記事・レポート
iPad登場後の出版社のデジタル戦略とは?
電子雑誌にいち早く対応した、コンデナスト社の真意と今後の展望
BIZセミナーオンラインビジネス
更新日 : 2010年11月18日
(木)
第3章 メディアビジネスは異種格闘技の時代へ
田端信太郎: さて、iPadへの移行で、メディアビジネスはどうなっていくでしょう。ティム・オライリーがWeb2.0のコンセプトを立ちあげたとき、「Web2.0は、結局データをどうコントロールするかだ」と言いました。「Data is King」です。
昔なら雑誌や新聞の紙面にも、本屋の棚にも、テレビのチャンネルにも限りがありました。が、デジタルメディアにはそういうボトルネックがほとんどありません。では何が一番貴重かといえば、ユーザーデータです。今ネットで成功している企業は、どこも大量のユーザーデータを持っています。こうした中では、データを中心にメディア業界は回り、既存の媒体社と広告会社やPR会社、広告主の境界線はもちろん、書籍と雑誌、アプリケーションとウェブ、プロとアマの境界線もなくなっていくと思います。
これからビジネスをするとき、例えば雑誌でいう競合誌だけを見ていても意味がありません。異種格闘技と一緒で、相撲のつもりがいきなり蹴られるかもしれないし、土俵じゃない路上でストリートファイトが始まるかもしれないのです。きょうは“iPad vs.雑誌”に興味を持って来ている方が多いと思いますが、その観点だけだと実は間違っていて、その他、ビデオポットキャスティング、デジタルTV、そこにソーシャルメディアやECでの物販を組み合わせるなど、実は無限の可能性が広がっているのです。
コンデナスト社は雑誌中心の会社だったのですが、本当の意味でのマルチメディアカンパニーを目指している現在、新たなビジネス・モデルを考えるには、様々な可能性があると思っています。利用可能なデバイス&タッチポイントには、紙もPCもあるし、タブレット、iPad、アンドロイドもあるし、携帯もある。もしかしたらデジタルTVもあるでしょう。
CSで1チャンネル持っている感覚で、iPad向けのビデオポッドキャスティングをうまくやれば、はるかに低コストで、もっと意味あるサービスを提供できると思っています。テクノロジーがこれまでの業界の壁をどんどん壊しているのです。
一方、サービスやビジネス・モデルには既存の雑誌的な記事提供や動画の提供、特定の会員向けのサロンなども含まれますし、eコマースもあります。カスタム出版もあるかもしれません。今まで雑誌中心の出版社は、紙メディアによる雑誌記事だけでやってきましたが、マルチメディアカンパニーはこれらの組み合わせすべてでビジネスの可能性があるんです。
これからはビジネス・モデルの軸もマルチだし、いろいろな形のデバイスやタッチポイントもマルチにとっていくことが大事だと思っています。現在、そんな形のメディア会社はどこかというと、僕がひとつのロール・モデルと思っているのはブルームバーグさんです。
皆さんは「ブルームバーグは投資情報会社」というイメージしかないかもしれませんが、例えばアナウンサーがしゃべっている下で経済指標が流れるテレビもあるし、ウェブでの情報サイトもあるし、プロのトレーダー向けの専用端末から、iPhoneアプリやiPadアプリでも、情報提供をしているんです。好きな銘柄を登録しておくと、様々な時間軸でチャートはもちろん、最新ニュースが全部見られます。基本的な会社紹介から、業界関連ニュースも全部出ます。金融機関のトレーディングルームの専用端末だけでなく、ネットでもテレビでも、当然iPad以外のスマートフォンでもやっています。
ある種、投資プロフェッショナルに必要不可欠なあらゆる情報を、あらゆるメディアを通じて、どこにでも提供していく企業、という事業ドメインの定義になっていて、紙の会社なのか、ネットの会社なのか、テレビの会社なのか、そういうタッチポイントはどれでもいい、というようなポジションに自社をメディア企業として定義しているように見えます。
昔なら雑誌や新聞の紙面にも、本屋の棚にも、テレビのチャンネルにも限りがありました。が、デジタルメディアにはそういうボトルネックがほとんどありません。では何が一番貴重かといえば、ユーザーデータです。今ネットで成功している企業は、どこも大量のユーザーデータを持っています。こうした中では、データを中心にメディア業界は回り、既存の媒体社と広告会社やPR会社、広告主の境界線はもちろん、書籍と雑誌、アプリケーションとウェブ、プロとアマの境界線もなくなっていくと思います。
これからビジネスをするとき、例えば雑誌でいう競合誌だけを見ていても意味がありません。異種格闘技と一緒で、相撲のつもりがいきなり蹴られるかもしれないし、土俵じゃない路上でストリートファイトが始まるかもしれないのです。きょうは“iPad vs.雑誌”に興味を持って来ている方が多いと思いますが、その観点だけだと実は間違っていて、その他、ビデオポットキャスティング、デジタルTV、そこにソーシャルメディアやECでの物販を組み合わせるなど、実は無限の可能性が広がっているのです。
コンデナスト社は雑誌中心の会社だったのですが、本当の意味でのマルチメディアカンパニーを目指している現在、新たなビジネス・モデルを考えるには、様々な可能性があると思っています。利用可能なデバイス&タッチポイントには、紙もPCもあるし、タブレット、iPad、アンドロイドもあるし、携帯もある。もしかしたらデジタルTVもあるでしょう。
CSで1チャンネル持っている感覚で、iPad向けのビデオポッドキャスティングをうまくやれば、はるかに低コストで、もっと意味あるサービスを提供できると思っています。テクノロジーがこれまでの業界の壁をどんどん壊しているのです。
一方、サービスやビジネス・モデルには既存の雑誌的な記事提供や動画の提供、特定の会員向けのサロンなども含まれますし、eコマースもあります。カスタム出版もあるかもしれません。今まで雑誌中心の出版社は、紙メディアによる雑誌記事だけでやってきましたが、マルチメディアカンパニーはこれらの組み合わせすべてでビジネスの可能性があるんです。
これからはビジネス・モデルの軸もマルチだし、いろいろな形のデバイスやタッチポイントもマルチにとっていくことが大事だと思っています。現在、そんな形のメディア会社はどこかというと、僕がひとつのロール・モデルと思っているのはブルームバーグさんです。
皆さんは「ブルームバーグは投資情報会社」というイメージしかないかもしれませんが、例えばアナウンサーがしゃべっている下で経済指標が流れるテレビもあるし、ウェブでの情報サイトもあるし、プロのトレーダー向けの専用端末から、iPhoneアプリやiPadアプリでも、情報提供をしているんです。好きな銘柄を登録しておくと、様々な時間軸でチャートはもちろん、最新ニュースが全部見られます。基本的な会社紹介から、業界関連ニュースも全部出ます。金融機関のトレーディングルームの専用端末だけでなく、ネットでもテレビでも、当然iPad以外のスマートフォンでもやっています。
ある種、投資プロフェッショナルに必要不可欠なあらゆる情報を、あらゆるメディアを通じて、どこにでも提供していく企業、という事業ドメインの定義になっていて、紙の会社なのか、ネットの会社なのか、テレビの会社なのか、そういうタッチポイントはどれでもいい、というようなポジションに自社をメディア企業として定義しているように見えます。
iPad登場後の出版社のデジタル戦略とは? インデックス
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第1章 ブログもウェブサイトもツイッターも、みんなPublish
2010年11月16日 (火)
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第2章 デジタルメディアは人材をより早く成長させる
2010年11月17日 (水)
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第3章 メディアビジネスは異種格闘技の時代へ
2010年11月18日 (木)
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第4章 雑誌コンテンツのバラ売りは、吉と出るか凶と出るか
2010年11月19日 (金)
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第5章 ラグジュアリーブランドがデジタルメディアに期待するもの
2010年11月22日 (月)
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第6章 「マーケティング・リサーチなんてウジウジやるな」
2010年11月24日 (水)
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第7章 他社のプラットフォームに乗るメリットとデメリット
2010年11月25日 (木)
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第8章 同じ電子書籍でも、マーケットやメカニズムは多種多様
2010年11月26日 (金)
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第9章 「オウンドメディア万歳」の風潮に潜んでいるリスク
2010年11月29日 (月)
該当講座
~iPad登場後の出版社のデジタル戦略を考える~
iPadにいち早く対応したコンデナストの真意と今後の展望
田端 信太郎(コンデネット・ジェーピー カントリーマネージャー)
iPadやAmazonのキンドルなど、デジタル化の波に出版業界を取り巻く環境が大きく変化しています。米国でのiPad発表と同時に、iPad対応の雑誌「wired」を発表し、一早く電子雑誌の世界に名乗り上げたコンデナスト社。今回は、そのコンデナスト社のデジタル戦略やiPadへの取組み、日米の出版業界のビジネスモデルの違いなど田端氏にお話頂きます。
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