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iPad登場後の出版社のデジタル戦略とは?

電子雑誌にいち早く対応した、コンデナスト社の真意と今後の展望

BIZセミナーオンラインビジネス
更新日 : 2010年11月22日 (月)

第5章 ラグジュアリーブランドがデジタルメディアに期待するもの

田端信太郎氏

神原弥奈子: 先日、広告の接触時間のデータとして、iPad向けの広告のキャンペーンで測定した接触時間は平均30秒で、CTR(クリックスルーレート)が0.9から1.5%と、ウェブ平均の6倍だったというデータが紹介されていました。単にページビューではなく、田端さんがトライしてみたい指標はありますか。

田端信太郎: 私が今、一番興味があり、知りたいのは、ラグジュアリーブランドが本当のところデジタルメディアやネットメディアに何を期待しているのかです。僕は無知なだけかもしれませんが、これが必ずしもはっきりわからないんです。例えば単にページビューが増えることは、ラグジュアリーブランドのウェブサイトにどんな意味があるんだろうと。

eコマースの会社だったら「ページビューが増えて、コンバージョンレートが上がって、CPAが下がって、客単価が上がれば儲かる」とシンプルです。一方、ハイエンド系のラグジュアリーブランドは、指標の前に、ネットやデジタルメディアを通じてそもそも何をやりたいのかが、まだクリアになっていないように思えるんです。

神原弥奈子: ラグジュアリーブランドはブランド力のある読者層が見える媒体、例えば、『VOGUE』に広告を出していたからこそ、ネットにも積極的に出せるとは思います。

田端信太郎: 確かにそういう安心感はあると思います。世界観や相性みたいなところでの安心感ですね。雑誌はやはり、入っている広告の銘柄で格が決まるじゃないですか。でもデジタルメディアで「広告の銘柄でメディアの格が決まる」という感覚がどれだけ続けられるのか、超長期的に見れば、やや疑問にも思っています。

例えば誰かが『GQ』のデジタル雑誌を見ていたら、そこにエッチな広告が出てきたとします。でも、ターゲティング広告がアドネットワーク経由で出る世界を前提とすれば、それは、「あなたがエッチサイトばかり見ているからターゲッティングして入れましたよ」ということかもしれない。そういうことが広がると「広告の格=メディアの格」というイメージが薄まり、「広告の格とメディアの格」とが徐々にアンバンドルされていくと思うのです。
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該当講座

~iPad登場後の出版社のデジタル戦略を考える~

iPadにいち早く対応したコンデナストの真意と今後の展望

~iPad登場後の出版社のデジタル戦略を考える~
田端信太郎 (LINE株式会社 執行役員 広告事業グループ長)
神原弥奈子 (株式会社ニューズ・ツー・ユー 代表取締役)

田端 信太郎(コンデネット・ジェーピー カントリーマネージャー)
iPadやAmazonのキンドルなど、デジタル化の波に出版業界を取り巻く環境が大きく変化しています。米国でのiPad発表と同時に、iPad対応の雑誌「wired」を発表し、一早く電子雑誌の世界に名乗り上げたコンデナスト社。今回は、そのコンデナスト社のデジタル戦略やiPadへの取組み、日米の出版業界のビジネスモデルの違いなど田端氏にお話頂きます。


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