記事・レポート

戸田奈津子氏が語る「映画の魅力を表現する字幕翻訳」

~1秒4文字、10文字×2行の世界~

更新日 : 2010年03月17日 (水)

第1章 映画の字幕は日本だけのもの

映画のエンドロールで誰もが目にしたことのある「字幕・戸田奈津子」の文字。今でこそ字幕翻訳者として大活躍の氏ですが、夢を実現するのに、なんと20年もかかったそうです。世界でたった十数人というプロを夢見て挑戦した生き方と、厳しい字数制限のある字幕翻訳の世界、そして映画の魅力についてお話いただきました。

講師:戸田奈津子(映画字幕翻訳者)

戸田奈津子氏

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戸田奈津子: ここ六本木ヒルズには、映画のイベントでよく出入りさせていただいております。華やかなレッド・カーペットは大抵ここと決まっているのですが、今日はそういう表舞台とは違う、映画の裏側のお話をしたいと思います。

今年(2009年)8月に『HACHI』という映画が公開されたとき、主演のリチャード・ギアが来日してプロモーションで『笑っていいとも!』に出演しました。そのときリチャード・ギアはこう言いました。

「僕はインターナショナルなスターだから、主演映画は世界各国で公開される。イタリアでも『プリティ・ウーマン』『愛と青春の旅だち』『シカゴ』など、みんな公開された。でもイタリアで僕の“生の声”を聞いた人は1人もいないんだ」

これ、どういう意味かわかりますか? イタリアのお客さんは、彼の映画は全部観ているのですが、彼の声は聞いたことがないのです。なぜなら、全部“吹き替え”だからです。

でも我々は違います。リチャード・ギアの声はもちろん、俳優の声は全部生で聞いています。こういうことができるのは字幕があるからですが、これは日本だけのもので、海外には字幕は基本的にありません。東京やカンヌの国際映画祭などでは、英語や仏語の字幕が入っていますが、そうした映画祭に行くのは批評家や業界の人で、一般の人ではありません。

今はハリウッド映画が世界を席捲していて、上映されるのはほとんどがハリウッドの大作です。アメリカ人はハリウッド映画を観ていれば十分満足なので、外国映画はまず観ません。例えばアメリカの地方で字幕付きのフランス映画を上映しても、誰もお客さんは来ません。字幕を読む習慣がないからです。万が一フランス映画がアメリカの地方で上映されることがあれば、吹き替え版です。

これが世界の常識です。つまり、外国では映画は基本的に吹き替え版で観ているということです。

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映画の魅力を表現する字幕翻訳
~1秒4文字、10字×2行の世界~
戸田奈津子 (映画字幕翻訳者)

戸田 奈津子(映画字幕翻訳者)
10月の六本木ヒルズクラブランチョンセミナーでは映画字幕翻訳者の戸田奈津子氏をお迎えします。「字幕翻訳者になりたい」と、夢を叶えるために、ゼロから出発し、門のない世界に挑み続け、字幕翻訳者として活躍するまでに20年間の歳月を振り返り、映画に魅せられたご自身の人生と、1秒4文字、10字×2行という厳しい文字制限の中から生まれる字幕翻訳の世界についてお話いただきます。


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