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突き抜けるアート ~社会と人をつなぐもの~

変容するアートが人を変え、世界を変える:猪子寿之×津田大介

更新日 : 2015年12月09日 (水)

第4章 絶え間なく循環し、創造される自然


 
雲と滝、水と大地、花と鳥

猪子寿之: 台北市にある中國信託銀行の新本社ビルのエントランスにある「Circulum Formosa」という作品です。3階まで吹き抜けの広いエントランスに、LEDをひいた幅17m、高さ17mの巨大な壁があり、台湾の自然をモチーフにした360度の映像が延々と循環し、変化し続けます。

<Circulum Formosa>
http://www.team-lab.net/all/art/circulumformosa.html

津田大介: これもすごい。チームラボの「憑依する滝」にも通じるような。

猪子寿之: 「憑依する滝」は巨大な岩に滝の水がぶつかりましたが、こちらは松の枝に水がぶつかります。空から降った雨によって滝ができ、それが川となり、川辺にある大地から花や木が生まれる。その周りには美しい鳥が飛び交い、大空では雲が生まれ、絶え間なく形を変えながら循環していく。

こちらも、鑑賞者の存在や動きに影響を受け、映像が様々に変化していきます。例えば、流れる水の上を歩くと、本物の水に足を入れた時と同じように、水が足もとを避けていく。あるいは、川の上に人が立つと、そこに魚が集まってくる。花畑の上に立つと、足もとで花が咲き乱れる。

津田大介: 人の存在や動きを検知して、映像が変化していくわけですね。

猪子寿之: 鑑賞者の動きはもちろん、時間や季節、その日の天気など、ビルを取り巻く様々なリアルタイム情報の影響を受け、映像が変化します。したがって、本物の自然と同じように二度と同じ状態は生まれず、常に新しいものが創造されていく。何というか、「この世のすべて」「我創造せり!」みたいな作品です(笑)。

津田大介: このエントランスに来れば、絶え間なく変わり続ける自然、森羅万象が体験できる。

猪子寿之: そうですね。上部の雲は先ほどのクリスマスツリーと同じ仕組みで、LEDをキューブ型に積み上げています。こちらは、いうなれば“雲の彫刻”ですね。雲の形や動きも、ビル外部の天候に合わせて様々に変化します。

津田大介: ビジネスで訪れたビルのエントランスにこれがあったら、相当なインパクトがありますよね。仕事のことを忘れて見入る人も多いんじゃないかな。入った瞬間、延々と循環する大自然があるわけですから。


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六本木アートカレッジ 突き抜けるアート~社会と人をつなぐもの~

世の中に新しい価値を送り出すウルトラテクノロジスト集団チームラボ代表、猪子寿之氏と、政治・経済・カルチャーなど独自の視点で発信している津田大介氏がアートの可能性を語ります。