記事・レポート
時代が求める人間像~知の構造化と課題設定能力~
東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラムの挑戦
教養キャリア・人
更新日 : 2011年04月18日
(月)
第3章 レアアースなんて大丈夫。やがて人工物は飽和する
小宮山宏: 過去100年間を俯瞰すると、この100年間で人口は3.5倍に、それを支える三大穀物生産量は7.5倍になりました。これは「100年前の人間に比べてそんなに食っている」ということじゃないですよ。牛がトウモロコシを食べて、その牛を僕らが食べる。だから人口は飽和に近づいていくけれど、肉食化が進むから穀物は足りなくなるということです。
エネルギー消費量は20倍になりました。そのうちの80%は化石資源が元ですから、それに合わせて二酸化炭素濃度が上がってきたわけです。二酸化炭素濃度が上がれば温暖化が起こるというのは、もう当たり前のことです。例えば金星は90気圧あって、大気の多くは二酸化炭素だから温室効果がすごくて、平均温度が400度ぐらいある。地球温暖化に対する疑いなんていうのはないんです。問題があるとすれば、二酸化炭素濃度が2倍になったとき、気温がマックスで何度、ミニマムで何度上昇するかという幅だけです。
こうして100年間を俯瞰すると、約40年での変化が見えてきます。では、今から40年後、2050年に何が起こるのかというと、「人工物の飽和」「地球温暖化の進行」「資源の欠乏」です。温暖化と資源の欠乏は皆さんご存じの通りですが、僕は将来を考える上で一番重要なのは「人工物の飽和」だと思っています。人工物の飽和を考えると、資源の欠乏なんて何も問題ありません。
人工物の飽和というのは何かといえば、単純です。先進国では2人に1台自動車を持っています。日本はすでに人口の約半分、約6,000万台の自動車保有台数です。では内需は何台かというと、大体12年で廃車になりますから、6,000万台÷12年=年間500万台です。この需要がずっと続いています。これ以上は売れないんです。まあ、景気が悪いと400万台になったり、景気がいいと600万台になったりするけれども、大体500万台です。先進国はみんなこの状態なので、今の日米欧の需要不足が起きているわけです。だから需要のある新興国に向かうんです。これは当たり前。
では、今、世界から注目されている中国はどうかというと、あと2~10年で人工物が飽和すると僕は思っています。しかも先ほどの年齢問題もありますから、中国をマーケットとして過大に評価してはいけないんです。必ず過剰生産が起きます。
だから希土類(レアアース)なんていうのは、何の問題もない……と言ったら言い過ぎなんだけれども、対策は明確です。しばらくは備蓄があるから、そんなにビクビクすることはない。備蓄を持っていない企業なんていうのは、ずさんなだけ。それでも当分の間は中国は売るんだから、一所懸命買うことです。けれど希土類なんて「希」いう字をつけたのが間違っているぐらいで、あんなものはどこにでもあるんです。アメリカのマウンテンパスという鉱山では、かつて生産していたのですが、中国のほうが安いから閉山してしまっただけです。けれど今回の事件で、再開することを決めました。それからオーストラリア、ベトナム、カザフも生産をはじめます。
最初からリサイクルシステムをつくっておけば、人工物が飽和した社会では資源は要らないんですよ。エネルギー資源や食料資源は永久に要るけれど、鉱物資源は要らないんです。ちゃんとしたシステムをつくれば、鉱物に関してはリサイクルのほうが安くすみます。これが、資源が要らなくなるということ、人類の希望です。これをやらなかったら日本は生きていけるはずがないんだから、非常に重要なんです。
この「人工物の飽和」ついては、10年前に出版した『地球持続の技術』(岩波新書、1999年刊)にも、15年前の『地球温暖化問題に答える』(東京大学出版会、1995年刊)にも書いています。「人工物の飽和」なんて単純な話だけれど、皆さん、聞いたことがないでしょう? 知識が膨張して、みんな細かいことはいろいろ部分的に知っているけれど、全体としてわかっている人が1人もいないんです。これがきょうのテーマの1つ、「知の構造化」の必要性です。
エネルギー消費量は20倍になりました。そのうちの80%は化石資源が元ですから、それに合わせて二酸化炭素濃度が上がってきたわけです。二酸化炭素濃度が上がれば温暖化が起こるというのは、もう当たり前のことです。例えば金星は90気圧あって、大気の多くは二酸化炭素だから温室効果がすごくて、平均温度が400度ぐらいある。地球温暖化に対する疑いなんていうのはないんです。問題があるとすれば、二酸化炭素濃度が2倍になったとき、気温がマックスで何度、ミニマムで何度上昇するかという幅だけです。
こうして100年間を俯瞰すると、約40年での変化が見えてきます。では、今から40年後、2050年に何が起こるのかというと、「人工物の飽和」「地球温暖化の進行」「資源の欠乏」です。温暖化と資源の欠乏は皆さんご存じの通りですが、僕は将来を考える上で一番重要なのは「人工物の飽和」だと思っています。人工物の飽和を考えると、資源の欠乏なんて何も問題ありません。
人工物の飽和というのは何かといえば、単純です。先進国では2人に1台自動車を持っています。日本はすでに人口の約半分、約6,000万台の自動車保有台数です。では内需は何台かというと、大体12年で廃車になりますから、6,000万台÷12年=年間500万台です。この需要がずっと続いています。これ以上は売れないんです。まあ、景気が悪いと400万台になったり、景気がいいと600万台になったりするけれども、大体500万台です。先進国はみんなこの状態なので、今の日米欧の需要不足が起きているわけです。だから需要のある新興国に向かうんです。これは当たり前。
では、今、世界から注目されている中国はどうかというと、あと2~10年で人工物が飽和すると僕は思っています。しかも先ほどの年齢問題もありますから、中国をマーケットとして過大に評価してはいけないんです。必ず過剰生産が起きます。
だから希土類(レアアース)なんていうのは、何の問題もない……と言ったら言い過ぎなんだけれども、対策は明確です。しばらくは備蓄があるから、そんなにビクビクすることはない。備蓄を持っていない企業なんていうのは、ずさんなだけ。それでも当分の間は中国は売るんだから、一所懸命買うことです。けれど希土類なんて「希」いう字をつけたのが間違っているぐらいで、あんなものはどこにでもあるんです。アメリカのマウンテンパスという鉱山では、かつて生産していたのですが、中国のほうが安いから閉山してしまっただけです。けれど今回の事件で、再開することを決めました。それからオーストラリア、ベトナム、カザフも生産をはじめます。
最初からリサイクルシステムをつくっておけば、人工物が飽和した社会では資源は要らないんですよ。エネルギー資源や食料資源は永久に要るけれど、鉱物資源は要らないんです。ちゃんとしたシステムをつくれば、鉱物に関してはリサイクルのほうが安くすみます。これが、資源が要らなくなるということ、人類の希望です。これをやらなかったら日本は生きていけるはずがないんだから、非常に重要なんです。
この「人工物の飽和」ついては、10年前に出版した『地球持続の技術』(岩波新書、1999年刊)にも、15年前の『地球温暖化問題に答える』(東京大学出版会、1995年刊)にも書いています。「人工物の飽和」なんて単純な話だけれど、皆さん、聞いたことがないでしょう? 知識が膨張して、みんな細かいことはいろいろ部分的に知っているけれど、全体としてわかっている人が1人もいないんです。これがきょうのテーマの1つ、「知の構造化」の必要性です。
時代が求める人間像~知の構造化と課題設定能力~ インデックス
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第1章 俯瞰して課題設定できること。それがリーダーの要件
2011年04月14日 (木)
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第2章 課題の連関を読み解けば、解決策が見えてくる
2011年04月15日 (金)
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第3章 レアアースなんて大丈夫。やがて人工物は飽和する
2011年04月18日 (月)
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第4章 中国のセメントプラントを日本製に造り替える=ウィン・ウィン
2011年04月19日 (火)
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第5章 「東大EMP」は教養を学ぶ場ではない
2011年04月21日 (木)
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第6章 最先端の技術を社会システムに活かす~べき論から行動へ~
2011年04月22日 (金)
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第7章 You don't know what you don't know.
2011年04月25日 (月)
該当講座
時代が求める人間像
~知の構造化と課題設定能力~
小宮山宏 (東京大学 前総長、総長顧問、EMP チェアマン
株式会社三菱総合研究所 理事長)
山田興一 (東京大学 総長室顧問 EMPコ・チェアマン)
横山禎徳 (東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(東大 EMP)企画・推進責任者 社会システムデザイン研究所ディレクター・社会システムデ ザイナー)
山田興一 (東京大学 総長室顧問 EMPコ・チェアマン)
横山禎徳 (東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(東大 EMP)企画・推進責任者 社会システムデザイン研究所ディレクター・社会システムデ ザイナー)
小宮山宏 (東京大学 前総長、総長顧問、EMPチェアマン 株式会社三菱総合研究所 理事長)
大きな変革期を向えた今、これまでの延長線上に解の得られない時代に求められるリーダー・人間像とは?東京大学前総長であり東大EMPチェアマン小宮山宏氏にお話頂きます。
後半は山田興一氏(東大総長室顧問)、横山禎徳氏(社会システムデザイナー・東大EMP企画推進責任者)による鼎談があります。
教養 キャリア・人
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