島芸術祭のものと同じような作品を、ニューヨークの展覧会で発表しました。オープニング当日は本当にたくさんの人が来て、会場がパンパンになってしまった。それで、みんなが壁に近づき過ぎて……。

<Flowers and People-Gold and Dark/花と人-Gold and Dark>
http://www.team-lab.net/latest/exhibition/japansociety.html

津田大介: え、そしたら花が全部散ってしまいますよね(会場笑)。

猪子寿之: まさにそう。その時に驚いたのは、会場にいた人達が「ワーオッ! 花が全部散ったぞ!」と叫んだ後、「人がたくさんいるからだよ!」「じゃあ、俺は出ていくよ」「私も後で見に来るわ」などと言いながら、会場から去っていったこと。

津田大介: つまり、アートが人々に影響を与え、彼らの行動を変えてしまったわけですね。

猪子寿之: そうなんです! 会場から人が減ると、再び花が咲き始め、そこでまた「ワーオッ!」と声があがったりして、すごく面白かった。なぜ、この話をしたのかと言えば、デジタル以前のアートでは起こり得なかったことが起きたからです。

例えば、モナリザの前をたくさんの人が歩いたとしても、鑑賞する個人にとっては、同じ空間に誰がいるかなど気にならない。5分前に100人が作品の前を通り過ぎたとしても、作品には何ら影響しない。しかし、僕達の作品は、個人のふるまいで作品が様々に変容し、他人のふるまいでも変容する。そうなれば、否応なしに「同じ空間にいる人達のふるまい」が気になり始める。

ハウステンボスの作品も、誰かの存在で木の色がパパパパッと変われば、向こうから来る人や対岸を歩く人を意識するようになる。「そっちがそう来るなら、こっちはこうだ!」と、対岸を歩くカップルに対して、変なライバル心が芽生えるかもしれない。

津田大介: なるほど。1つのアートが、集団の意識に影響を与えたり、関係性を変えたりするきっかけになる。さらに言えば、アートを通じて、多くの人々に何かを考えさせるきっかけにもなり得る。

猪子寿之: まさにそうです!変容するアートは、個人はもちろん、同じ空間を共有する集団の思考や関係性を直接的に変えていくことができる。常にそうしたことを考えながら、チームラボは作品をつくっています。

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六本木アートカレッジ 突き抜けるアート~社会と人をつなぐもの~

世の中に新しい価値を送り出すウルトラテクノロジスト集団チームラボ代表、猪子寿之氏と、政治・経済・カルチャーなど独自の視点で発信している津田大介氏がアートの可能性を語ります。