研究者たちの往復書簡 ~未来像の更新~
哲学×宇宙生物学「ウィルスの生命観を哲学的に考える」vol.2
アカデミーヒルズ発刊書籍『人は明日どう生きるのかー未来像の更新』をきっかけに、その著者たちが、分野を越えて意見や質問を取り交わす「研究者たちの往復書簡」シリーズ。
今回は、哲学者の荒谷大輔さんと合成生物学・宇宙生物学者の藤島皓介さんが書簡を送り合います。
vol.1では、荒谷さんから藤島さんへ書簡が送られました。
今回は、その書簡に対して、藤島さんが返答するとともに、今度は荒谷さんへ質問を送ります。
研究者たちの往復書簡
哲学×宇宙生物学:ウィルスの生命観を哲学的に考える vol.2
< 往復書簡の流れ >
藤島皓介さんからの書簡
荒谷さんの書簡を受けて
荒谷さんへの質問
さて今回の企画の意図として、私が専門とする宇宙生物学の領域から見た時に、哲学がどのように映るのかという試みができれば良いと考えております。荒谷さんは『人は明日どう生きるのか』の中で、幸せとは「自分」という枠組みを外した時に見出されるもの」とおっしゃられていました。これは近代社会における個人の幸福が経済的・物質的な豊かさやを指標に語られることへのアンチテーゼだと捉えています。個人にとっての幸せの答えがそれぞれ違うのであれば、「幸せ」の本質に迫るためには「われわれ」という枠組みの中での自分を見出す必要があると。この共同体の一員として他者のために存在することに価値を見出すことを荒谷さんは「愛」と表現していますが、そう考えるとウイルスと生命の共生関係もある意味「愛」で結ばれていると言えそうですね。この「愛」の共同体を考える時に直感的に思ったことは、物理的な枠組みで捉えるだけでなく、ゾーエー的な時間軸上の生の連鎖も意識することで、経済的・物質的豊かさとは異なる次元で「今生きていることの幸せ」を感じることができるかなと思いました。「ゼロへの欲望」とはすなわち、そのような時間空間的な枠組みを超越した視点への回帰を意図していますでしょうか。ゼロへの欲望[要約]
次回は、vol.3 哲学と宇宙生物学の交差点
藤島さんからの書簡に、荒谷さんはどのようなお返事をするのでしょうか?
どうぞお楽しみに!(8月中旬公開予定)
プロフィール
哲学者、江戸川大学基礎・教養教育センター教授・センター長 1974年生。東京大学大学院博士課程単位取得退学。博士(文学)。日本文藝家協会会員。専門研究の枠組みに捕われず哲学本来の批判的分析を現代社会に適用し、これまでなかった新しい視座を提示することを得意とする。著書に『資本主義に出口はあるか』(講談社現代新書)、『ラカンの哲学:哲学の実践としての精神分析』(講談社メチエ)、『「経済」の哲学:ナルシスの危機を越えて』(せりか書房)、『西田幾多郎:歴史の論理学』(講談社)、『ドゥルーズ/ガタリの現在』(共著、平凡社)など。
宇宙生物学・合成生物学、東京工業大学 地球生命研究所 1982年、東京都生まれ。東京工業大学地球生命研究所(ELSI)「ファーストロジック・アストロバイオロジー寄付プログラム」及び慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科にて特任准教授を兼任。2005年、慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、2009年、同大学大学院政策・メディア研究科博士課程早期修了。日本学術振興会海外特別研究員、NASA エイムズ研究センター研究員、ELSI EONポスドク、ELSI研究員などを経て、2019年4月より現職。 生命の起源と進化、土星衛星エンセラダス生命探査、火星での生存圏など研究テーマは多岐にわたる。過去にコズミックフロント(NHK BSプレミアム)、又吉直樹のヘウレーカ!(NHK Eテレ)などTV出演歴あり。
研究者たちの往復書簡 ~未来像の更新~ インデックス
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哲学×宇宙生物学「ウィルスの生命観を哲学的に考える」vol.1
2020年07月06日 (月)
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哲学×宇宙生物学「ウィルスの生命観を哲学的に考える」vol.2
2020年08月07日 (金)
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哲学×宇宙生物学「ウィルスの生命観を哲学的に考える」vol.3
2020年09月07日 (月)
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◆書籍『人は明日どう生きるのかー未来像の更新』とは
都市とライフスタイルの未来を議論する国際会議「Innovative City Forum 2019(ICF)」における議論を、南條史生氏と森美術館、そして27名の登壇者と共に発刊した論集。「都市と建築の新陳代謝」「ライフスタイルと身体の拡張」「資本主義と幸福の変容」という3つのテーマで多彩な議論を収録。