記事・レポート

戸田奈津子氏が語る「映画の魅力を表現する字幕翻訳」

~1秒4文字、10文字×2行の世界~

更新日 : 2010年04月09日 (金)

第4章 若者の映画離れを食い止めたい

戸田奈津子氏

academyhillsをフォローする 無料メルマガ登録をする

戸田奈津子: 映画というのは子どものときから観る習慣がないと、大人になって急に観始めることはありません。子どものときに「映画は楽しい」という記憶が刷り込まれてこそ、映画というのが人生の一部になっていくわけで、大人になってある日突然映画を観始めるものではないのです。ですから、子どものときに映画の楽しみを教わっていないというのは、とても悲しむべきことです。

若者の映画離れは本当に深刻なのですが、シニアの方はよく映画館に足を運んでくださいます。今のシニアの方は映画で育った方たちですから、みなさん、昔は“映画ファン”で、シニア料金を活用して映画館に足を運んでくださいます。

業界は若者の映画離れをなんとかしようと、シニア料金のようなサービスを考えました。「高校生友情プライス」といって、高校生が3人で映画に行くと1人1,000円で観られるというサービスです。しかし、それでも若者は来ず、このサービスはあまり効果がなかったので、(2009年6月末に)終了してしまいました。

私は映画の素晴らしさに深入りし過ぎのきらいがありますが、たった2時間でいろいろなことを学べて、自分の世界を広げられる——そんなメディアから若い子が離れていくというのは、とても悲しい。ぜひ皆さん、若い子を映画に連れて行ってあげてください。「映画を観よう」と言ってあげてください。

私ぐらいの年齢の人は、「ヨーロッパのモノクロ映画の影と光こそ、映画の原点だ」と感じています。ところが今は大学の芸術学部の学生でも、モノクロ映画に拒否反応を示すそうです。「あ、色がついていない。こんなの嫌だ」と、映画館からさっさと出ていってしまうというのです。モノクロの美しさが全くわからず、生理的に拒否反応を示す。

そうなると、クラシック映画の良さも理解されないわけで、本当に悲しいことです。

記事をシェアする

Twitterでつぶやく

Twitterでつぶやく

記事のタイトルとURLが表示されます。
(Twitterへのログインが必要です)


メールで教える

メールで教える

メールソフトが起動し、件名にタイトル、本文にURLが表示されます。


ブログを書く

ブログに書く

この記事のURLはこちら。
http://www.academyhills.com/note/opinion/10031704MovSub.html


戸田奈津子氏が語る「映画の魅力を表現する字幕翻訳」 インデックス


該当講座

映画の魅力を表現する字幕翻訳
~1秒4文字、10字×2行の世界~
戸田奈津子 (映画字幕翻訳者)

戸田 奈津子(映画字幕翻訳者)
10月の六本木ヒルズクラブランチョンセミナーでは映画字幕翻訳者の戸田奈津子氏をお迎えします。「字幕翻訳者になりたい」と、夢を叶えるために、ゼロから出発し、門のない世界に挑み続け、字幕翻訳者として活躍するまでに20年間の歳月を振り返り、映画に魅せられたご自身の人生と、1秒4文字、10字×2行という厳しい文字制限の中から生まれる字幕翻訳の世界についてお話いただきます。


BIZセミナー 教養 文化