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為末大の「自分軸」のつくりかた

軸が決まれば、自分の存在を最大化できる

カルチャー&ライフスタイルキャリア・人文化グローバル
更新日 : 2013年04月26日 (金)

第1章 「成功」を考える

世界選手権のトラック種目で日本人初の銅メダルを獲得するなど、日本陸上界を代表して世界に挑み続けた“侍ハードラー”為末大さん。極限の速さを追求する過程では、肉体の限界に挑戦するのと同時に、心の深い部分に問いかけ、自らの考えを練り上げていく日々が続いたと言います。現在、様々なメディアを通して「自分の言葉」を発信し続けている為末さんに、“個の時代”に求められる「自分軸」のつくりかたについてお話しいただきました。

スピーカー:為末大(元プロ陸上選手)
モデレーター:竹中平蔵(アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学教授 グローバルセキュリティ研究所所長)

為末大(元プロ陸上選手)
為末大(元プロ陸上選手)

 
人生の勝利条件は簡単に見つからない

為末大: 本日は「自分軸」をテーマに、僕自身が競技生活の中で考えていたこと、引退した現在考えていることを中心にお話ししたいと思います。

まずは「成功」について。僕はアスリートという立場から、成功=(イコール)勝利として捉えます。自分にとっての勝利条件とは何かを考えてみました。競技をしていた頃なら、答えはとても単純でした。誰よりも速くゴールした人が勝ち。しかし、引退したいま、人生という面から勝利条件を考えてみた時、答えはすぐに出てきませんでした。

ある人は社会でより良い地位につくこと、ある人はお金持ちになることが人生の勝利条件だと言うかもしれません。しかし、ことはそう単純ではなく、実は人生の勝利条件を自分で決めるのは、とても難しい。なぜかというと、社会や他者との関係から少し引いた位置に立ち、物事を考えなければならないからです。例えば、みなさんが無人島にひとりでいるとします。そこでは自分の背が高いのか低いのか、周囲に誰もいない状態なので、答えを出すことはできませんよね。

人は“ものさし”の中に生まれてくる

為末大: また、親が子どもをほめている場面を見かけると、「○○ちゃんは、△△ができてえらいね」「普通の子ならこのくらいしかできないのに、それよりも早くできてえらいね」と言っている時があります。それを繰り返していると、子どもの側でも「これができると、ほめてもらえるようだ」「これができないと、ほめてもらえないんだ」と認識していくようになります。

こうした親子の会話を観察しているうちに「子どもはある種の“ものさし”の中に生まれ、社会的価値観の中で育っていくのではないか?」と考えるようになりました。

さらに成長すると、進路の話題が出てきます。その時に親や教師は「この高校や大学が良い」「良い学校の先に良い人生がある」などと言います。それを耳にした子どもは、「あちらに行くと良い人生で、こちらに行くと良い人生にはならないのだ」と考えるようになる。つまり、人間とは、小さい頃から世の中の“ものさし”に触れながら成長しているわけです。

為末大の「自分軸」のつくりかた インデックス


該当講座

自分軸で挑む~21世紀“個の時代”に必要なこと~
為末大 (Deportare Partners代表)
竹中平蔵 (アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学名誉教授)

為末大氏×竹中平蔵氏
選択肢が広がり、価値観も多様化する今の時代、後悔しないため、よりよく生きるためにも、既成概念にとらわれることなく、自分の価値基準を持ち、自分で判断することが大切ではないでしょうか。『走る哲学』、『走りながら考える』等の著書を出版し、twitterでは14万以上のフォロアー、そして「為末大学」を立ち上げる等、常に自身の考えを発信し続ける為末氏に、「自分の軸を持つ」とは何かをお話いただきます。


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