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BIZセミナー経営戦略キャリア・人
更新日 : 2015年06月17日 (水)

第7章 日本を起業大国にするために必要なこと

田中章愛(ソニー株式会社 新規事業創出部 IE企画推進チーム エンジニア)
田中章愛(ソニー株式会社 新規事業創出部 IE企画推進チーム エンジニア)

 
大企業に眠るリソースを活用せよ

松本真尚: 今後、日本を起業大国にしていくために必要なこと。僕は、次の3点に集約できると考えています。1点目は、大企業が保有するヒト・モノ・カネなど、様々なリソースを活用していくこと。2点目は、社会を挙げて日本発のメガベンチャーをプロデュースすること。3点目は、ベンチャースピリットの啓発・普及です。

大企業のリソース活用という文脈では、SAP(Sony Seed Acceleration Program)はその典型だと思います。今後の方向性について、田中さんはどうお考えでしょうか?

田中章愛: 単純にモノをつくっただけでは、なかなか世の中に広まっていきません。また、物理的な形を持つモノの場合、ITのように一瞬で世界に配信できないため、IoTが進んだとしても、量産・販売・アフターサポートなどの重要性は変わりません。この点については、長年培ってきたノウハウ・仕組みを持つ大企業のインフラを活用することが有効だと思います。

また、松本さんが挙げた3点すべてに通じるかもしれませんが、ソニーは音楽や映画といった新事業のプロデュースを手掛け、ベンチャースピリットも脈々と受け継いできました。

Sony Seed Acceleration Programを立ち上げた理由は、モノづくりを含め、これらを総合的に提供したいと考えたからです。社内外に関係なく、ユニークなアイデアを持つチームが、Sony Seed Acceleration Programというプラットフォームを活用してモノをつくり出す。ソニーは大企業のリソースを活用し、そのチームを世界デビューさせるべくプロデュースしていく。個人的には、こうしたビジョンを念頭に置いて活動しています。

松本真尚: なるほど。「大企業のリソース活用」について、川邊さんはどう考えていますか?

川邊健太郎: ヤフージャパンがさらにイノベーティブになるという意味では、とにかく社内に小さなチームをたくさんつくり、権限委譲しまくることでイノベーションを加速させる。それに尽きます。外部との結合という意味では、優れたベンチャーとのコラボレーションを数多く仕掛けることで、ヤフージャパン自身のイノベーションも加速できると思います。

例えば、あるベンチャーでは資金がネックとなり、優れたノウハウや技術力を有する人が雇えないかもしれない。そうした時に、我々は社員の出向などを通じて総合的にサポートする。あるいは、現時点で4,000億円の貯金がありますから、それを使って優れたベンチャーを買収し、モノもヒトも交流させながら一緒に成長していく。こうしたことも、大企業のリソース活用に当たると思います。

一方で、起業する側の意識も大切です。Googleのようなメガベンチャーを一途に目指すのか。あるいは、YouTubeやWhatsAppのように、メガベンチャーの一翼を担うポジションを目指すのか。そこを見極めながら、大企業との連携や成長プロセスを考えていくことが重要になると思います。
松本真尚: 「メガベンチャーのプロデュース」について、山田さんはいかがでしょうか?

山田進太郎: 社会にインパクトを与える象徴として、日本発のメガベンチャーを生み出すことは非常に重要です。メルカリが最初に大成功を収められれば嬉しいですが、そうならなかったとしても、我々の挑戦を踏み台として他の誰かが成功できれば良い、とも考えています。まずは、挑戦することが大切ではないでしょうか。

松本真尚: 最近は巨額の資金調達を果たす日本のベンチャーも増えていますが、この流れについて、山田さんはどう見ていますか?

山田進太郎: 以前に比べ、起業家のレベルが上がってきているのだと思います。メルカリのスタッフは、ヤフージャパンや楽天、DeNA、GREEなど、優れたベンチャーで事業づくりを経験した人が多いですが、やはり、彼らは非常に意識やスキル、目線が高い。また、僕自身も長くエンジェル投資を続けていますが、最近は起業をサポートしたいと考える人も増えています。ベンチャーを取り巻く環境が底上げされ、人材も育ち始めているのでしょう。

川邊健太郎: 「ビットバレー」という言葉が登場した1995年から2000年頃にかけて、日本でも多くのネットベンチャーが生まれました。しかし、スキルや目線の高さについては、現在のようなレベルにはなかったと思います。その後、特にここ六本木に目線の高いベンチャーが集うようになり、切磋琢磨し、レベルが上がっていった。それは如実に感じますね。

松本真尚: ベンチャースピリットの普及という文脈では、メルカリのスタッフは、山田さんの「目線の高さ」に惹かれ、集まってきたのだと思います。様々な困難がありながらも、目線の高さを維持できている理由は?

山田進太郎: お金を儲ける、会社を大きくすることは、僕にとっては目的ではありません。僕の目的は、世界中で当たり前のように使われ、人々の人生に影響を与えるようなプロダクトを生み出すことです。理想とするサービスは、Skypeのようなもの。例えば、Skypeのおかげで出会い、結婚した人もいるはず。そうしたサービスを生み出したいからこそ、プロダクトの質にこだわり、老若男女、誰もが手軽に使えるサービスをつくろうとしています。