記事・レポート

日本元気塾第6期プレセミナー
レジリエンス(resilience)~自らの手で道を拓く力~

更新日 : 2018年01月16日 (火)

第3章 「逆境」をどう捉えるか。これは主観の問題だ

楠木建: 日本元気塾は初めてです。先輩の米倉さんに誘われてここにいます。米倉さんとは意見は合わないけれど気は合う。ソリは合わないけれどノリは合う(笑)。米倉さんと一緒に仕事をするのが一番楽しいです。

ただ、「レジリエンス」というテーマで、なぜ、僕がここにいるのかがさっぱりわからない。僕は、これまでの人生で一度も逆境を経験したことがありません。自らの手で道を切り拓いたこともない。「余の辞書に挑戦という言葉はない」のです。

全部、主観の問題だろうと思います。僕は、本当の逆境は2つしかないと思っている。「病気・怪我」と「戦争」です。その他の「逆境」は気のせいだ、と(笑)。

僕のデフォルトは「物事は思い通りにならない」
では、なぜ、多くの人が「逆境にいる」と感じるのか。前提として「物事はうまくいかなければいけない。うまくいかなければ失敗だ」と思っているからではないかと思います。僕は違う。「物事は絶対にうまくいかない。自分の思い通りにはならない」。これが僕のデフォルト(初期設定)です。だから、傍目からは逆境にあると見えても、自分自身は全然そう思いません。逆にほんの少しでもうまくいくと、「え、ホントにいいのか」ととまどうくらい、ものすごく嬉しい(笑)。

若い人たちから相談を受けることがあります。そんなとき、「全く心配することはない。大丈夫、大丈夫。絶対に思い通りにはいかないから」(笑)と言って、嫌な顔をされてます。

楠木 建 (一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 教授)


本当に好きなことならば、道中ですでに報われる
僕は、何を達成したかより、道中で報われてしまうのです。いわば、プロセスを楽しむタイプ。山も谷も波もないベタ凪の人生を気楽に生きているわけですが、それが成立する条件がひとつあります。それは「自分が好きなことだけをやること」。そうじゃないと、うまくいかないときは結構辛いだろうと思いますね。たとえ好きなことがなくても嫌いなことはしない。その結果、何が起こるかというと何もしない状態になります。(逆境かなと思ったとしても)、全部気のせい(笑)。

これが僕のレジリエンスです。藤森さんや中竹さんのように、逆境をはねのけて、果敢に自分の途を切り拓くタイプもいますが、僕のような普通の人もいると思います。「自分が好きなことで、プロセスを楽しめる」。これは定義において負けがありません。元気塾では、皆さんがそんな何かを見つけ出すお手伝いができたらいいなと思っています。


該当講座


レジリエンス(resilience)~自らの手で道を拓く力~
レジリエンス(resilience)~自らの手で道を拓く力~

米倉誠一郎×藤森義明×楠木建×中竹竜二
困難に直面したときに「できない」と考えるか、「どうやったらできるか」と考えるか。それによって、物事の展開は大きく変わります。どんな時代、環境であっても、自らの手で道を切り拓くために必要なことは何か?どのように逆境に立ち向かってきたのか、それぞれの経験から語ります。