記事・レポート
貧困のない世界を創る ~ソーシャル・ビジネスと新しい資本主義~
ノーベル平和賞受賞者ムハマド・ユヌス氏 来日記念セミナー
更新日 : 2009年11月06日
(金)
第4章 ソーシャル・ビジネスで「技術と問題」をつなげば、社会問題は解決できる
ムハマド・ユヌス: 私どもが大企業と組むと、みんなが注目するようになりました。まず、フランスの食品企業ダノンと、『グラミン・ダノン・ソーシャル・ビジネス・カンパニー』をバングラデシュで立ち上げました。ダノンは世界中でヨーグルトをつくっていますが、グラミン・ダノンは、バングラデシュや他の国々の栄養不良で苦しんでいる子どもたちのために、ビタミンや亜鉛、ヨード等の微量栄養素を入れた安いヨーグルトをつくりました。
グラミン側とダノン社は、「出資した元本以上の利益はとらない」という約束をし、その後は自分たちで回っていくようにし、そこから収入を上げ、それを再投資するというやり方で合意しています。
社会的な目標のためにソーシャル・ビジネスを立ち上げると、世界観が変わるはずです。考え方、目標も変わるので、設計のあり方も変わり、ビジネスの仕組みも変わっていくのです。とてもわくわくします。多くの子どもたちが栄養不良から抜け出し、幸せになる。子どもたちを健康にすることからも大きな喜びが生まれるのです。皆さんびっくりするはずですよ。私をこれは「スーパーハピネス」と呼んでいます。ぜひそういう喜びをみなさんにも知ってほしいと思います。
フランスのヴェオリアという世界最大級の水の会社とは、『グラミン・ヴェオリア・ウオーター・カンパニー』をつくりました。バングラデシュの水は砒素などで汚染されているために、この会社が水を処理してきれいにして、貧しい人々に売るようにしたのです。非常に安い、手が届く価格なので、人々は気に入ってくれました。
ドイツのBASF社とも契約を結びました。マラリアやデング熱などにも効くような栄養剤を安くつくるためです。ドイツのフォルクスワーゲン社からも「グラミン銀行と組んでソーシャル・ビジネスをやりたい」と申し出があったため、私は「バングラデシュの村人たちが買える車をつくってください。環境に優しく公害を起こさない、そして多目的に使えるエンジンにしてください」と言いました。これも、「やりましょう」ということになって、今デザインについてアイディアを出しているところです。
ソーシャル・ビジネスに一歩踏み込むときには、具体的な目標がなければなりません。我々はいろいろな種類のソーシャル・ビジネスがつくれるはずです。例えば環境問題に対処する再生可能エネルギーのために、素晴らしいソーシャル・ビジネスができるはずです。食糧のためのソーシャル・ビジネスも素晴らしいですし、ヘルスケアのサービスが拡大し、最先端の医療が貧しい人にも届くようにするのもソーシャル・ビジネスになるはずです。
ぜひ、日本の企業、日本の若い人々とともにソーシャル・ビジネスをやりたいと思います。日本の若い人々に何かデザインしてほしい。ソーシャル・ビジネスを設計することも、重要な貢献です。まず種を設計し、それを植えつければ、問題は解決の方向に進んでいくはずです。
私が強調したいのは、世界中の企業はパワフルな技術を持っているはずですが、今は「利益を上げる」ためだけに使われている。それを貧困や環境の劣化、公衆衛生、住宅など、世界中のさまざまな問題の解決のために使えば、そういう問題はなくなるはずだということです。
必要なのは、技術と問題を結びつけることです。それがソーシャル・ビジネスです。
今の経済危機は、食糧危機、エネルギーの危機、環境の危機、いろいろなものが合わさっています。すべてのことに対処して、ここから抜け出していかなければなりません。今の時期はじっくり考えて、そして次の段階に入ることが必要です。
グラミン側とダノン社は、「出資した元本以上の利益はとらない」という約束をし、その後は自分たちで回っていくようにし、そこから収入を上げ、それを再投資するというやり方で合意しています。
社会的な目標のためにソーシャル・ビジネスを立ち上げると、世界観が変わるはずです。考え方、目標も変わるので、設計のあり方も変わり、ビジネスの仕組みも変わっていくのです。とてもわくわくします。多くの子どもたちが栄養不良から抜け出し、幸せになる。子どもたちを健康にすることからも大きな喜びが生まれるのです。皆さんびっくりするはずですよ。私をこれは「スーパーハピネス」と呼んでいます。ぜひそういう喜びをみなさんにも知ってほしいと思います。
フランスのヴェオリアという世界最大級の水の会社とは、『グラミン・ヴェオリア・ウオーター・カンパニー』をつくりました。バングラデシュの水は砒素などで汚染されているために、この会社が水を処理してきれいにして、貧しい人々に売るようにしたのです。非常に安い、手が届く価格なので、人々は気に入ってくれました。
ドイツのBASF社とも契約を結びました。マラリアやデング熱などにも効くような栄養剤を安くつくるためです。ドイツのフォルクスワーゲン社からも「グラミン銀行と組んでソーシャル・ビジネスをやりたい」と申し出があったため、私は「バングラデシュの村人たちが買える車をつくってください。環境に優しく公害を起こさない、そして多目的に使えるエンジンにしてください」と言いました。これも、「やりましょう」ということになって、今デザインについてアイディアを出しているところです。
ソーシャル・ビジネスに一歩踏み込むときには、具体的な目標がなければなりません。我々はいろいろな種類のソーシャル・ビジネスがつくれるはずです。例えば環境問題に対処する再生可能エネルギーのために、素晴らしいソーシャル・ビジネスができるはずです。食糧のためのソーシャル・ビジネスも素晴らしいですし、ヘルスケアのサービスが拡大し、最先端の医療が貧しい人にも届くようにするのもソーシャル・ビジネスになるはずです。
ぜひ、日本の企業、日本の若い人々とともにソーシャル・ビジネスをやりたいと思います。日本の若い人々に何かデザインしてほしい。ソーシャル・ビジネスを設計することも、重要な貢献です。まず種を設計し、それを植えつければ、問題は解決の方向に進んでいくはずです。
私が強調したいのは、世界中の企業はパワフルな技術を持っているはずですが、今は「利益を上げる」ためだけに使われている。それを貧困や環境の劣化、公衆衛生、住宅など、世界中のさまざまな問題の解決のために使えば、そういう問題はなくなるはずだということです。
必要なのは、技術と問題を結びつけることです。それがソーシャル・ビジネスです。
今の経済危機は、食糧危機、エネルギーの危機、環境の危機、いろいろなものが合わさっています。すべてのことに対処して、ここから抜け出していかなければなりません。今の時期はじっくり考えて、そして次の段階に入ることが必要です。
関連書籍
貧困のない世界を創る—ソーシャル・ビジネスと新しい資本主義
ユヌス,ムハマド, 猪熊 弘子【訳】早川書房
ムハマド・ユヌス自伝—貧困なき世界をめざす銀行家
ユヌス,ムハマド, ジョリ,アラン, 猪熊 弘子【訳】早川書房
貧困のない世界を創る ~ソーシャル・ビジネスと新しい資本主義~ インデックス
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第1章 27ドルで借金苦という異状。グラミン銀行の誕生背景
2009年10月07日 (水)
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第2章 グラミン銀行がニューヨークに進出した理由
2009年10月16日 (金)
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第3章 なぜ100年に1度の危機に陥ったのか。ビジネスの概念を問い直せ
2009年10月26日 (月)
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第4章 ソーシャル・ビジネスで「技術と問題」をつなげば、社会問題は解決できる
2009年11月06日 (金)
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第5章 ソーシャル・ビジネスもビジネス。持続可能でなければならない
2009年11月17日 (火)
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第6章 お金を稼ぐ目的は何ですか?
2009年11月27日 (金)
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第7章 ソーシャル・ビジネスとチャリティの違い
2009年12月08日 (火)
該当講座
ノーベル平和賞受賞者ムハマド・ユヌス氏来日記念セミナー
貧困のない世界を創る ~ソーシャル・ビジネスと新しい資本主義~
ムハマド・ユヌス(グラミン銀行総裁)
貧困層に無担保で少額の融資を行う「マイクロクレジット」という手法によって、貧しい人々の経済的自立を支援するグラミン銀行を設立し、その活動によってノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏。彼が新たに提唱する「ソーシャル・ビジネス」の構想と実践についてお話いただきます。
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