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伝統と現代の融和を求める旅

日本元気塾セミナー in 根津美術館
館長・根津公一×建築家・隈研吾×日本元気塾塾長・米倉誠一郎

日本元気塾建築・デザイン文化
更新日 : 2010年11月10日 (水)

第6章 チームの価値観を統一するために

内田和成氏

米倉誠一郎: チームについて伺います。まさに「チーム根津」のような感じがしました。キューレーターの方が使いやすいバックヤードにしたというのは、すごく大事だと思います。住みにくかったり使いにくかったりするような、いわゆる見栄えがいいだけの建築ではない。これはバックヤードも一緒にお考えになったのですか。

根津公一: それはもう口やかましく(笑)。国公立の美術館や博物館の中には、偉い先生にお願いをして、学芸員を入れずにバーッと設計して出来上がったものを「さあ、使いなさい」とやることがよくあるのです。有名な美術館でも学芸員の方に聞くと「本当に使いにくい」とおっしゃるんですよ。ですのでどこが使いにくいのかを具体的に聞いて、全部教えてもらってチェックしました。

それを隈先生には前もってちゃんとお伝えしたのです。いろんな要求を出したのですが、先生は全部飲んでくれました。だから時間がすごく要ったのです。普通の美術館では、予算がついたら1年ぐらいですぐ造ってしまうんです。ですので、ここはつくり方が違うのです。

米倉誠一郎: 先ほど「トップの関与」というお話しがありましたが、トップがいろいろなニーズを持って自分が関わって、「こういうものが必要だ」とやっていかないと、やはりいいものはできないのですね。

根津公一: 私の場合は必ず最終的に聞いて、知らないことがないようにしました。承知していたということですね。そして自分の想いは話し、具体的なものは全部現場に任せて案を出してもらって、やってもらっていました。ですので細かいことは言いませんでした。

米倉誠一郎: なるほど。責任はとる、ということですね。これは日本の経営者に聞かせたい(笑)。

それから、隈さんとお2人で世界中の美術館に行かれたということですが、何が一番よかったですか。

隈研吾: 一番よかったのは、明るさや光に関することが実物でわかったことです。建物の外観は写真で大体わかるんですけれど、光というのは露出で同じ空間でも明るくも暗くも撮れるので、写真ではわからないんです。どのぐらいの明るさ感、暗さ感があるかとか、質感がどういうふうに出ているかというのは実物を見ないとわからない。

根津さんと見て、「これはちょっと暗すぎる」とか「この器を置いてあるケースのクロスの色がちょっと明るすぎる」とか、一つひとつ話しているうちに、「こんな感じで」って、いろいろなことがそのときに決まったんです。「こういうものを僕らは求めているんだ」というのがわかりました。これは写真では絶対わからないことです。

根津公一: そうなんです。そのために2人だけじゃなくて、学芸部長と、隈先生の事務所の方と、(施工の)清水建設の担当者の方などと一緒に見て回ったんです。20人ぐらいのチームで一つひとつ確認しながら、「この色がいいね」「こういうふうなのがいい」「これはだめだ」とやったのです。みんなで共通のものを見ていますから、設計段階では「あのときの、あれを取り入れよう」というのがすぐわかりました。それが一番よかったとことです。
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~館長・根津公一×建築家・隈研吾VS米倉誠一郎 新創事業の全貌を語る~

日本元気塾セミナー in 根津美術館
伝統と現代の融和を求める旅
根津公一 (根津美術館 理事長兼館長)
隈研吾 (建築家)
米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/法政大学イノベーション・マネジメント研究科教授/ 一橋大学イノベーション研究センター名誉教授)

3年半に及ぶ休館を経て2009年10月に新創オープンした根津美術館に、日本元気塾塾長・米倉誠一郎氏と実際に訪れるフィールドワークセッション。 昭和16年(1941)、初代根津嘉一郎氏の遺志によって南青山に開館し、国宝7件、重要文化財87件、重要美術品96件を含む、約7千件の日本・東洋の古美術品によ....


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