記事・レポート

LIVING WITH BOOKS

更新日 : 2020年12月15日 (火)

第2章 ブックトーク~書物を語る

ブックトーク〜書物がたり・・・
澁川雅俊:ライブラリーで私は、主に選書とエントランス図書展示とブックトークをしてきた。エントランス展示は、端的に言えば、「観て多くの書物を知る」プログラム。ブックトークは、読書会とは異なり、「聴いて、触って、開いて多くの書物を知る」プログラム。ブックトークはそもそも子どもたち向けの定型的な催しだが、森羅万象を包括する広大かつ深淵な書物世界を案内する必要があることは大人も子どもも変わりはない。
 かくして「ブックトーク」を2007年に開始した。グレートブックス・ライブラリーの雰囲気にふさわしい催しと評価されたのか、毎回15名程度、年3〜4回、12年、回数で49回も続いた。なお開始当初は「カフェブレイク・ブックトーク」(15:00-16:30)と称して昼間に開催していたが、メンバーからの要望もあり、「第16回のんびりいこうよ(2010.2.18)」より夕食前の時間帯に変え、名称も「アペリティフ・ブックトーク」へ変更して継続した。
通算600名に及ぶトーク聴衆者の反応はさまざまであるが、共通するのは、「気づき」を促すきっかけを与えてくれたとの評である。具体的には、紹介された本を、「知らなかった」、「知ってはいたが読んだことはなかった」、「読んだのだが、その本に別の読み方があるとは思わなかった」などなどであり、「読んでみよう」と口にした人たちが少なくなかった。それはトークの企画者・演者には心地よく響いた。
世の中の優れた読者であっても書物の世界に精通しているわけではなく、またそうできるわけもない。しかし司書やわけ知りの書店主の、ときおりの気取らない書物がたり・・・の中からそれぞれの読書生活の新たな展開を見出すことができたことに思い至った人たちが少なからずいたことは至福の至である。
ブックトークの進め方
澁川雅俊: ブックトークは、ある特定のテーマを定め、そのテーマについて書いている本を集めて物語を創り、その中でさまざまな本をさまざまに紹介するのがその内容である。「さまざまに」というのがそのやり方の要点で、ブックトーカーがこのプログラムの主旨と毎回のテーマの趣意に基づいて個性的に行うものである。
 
テーマを選ぶ
テーマは、時節柄、今日的話題、アニヴァーサリーな出来事、新刊図書の特筆すべき出版傾向や書物世界の意外性などに着目して決める。エントランス図書展示のテーマもそうだが、ブックトークについても、毎週火曜日の選書作業中に浮かんでくることが多い。おそらくそれはどちらの催しも、高質で、旬な本をいつも書棚の上を流れるように並べる、としたライブラリー蔵書構築のポリシーがベースとなっているからだろう。
 
仕込みいろいろ
まずトークの事前準備は、テーマに関連し、トークに取り上げるべき本を広範囲に収集することから始まる。その数は、最終的に絞り込む30点の5〜6倍に上る。それらのすべてがその時点でライブラリーに架蔵されているとは限らず、未蔵のものは発注することになる。中には少々古い出版の本もあるが、それらは主として中古本書店、古書店で調達する。
次はトークで紹介する本の絞り込み。最初に現本のあるなしにかかわらず、まずすべての本の中味、話題性、書き手の力量・能才、造本の出来栄え(とりわけ装丁や装画・挿画など)を点検する。そしてこの作業を通じてトークの内容、すなわち書物がたり・・・の語りを創作することになる。トークの概要はテーマの選定の段階から頭の中で育てるのだが、この段階であらすじはほぼ決定する。その後は、いよいよトークの語りを確定する。このプログラムでは普通は、紹介する本の現品を聴衆に示すのだが、そのサイズが大・中・小とさまざまで、大型本は手に持って、必要に応じてページを捲って、お話をするのがちょっとばかり苦痛だし、小型本は少し離れると表紙に何が書画されているのか聴き手によく見えないことがある。ライブラリーではパワーポイントを使ってトークを進め、現品はブックトラックに面出しで陳列(トーク後はグレートブックライブラリーに3ヶ月間)することにした。この段階に至ってパワーポイントのプレゼンテーション、すなわちスライドに取り挙げる本の顔、つまり表紙と、必要に応じてその本を象徴するページの画像、ナレーションの要点をデザインする。そして最後に聴衆に配布するために、すべての本のリストを、時には重要な本に短い解説文を付けて作成し、トークの準備を終える。
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