記事・レポート

SFアポカリプス

アポカリプスは黙示録

更新日 : 2009年03月02日 (月)

第4章:『宇宙戦争』はSFアポカリプスのはしり

『宇宙戦争』

澁川雅俊: 次に代表的なSF作家は19世紀末から20世紀の半ばまで小説はもとより歴史書や随筆を書き、世界中にそれらの読者を獲得したH・G・ウェルズです。彼は『タイム・マシン』、『透明人間』、『宇宙戦争』などのSFを書きました。

とりわけ『宇宙戦争』(1898年)は火星人による地球侵略の様子を描き、読者に地球人の危機を初めて感じさせた古典的名作SFとして著名です。この本は2005年にハヤカワ文庫、角川文庫、創元SF文庫、偕成社文庫、講談社青い鳥文庫(後者2点は児童書)などで集中的に刊行されていますが、それは同年スピルバーグによって映画化されたことに由来するものでしょう。

もっともこの「宇宙戦争」を下敷きにした最初の映画は1953年に制作されており、私も中学生の時にこれを見ており、あの蛸坊主の火星人のイメージをその映画で初めて見ています。宇宙人が攻めてくる、この手の劇場映画やTV映画はその後たくさん制作・放映されており、映画「インデペンデンス・デイ」(D・デブリン他著、1996年徳間文庫刊)に繋がっていますが、それらの源流がこの『宇宙戦争』にあるといってよいでしょう。

また『タイム・マシン』や『透明人間』も映画化されており、さらにそれらの異なったヴァージョンが劇場映画やTV映画になっているので、皆さんもよくご存じのはずです。

『SF雑誌の歴史』

●1920~50年代、百花繚乱のSF

H・G・ウェルズ以降のSFの展開については『SF雑誌の歴史』(マイク・アシュリー著、牧真司訳、2004年東京創元社刊)に詳しく書かれています。それによると、SFのその後の展開は、20年代から50年代にかけて英米で盛んに出版されていたパルプマガジンの展開につれて隆盛を極めたようです。

パルプマガジンというのは、そうですね、わが国ではかつて「三文(安っぽい)雑誌」に相当しますが、そうした雑誌には記憶の片隅にも上らないような SFが数多く掲載され、その中から後日単行本で出版されるような名作が表れるようになります。なにやらわが国におけるコミックマガジンと名作まんがの関係を彷彿させます。

わが国のSFの展開は英米のそれを後追いしてきたようですが、先の大戦後国連軍による占領下で、米国兵士の三文小説読書の影響が強く現れ、それ以降エンターテインメント小説の中で新しい地位を占めました。
(その5に続く、全7回)

※このレポートは、2008年10月9日に六本木ライブラリーで開催したカフェブレイク・ブックトーク「SFアポカリプス」を元に作成したものです。

※書籍情報は、株式会社紀伊国屋書店の書籍データからの転載です。

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