記事・レポート
東日本大震災・海外報道の舞台裏
なぜ過剰報道は起きたのか
アカデミーヒルズセミナー政治・経済・国際
更新日 : 2011年09月13日
(火)
第2章 過剰報道がつくられていった経緯
エリック・ジョンストン: では、福島原発に関する実際の報道はどのようなものだったのか、詳しく見てみましょう。3月12日にCNNが「Official: We see the possibility of a meltdown」という見出しで「原子力安全・保安院の坂内俊洋氏が電話取材で言った。溶解は進行中かもしれない」と報道しました。ロイター通信は「Radiation leaks from Japan's quake-hit nuclear plant」という見出しで「爆発で屋根が吹き飛んだ後、崩壊した原発から放射線が漏れた。当局はヨウ素を配るように準備中」という内容の記事を流しています。
翌13日にはAFP通信が「アメリカの専門家が警告:日本はチェルノブイリのような危機。原発を冷やすために海水を原子炉にポンプでくむのは“自暴自棄の行為”で“チェルノブイリのような災害になるかもしれない”」と報道。AP通信は「日本は複数の原発溶解を避けるために半狂乱。新しい爆発により原発に衝撃」と報道しています。
この4社(CNN、ロイター通信、AFP通信、AP通信)の報道は、現場取材できない多くの海外マスコミによく使われます。世界中に配信されるテレビや通信社の報道の言葉の選択や文章のつくり方、声のトーンは、ほかのマスコミの取材方法や報道内容に大きな影響を与えるのです。紹介した4社の記事を見た多くのマスコミによって、海外では「日本でチェルノブイリのような災害が起きている。原発は溶けて爆発し、放射性物質が大気に漏れ出している。日本政府はパニック状態で放射線病の危険性は現実的」というイメージがつくられたのです。その結果、日本は海外マスコミの加熱報道の中心になりました。
3月16日には、イギリスのタブロイド誌ザ・サンが「東京はゴーストタウン。ガソリン無し、水無し、食品無し。パニックの始まり」と報道。フランスの新聞フィガロは「福島原発を救うように頑張っている労働者は、核神風として命が犠牲にされた」、イギリスのザ・テレグラフは「次のチェルノブイリを避けるのに48時間しか残っていない」、CNNは「東京からたくさんの人が出国した」と報道しました。
翌17日には、イギリスの新聞ザ・デイリー・メイルが「国連は金曜日までに放射性雲がアメリカに到達すると予測」、カナダのCBC Newsは「福島原発でイギリス、アメリカ、韓国、オーストラリア、ドイツ政府は自らの国民を日本から避難させている」、ドイツのDer Spiegelは「放射性雲は東京に向かっている」、ニューヨークタイムズは「放射線量は極めて高い。日本の原発、危険は悪化」、ザ・サンは「東京を出ていけ!ゴーストタウン東京での悪夢」という記事を載せています。
それから、アメリカで約1億世帯の視聴者がいると言われているFOXニュースは、テレビで「日本の原発」の地図を見せたのですが、それには東京に「SHIBUYA EGGMAN」という原発が書かれていました。まあ、ライブハウスは確かに爆発的になることはありますが、原発とまでは言えないと思います(笑)。
このような報道の結果、東京で大パニックが起きたのです。フランスやアメリカ、イギリス、ドイツなどは、日本にいる自国民に対して福島周辺に行かないように命令を出したり、東京あるいは日本を出るように勧告したりしました。オーストリアとフィンランドは大使館業務を関西方面に移し、ある大使館は必要性が低いスタッフは帰国するよう命じました。東京の外資系企業の多くも関西や海外に飛び出し、東京や東北に滞在していた外国人の多くは出国したのです。日本外国特派員協会会報『No.1 Shimbun』の5月号によると、3月12日から4月1日の間に日本を出国した中国人は17万人以上、アメリカ人は約3万4000人に上ります。
※掲載記事・データは講師調べ。
翌13日にはAFP通信が「アメリカの専門家が警告:日本はチェルノブイリのような危機。原発を冷やすために海水を原子炉にポンプでくむのは“自暴自棄の行為”で“チェルノブイリのような災害になるかもしれない”」と報道。AP通信は「日本は複数の原発溶解を避けるために半狂乱。新しい爆発により原発に衝撃」と報道しています。
この4社(CNN、ロイター通信、AFP通信、AP通信)の報道は、現場取材できない多くの海外マスコミによく使われます。世界中に配信されるテレビや通信社の報道の言葉の選択や文章のつくり方、声のトーンは、ほかのマスコミの取材方法や報道内容に大きな影響を与えるのです。紹介した4社の記事を見た多くのマスコミによって、海外では「日本でチェルノブイリのような災害が起きている。原発は溶けて爆発し、放射性物質が大気に漏れ出している。日本政府はパニック状態で放射線病の危険性は現実的」というイメージがつくられたのです。その結果、日本は海外マスコミの加熱報道の中心になりました。
3月16日には、イギリスのタブロイド誌ザ・サンが「東京はゴーストタウン。ガソリン無し、水無し、食品無し。パニックの始まり」と報道。フランスの新聞フィガロは「福島原発を救うように頑張っている労働者は、核神風として命が犠牲にされた」、イギリスのザ・テレグラフは「次のチェルノブイリを避けるのに48時間しか残っていない」、CNNは「東京からたくさんの人が出国した」と報道しました。
翌17日には、イギリスの新聞ザ・デイリー・メイルが「国連は金曜日までに放射性雲がアメリカに到達すると予測」、カナダのCBC Newsは「福島原発でイギリス、アメリカ、韓国、オーストラリア、ドイツ政府は自らの国民を日本から避難させている」、ドイツのDer Spiegelは「放射性雲は東京に向かっている」、ニューヨークタイムズは「放射線量は極めて高い。日本の原発、危険は悪化」、ザ・サンは「東京を出ていけ!ゴーストタウン東京での悪夢」という記事を載せています。
それから、アメリカで約1億世帯の視聴者がいると言われているFOXニュースは、テレビで「日本の原発」の地図を見せたのですが、それには東京に「SHIBUYA EGGMAN」という原発が書かれていました。まあ、ライブハウスは確かに爆発的になることはありますが、原発とまでは言えないと思います(笑)。
このような報道の結果、東京で大パニックが起きたのです。フランスやアメリカ、イギリス、ドイツなどは、日本にいる自国民に対して福島周辺に行かないように命令を出したり、東京あるいは日本を出るように勧告したりしました。オーストリアとフィンランドは大使館業務を関西方面に移し、ある大使館は必要性が低いスタッフは帰国するよう命じました。東京の外資系企業の多くも関西や海外に飛び出し、東京や東北に滞在していた外国人の多くは出国したのです。日本外国特派員協会会報『No.1 Shimbun』の5月号によると、3月12日から4月1日の間に日本を出国した中国人は17万人以上、アメリカ人は約3万4000人に上ります。
※掲載記事・データは講師調べ。
関連書籍
The Japan Times NEWS DIGEST 臨時増刊号 3.11大震災・福島原発を海外メディアはどう報じたか
Eric Jonstonジャパンタイムズ
東日本大震災・海外報道の舞台裏 インデックス
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第1章 世界で薄れていた日本への関心が、地震で一変した
2011年09月12日 (月)
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第2章 過剰報道がつくられていった経緯
2011年09月13日 (火)
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第3章 海外マスコミの過激報道に対し、在日外国人と日本政府が反論を開始
2011年09月15日 (木)
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第4章 なぜ過剰報道は起きたのか
2011年09月16日 (金)
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第5章 政府は情報発信をどんどんすべきか、スクリーニングすべきか
2011年09月20日 (火)
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第6章 言論の自由を重視する海外、情報提供を重視する日本
2011年09月22日 (木)
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第7章 専門家を登場させるなら、バックグラウンドを明示すること
2011年09月26日 (月)
該当講座
東日本大震災・海外報道の舞台裏
~外国メディアは日本をどのように報道したのか~
エリック・ジョンストン(ジャパンタイムズ大阪支局次長)
石倉 洋子(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 教授)
3月11日に発生した東日本大震災がもたらした未曾有の被害と原発事故は世界中の注目を集めました。
海外メディアの報道はセンセーショナルで不正確な情報も多いと指摘される過剰な報道がされました。20年以上日本に滞在し、日本語で原発問題を含めて取材活動を続けているジョンストン記者をお招きして、東日本大震災における海外報道の舞台裏に迫ります。
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