記事・レポート

オバマ大統領と今後のアメリカ

ライブラリートーク 「日本の政治シリーズ 第1回」

更新日 : 2009年07月16日 (木)

第3章 政治家の説明能力の欠如は、教育問題でもある

ジェラルト・カーティス コロンビア大学教授
ジェラルト・カーティス コロンビア大学教授

ジェラルド・カーティス: 先日、日本の若手の政治家と懇談をしたのですが、その中で「オバマさんはすごい」という話になりました。彼らは「オバマ大統領はインターネットを非常に上手に使ってお金を集めたり、コミュニケーションしたりしている。これを見習うべきだ」と言うのです。しかし、インターネットはコミュニケーションの道具の1つにすぎません。国民に何を言うのか、どういうふうに言うのかが問題です。

今から私がお話しすることは、アメリカの政治家にとっては常識なのですが、日本の、特に若手の政治家は、目を大きくして聞いてくれる話です。

「テレビに出るとき、君たちが官僚以上にいろいろな知識を持っていることを見せる必要はない。それよりも、朝、パジャマ姿の夫婦がテレビをつけて、寝ぼけ眼でコーヒーを飲みながら見ようとするときに、彼らの目が覚め、感心して一所懸命聞いてくれるように、わかりやすく自分が言いたいことを言うべきだ」

日本の伝統では、政治家が国民とコミュニケーションすることが重要である場面があまりありませんでした。これは、自民党政治では派閥の均衡によって総理総裁が選ばれてきたということが大きいと思います。しかし時代が変わったので、これからの日本の政治家はもっと国民とコミュニケーションする必要があります。

ジェラルト・カーティス コロンビア大学教授

これは政治の問題だけではなく、日本の教育問題でもあります。というのは、コロンビア大学の大学院に来る日本の学生が一番困るのはゼミです。アメリカの大学のゼミでは、学生に「この本を読んで、どう思ったか?」と聞きます。日本の学生は本の要約は上手ですが、「それで君はどう思ったのか」と問われると黙ってしまうのです。日本の大学教育は私の知る限り、学生が自分で考えて先生と違う意見を話すようにはなっていません。 オバマ大統領は「コミュニケーション能力が抜群である」「感情的にならない」「冷静にわかりやすく説明をして国民を説得する」これらの能力を持っています。これらがあるから、何とか経済問題を克服できる可能性があると思うのです。 私が去年(2008年)選挙キャンペーンのとき、「オバマは21世紀のすごい政治家、クリントンは20世紀のすばらしい政治家、マケインは19世紀の政治家」と言いましたが、オバマさんが勝ってよかったのです。ヒラリー・クリントンさんも大したものです。あの行動力、あのエネルギー、彼女はすごい政治家です。だからオバマ&ヒラリーは素晴らしいコンビだと思います。