記事・レポート
加藤嘉一と竹中平蔵が、日本と中国のこれからを激論
中国で最も有名な日本人が語る、中から見た中国と外から見た日本
アカデミーヒルズセミナー政治・経済・国際キャリア・人
更新日 : 2012年03月16日
(金)
第7章 お互いに脆弱だからこそ、米中関係は安定した状態が続く
竹中平蔵: 先般、大連で温家宝さんと議論する機会がありました。そのとき温家宝さんはジャーナリストから「今はヨーロッパもアメリカも大変で、世界的不況の懸念が高まっている。中国は世界を救えるか?」と質問されると、「中国は頑張ります。中国はこれからアメリカの株に投資します」と言ったのです。これはすごいメッセージです。今まではアメリカの国債を買っていたけれど、国債はそこそこにして株を買うということですから。
これはアメリカの財政赤字を抑制する強い力をもたらす、つまりモラルハザードを防ぐという意味に加えて、中国もいずれは成長率が低下してくるだろうから、そのときのために対外的に強い収益力を持つアメリカの会社の株主になり、かつ技術も取り込んでいくという実に見事な戦略です。しかもすごいのは、温家宝さんがそう言うと、その後のセッションに出てきた中国の関係者がみんな同じことを言った(笑)。このあたりがなかなか難しい国だと感じるところなんですけどね。
中国の対外戦略、特に対米関係については、どうなっていくと思いますか。
加藤嘉一: 今の米中関係は、お互いがお互いに対して脆弱であるがゆえに、戦略性を高めているという側面が非常に強いと思います。知的財産の問題、貿易赤字・黒字の問題、人民元の問題など、アメリカと中国はかなり異なるプレイヤーですが、いろいろな面で利害関係が一致して、今はそこをうまくトップマネジメントで押さえているという意味で、戦略的にお互いを必要としていると思うんです。
グーグル撤退事件がありましたが、グーグルと交渉した中国の政府担当者から話を聞いたところ、本心ではグーグルに出て行ってほしくなかった、一国二制度で香港に行ってほしかったと言っていました。中国自身もグーグルに出て行ってもらっては困るから、そういうことを提案するわけですよね。
中国はやっぱり対米関係を一番大事にしています。中国は首脳部も含めて日本のTPP加盟には反対です。でも反対と言わないのは、日本の後ろにアメリカの影があるからです。中国はアメリカに対しては遠慮するんです。とは言っても、確信的な利益に関しては遠慮しません。例えば、中国で3Tと言われる「Trade(貿易)、Tibet(チベット)、Taiwan(台湾)」問題。この3つに関しては、中国は妥協しないで言うことは言う。この辺りはシンクタンクがしっかりやっています。
中国はシンクタンクが非常に発達していて、胡錦濤さんがアメリカに行くときは、アメリカ側がどう反応するか、シナリオを1~100までつくるんです。例えばワシントン核サミットに参加すると決めたときも、「中国は核サミットに参加します。そのかわり通貨操作国といわないでほしい」というような交渉をやるわけです。こうして言いたいことを言い合っている感じですので、お互いの脆弱さの中で、比較的安定した関係を続けていくのではないかと思います。
これはアメリカの財政赤字を抑制する強い力をもたらす、つまりモラルハザードを防ぐという意味に加えて、中国もいずれは成長率が低下してくるだろうから、そのときのために対外的に強い収益力を持つアメリカの会社の株主になり、かつ技術も取り込んでいくという実に見事な戦略です。しかもすごいのは、温家宝さんがそう言うと、その後のセッションに出てきた中国の関係者がみんな同じことを言った(笑)。このあたりがなかなか難しい国だと感じるところなんですけどね。
中国の対外戦略、特に対米関係については、どうなっていくと思いますか。
加藤嘉一: 今の米中関係は、お互いがお互いに対して脆弱であるがゆえに、戦略性を高めているという側面が非常に強いと思います。知的財産の問題、貿易赤字・黒字の問題、人民元の問題など、アメリカと中国はかなり異なるプレイヤーですが、いろいろな面で利害関係が一致して、今はそこをうまくトップマネジメントで押さえているという意味で、戦略的にお互いを必要としていると思うんです。
グーグル撤退事件がありましたが、グーグルと交渉した中国の政府担当者から話を聞いたところ、本心ではグーグルに出て行ってほしくなかった、一国二制度で香港に行ってほしかったと言っていました。中国自身もグーグルに出て行ってもらっては困るから、そういうことを提案するわけですよね。
中国はやっぱり対米関係を一番大事にしています。中国は首脳部も含めて日本のTPP加盟には反対です。でも反対と言わないのは、日本の後ろにアメリカの影があるからです。中国はアメリカに対しては遠慮するんです。とは言っても、確信的な利益に関しては遠慮しません。例えば、中国で3Tと言われる「Trade(貿易)、Tibet(チベット)、Taiwan(台湾)」問題。この3つに関しては、中国は妥協しないで言うことは言う。この辺りはシンクタンクがしっかりやっています。
中国はシンクタンクが非常に発達していて、胡錦濤さんがアメリカに行くときは、アメリカ側がどう反応するか、シナリオを1~100までつくるんです。例えばワシントン核サミットに参加すると決めたときも、「中国は核サミットに参加します。そのかわり通貨操作国といわないでほしい」というような交渉をやるわけです。こうして言いたいことを言い合っている感じですので、お互いの脆弱さの中で、比較的安定した関係を続けていくのではないかと思います。
関連書籍
われ日本海の橋とならん—内から見た中国、外から見た日本 そして世界
加藤嘉一ダイヤモンド社
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2012年03月16日 (金)
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該当講座
加藤嘉一×竹中平蔵が日本と中国のこれからを激論!
~「中国でもっとも有名な日本人」が政治・経済から中国人の日常生活までを語る~
加藤嘉一 (英フィナンシャルタイムズ中国語版コラムニスト/北京大学研究員/慶應義塾大学SFC研究所上席所員/香港フェニックステレビコメンテーター)
竹中平蔵 (アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学名誉教授)
竹中平蔵 (アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学名誉教授)
加藤 嘉一(コラムニスト)
竹中 平蔵(慶應義塾大学教授/アカデミーヒルズ理事長)
政治・経済から一般の中国人の生活まで、あらゆる角度から日本と中国のこれからについて、会場の皆さまにもご参加いただきながら議論します。
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