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時代が求める人間像~知の構造化と課題設定能力~

東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラムの挑戦

教養キャリア・人
更新日 : 2011年04月21日 (木)

第5章 「東大EMP」は教養を学ぶ場ではない

小宮山宏氏

横山禎徳: 東大EMPは「教養」と思われているのではないかと思うのですが、実際は今、小宮山先生がお話ししたように、そういうものではないのです。ここのところをEMPの設立経緯をからめて、山田先生からお話しいただけますか。

山田興一: 小宮山先生のお話から、CO2が増えたら温度が上がるという環境問題だけを考えても全く解決できないんだ、ということがおわかりのことと思います。でも、少し視点を変えると明るいシナリオが見えてくる、すると「それに向かってやろう」となるのです。「じゃあ、そういう課題設定をして、実際にビジョンを出せる人間をどうやって増やしていこうか」というところから話が進んだのです。

東大では小宮山先生が総長になったとき、「本質をとらえる知」「他人を感じる力」「先頭に立つ勇気」という3つの目標をはっきり掲げ、学生を育てました。では、それを社会にどうつなぐか。我々の知を社会に活用して課題設定能力のあるリーダーを育てるために、東大EMPでは「教養・智慧」「マネジメント知識」「コミュニケーション技能」の3つを中心につくろうと考えたのです。

横山禎徳: だから「教養」という言葉が、何かぴったりこないんですよね。英語では「deep insight」とか言っているんですけれど。「課題設定型教養」なんかも、ちょっとぴったりこない。何かいい言葉はないですかね。

小宮山宏: 教養というと、欧米人はすぐ「great books」という話になる。100冊ぐらいのシェイクスピアとかね。でも、そういうことだけではないんですよ。今を生き抜くというのか、今をリードできる力をつけることなんです。でもそう言うと教養の先生から「それこそ教養だ」と言われちゃうんです(笑)。

山田興一: 教養というと、どうしても人文系と思われてしまうのですが、EMPでやっている講義の半分近くは科学と技術に関することなんです。

今の社会は経済・金融のことをある程度知っていると、それだけで回せてしまうところがありますが、日本の状況を見ていると、もうそれだけでは回らない。蓄積してきた科学・技術のリテラシーといいますか、それを使うと随分違って見えてくるんです。これはEMPを通じて日々実感しています。EMPが科学・技術リテラシーを重視したプログラムになっている点は、世界の中でもユニークなところかなと思っています。

横山禎徳: EMPは「ないない尽くし」なんです。ビジネススクールでもなければ、カルチャーセンターでもない、それからわかっていることは語らない。何がわかっていないかを先生方に告白していただくのです。

一方、受講生については、会員企業は募らない。会員企業を募ると大企業の人ばかりになってしまいますから。じゃあどんな人が来ているかというと、大企業10人、それからベンチャー企業の社長や中小企業の社長が5人、地方官僚も含めて官僚5人、それからプロフェッショナル。そういう多様な人たちのミックスの中から、何か新しいことがわかるんじゃないかと思います。

ここでやるのは単なるリーダーシップではなく「アジェンダ・シェーピング・リーダーシップ」、アジェンダ・シェーピングできるリーダーシップです。だから「教養」という言葉から抜けたいんです。

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該当講座

時代が求める人間像

~知の構造化と課題設定能力~

時代が求める人間像
小宮山宏 (東京大学 前総長、総長顧問、EMP チェアマン 株式会社三菱総合研究所 理事長)
山田興一 (東京大学 総長室顧問 EMPコ・チェアマン)
横山禎徳 (東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(東大 EMP)企画・推進責任者 社会システムデザイン研究所ディレクター・社会システムデ ザイナー)

小宮山宏 (東京大学 前総長、総長顧問、EMPチェアマン 株式会社三菱総合研究所 理事長)
大きな変革期を向えた今、これまでの延長線上に解の得られない時代に求められるリーダー・人間像とは?東京大学前総長であり東大EMPチェアマン小宮山宏氏にお話頂きます。
後半は山田興一氏(東大総長室顧問)、横山禎徳氏(社会システムデザイナー・東大EMP企画推進責任者)による鼎談があります。


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