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突き抜けるアート ~社会と人をつなぐもの~

変容するアートが人を変え、世界を変える:猪子寿之×津田大介

更新日 : 2015年12月02日 (水)

第3章 物質に凝縮された美を、空間に解放する


 
未来の有田焼があるカフェ

猪子寿之: 次は、有田焼創業400年事業の一環として、佐賀県立九州陶磁文化館で行った「未来の有田焼があるカフェ」です。有田焼のお皿をテーブルに置くと、そこに描かれている美しい絵柄がテーブル上や周囲の空間に飛び出し、生き生きと動き始めます。

例えば、白い鳥が描かれたお皿なら、それがお皿から飛び出し、テーブルの上や周囲の壁をパタパタと飛び回る。400年の歴史を誇る美しい絵柄は、従来、有田焼の中に閉じ込められたままでしたが、物質に凝縮されていた伝統的な美を、動きのある映像として広い空間に解放したわけです。

<Future Arita porcelain cafe/未来の有田焼があるカフェ>
https://www.team-lab.net/jp/works/aritacafe

津田大介: おお、すごい! これはどのように絵柄を認識しているのでしょう?

猪子寿之: テーブルに特殊な仕掛けは一切なく、天井に取り付けたセンサーで絵柄を認識し、プロジェクターで映像にしています。例えば、桜の枝が描かれたお皿なら、そのお皿から枝がニョキニョキと生えてくる。この動きは、あらかじめプログラミングされたものを再生しているわけではなく、お皿が置かれた状況によってリアルタイムに生成され、変化します。複数の人が異なる絵柄のお皿を置くと、他のお皿を避けながら枝が伸びたり、その枝に別のお皿から飛び出した鳥がとまったりする。

津田大介: まるで生きているみたいですね。

猪子寿之: プロジェクター、センサー、ソフトウェアさえあれば、どのような空間でも同じことができます。例えば、佐賀県はイカが名物ですが、お店でイカのお刺身が出てきた時に……。まあ、この説明はいいか(笑)。次に行きましょう。

津田大介: いやいや、僕も会場の皆さんもその先が知りたい(会場笑)。イカのお刺身が出てきたら、どうなる?

猪子寿之: イカのお刺身は海中の風景が描かれた有田焼のお皿に乗せられ、それをテーブルに置くと一瞬にしてテーブルや周りの壁が海に変わる。

津田大介: それはまったく新しい食の体験になりますよね。食事がもっと楽しくなりそう。

猪子寿之: そうです。だから……、やっぱり次に行こう(笑)。


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六本木アートカレッジ 突き抜けるアート~社会と人をつなぐもの~

世の中に新しい価値を送り出すウルトラテクノロジスト集団チームラボ代表、猪子寿之氏と、政治・経済・カルチャーなど独自の視点で発信している津田大介氏がアートの可能性を語ります。