記事・レポート
世界一の企画会社を目指すカルチュア・コンビニエンス・クラブ
その足跡と今後の成長戦略を増田社長が語る
BIZセミナー経営戦略キャリア・人
更新日 : 2012年11月08日
(木)
第7章 人通りがない代官山だからこそ、ノウハウ開発ができる
増田宗昭: なぜ次世代のTSUTAYAを代官山につくったのかというと、通行客が全くいなかったからです。人通りの激しい渋谷のハチ公前でやったら、何もせずともお客さまが来るので、お店に顧客価値があるのかないのか効果検証ができません。「価値がなかったら誰も来ない」という恐ろしい場所で、背水の陣でやるからノウハウ開発ができるのです。
それから、土地の歴史的背景もあります。縄文時代、渋谷は海の底でしたが、代官山は陸地だったそうです。その地勢のよさから、江戸時代には地方の藩士が屋敷をつくるようになりました。代官山 蔦屋書店も、水戸の徳川家の分家、つまり水戸黄門の江戸屋敷の跡地です。戦後になると外国の大使館が屋敷を好んで取得するようになり、インターナショナルな雰囲気ができていきました。こうした歴史のある地こそ、プレミアエイジが好む東京としてブランディングすべきだと思ったのです。
しかし、そのままでは人っ子一人いませんから誰も来ません。お客さまに来てもらえるように、まずは「美術館みたいな格好いいものをつくろう」と考えました。建築はクライン・ダイサム・アーキテクツという建築家ユニットに依頼しました。一人はイタリア生まれ、もう一人はイギリス生まれ、現在は日本在住という変わった二人組です。彼らは「T」をモチーフにしたタイルでファサードをつくるという斬新なアイディアを提案してくれました。
インテリアは「家」をイメージしました。人口減少に加えてGDPが頭打ち状態ということは、供給は余っているということです。だから「もう店はつくっちゃいけない。人が行きたくなる空間は、家だ!」と考えたのです。美術館と家ですから、売り場にPOPはありません。照明もすべて家のディテールでつくりました。これが結果として、居心地がいいという顧客価値につながったと思っています。
ただし、インテリアを売るわけではありませんので、プレミアエイジのための品揃えとして、「死に方」を提案することにしました。格好よく死ぬ=格好よく生きる。なので、ライフスタイルの提案をしっかりしようと思い、テーマを厳選しました。1つは「お金の使い方」です。彼らは結構お金を持っていますので、お金の儲け方ではなく、アートを楽しんだり家を建てたりするための「お金の使い方」です。それから健康に気をつけているので「料理」、医食同源ですね。あとは「旅行」。これらに特化しました。
それから、この世代にとって懐かしい『平凡パンチ』をはじめ、『FOCUS』『an・an』『non-no』『暮らしの手帖』などは創刊号から全部揃えました。バーでお酒を飲みながら読めます。映画は信じられないことに、例えば『ダーティハリー』の1が問屋にないんです。TSUTAYAがオーダーしても問屋にない名画が、1カ月に2,500タイトルもあります。どうしてこんなことが起きるのかというと、メーカーがパッケージソフトの販売権を取得するときの契約期間が5年間だからです。発売から5年経ったものは、権利がハリウッドに戻ってしまうのです。需要はあるんですよ。だって、Amazonで中古のVHSがとんでもない高値で売られていますから。
僕は「こんなのおかしい! 機会損失だ」と言って、映画をサーバーに保存しておいて、その場でDVDに焼けるサービスを導入しました。まだハリウッドからデータがスムーズにもらえていないのでタイトル数は多くはないのですが、メジャースタジオはみんな賛同してくれているので、これから充実させていきます。
全てを語ることはできませんが、とにかくプレミアエイジに向けて、「行かなきゃ損する」というものをつくりました。営業は、朝が早いプレミアエイジのために朝7時からです。損益なんて考えていません。巷では「電子書籍化で本屋はもうダメだ」なんて嘆きの声が聞かれますが、売り方を考えれば、まだまだおもしろい本屋はできるはずです。代官山 蔦屋書店は、そういうパッケージ・ビジネスの究極を企画したお店です。皆さんもぜひ見に来てください。(終)
それから、土地の歴史的背景もあります。縄文時代、渋谷は海の底でしたが、代官山は陸地だったそうです。その地勢のよさから、江戸時代には地方の藩士が屋敷をつくるようになりました。代官山 蔦屋書店も、水戸の徳川家の分家、つまり水戸黄門の江戸屋敷の跡地です。戦後になると外国の大使館が屋敷を好んで取得するようになり、インターナショナルな雰囲気ができていきました。こうした歴史のある地こそ、プレミアエイジが好む東京としてブランディングすべきだと思ったのです。
しかし、そのままでは人っ子一人いませんから誰も来ません。お客さまに来てもらえるように、まずは「美術館みたいな格好いいものをつくろう」と考えました。建築はクライン・ダイサム・アーキテクツという建築家ユニットに依頼しました。一人はイタリア生まれ、もう一人はイギリス生まれ、現在は日本在住という変わった二人組です。彼らは「T」をモチーフにしたタイルでファサードをつくるという斬新なアイディアを提案してくれました。
インテリアは「家」をイメージしました。人口減少に加えてGDPが頭打ち状態ということは、供給は余っているということです。だから「もう店はつくっちゃいけない。人が行きたくなる空間は、家だ!」と考えたのです。美術館と家ですから、売り場にPOPはありません。照明もすべて家のディテールでつくりました。これが結果として、居心地がいいという顧客価値につながったと思っています。
ただし、インテリアを売るわけではありませんので、プレミアエイジのための品揃えとして、「死に方」を提案することにしました。格好よく死ぬ=格好よく生きる。なので、ライフスタイルの提案をしっかりしようと思い、テーマを厳選しました。1つは「お金の使い方」です。彼らは結構お金を持っていますので、お金の儲け方ではなく、アートを楽しんだり家を建てたりするための「お金の使い方」です。それから健康に気をつけているので「料理」、医食同源ですね。あとは「旅行」。これらに特化しました。
それから、この世代にとって懐かしい『平凡パンチ』をはじめ、『FOCUS』『an・an』『non-no』『暮らしの手帖』などは創刊号から全部揃えました。バーでお酒を飲みながら読めます。映画は信じられないことに、例えば『ダーティハリー』の1が問屋にないんです。TSUTAYAがオーダーしても問屋にない名画が、1カ月に2,500タイトルもあります。どうしてこんなことが起きるのかというと、メーカーがパッケージソフトの販売権を取得するときの契約期間が5年間だからです。発売から5年経ったものは、権利がハリウッドに戻ってしまうのです。需要はあるんですよ。だって、Amazonで中古のVHSがとんでもない高値で売られていますから。
僕は「こんなのおかしい! 機会損失だ」と言って、映画をサーバーに保存しておいて、その場でDVDに焼けるサービスを導入しました。まだハリウッドからデータがスムーズにもらえていないのでタイトル数は多くはないのですが、メジャースタジオはみんな賛同してくれているので、これから充実させていきます。
全てを語ることはできませんが、とにかくプレミアエイジに向けて、「行かなきゃ損する」というものをつくりました。営業は、朝が早いプレミアエイジのために朝7時からです。損益なんて考えていません。巷では「電子書籍化で本屋はもうダメだ」なんて嘆きの声が聞かれますが、売り方を考えれば、まだまだおもしろい本屋はできるはずです。代官山 蔦屋書店は、そういうパッケージ・ビジネスの究極を企画したお店です。皆さんもぜひ見に来てください。(終)
世界一の企画会社を目指すカルチュア・コンビニエンス・クラブ インデックス
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第1章 「世界一の企画会社」を目指す
2012年10月29日 (月)
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第2章 TSUTAYAはライフスタイルを選ぶ場所
2012年10月30日 (火)
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第3章 「レンタル最大手」からの脱却
2012年11月01日 (木)
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第4章 Tカードは顧客価値の追求から生まれた
2012年11月02日 (金)
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第5章 6000万人に選ばれるTカード
2012年11月05日 (月)
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第6章 これからの企業成長のカギは、プレミアエイジが握っている
2012年11月06日 (火)
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第7章 人通りがない代官山だからこそ、ノウハウ開発ができる
2012年11月08日 (木)
該当講座
世界一の企画会社を目指す
~カルチュア・コンビニエンス・クラブの成長戦略~
増田宗昭 (カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 社長兼CEO)
増田 宗昭(カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 代表取締役社長兼CEO)
7月のランチョンセミナーは、TSUTAYA、Tカードを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 代表取締役社長兼CEO増田宗昭氏をお迎えします。
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