記事・レポート

時の彼方の空遠く~縄文人、私たちの祖先

私たちのアイデンティティに迫る本

更新日 : 2019年05月14日 (火)

第2回 日本人はどこから来たのか?

日本列島の成り立ち
澁川雅俊:私たちの祖先に思いを馳せる前に、まずは日本列島の成り立ちに目を向けてみましょう。

図解 日本列島100万年史〈全2巻〉』〔山崎晴雄、久保純子/講談社〕は、第1巻では列島の誕生から2万年前まで、第2巻はそれ以降の日本列島の地形史という構成で、自然環境を中心に説明しています。子ども向けの図解ですが情報量は豊富で、列島の誕生から現在に至る100万年の歴史をわかりやすいビジュアルを通じて学ぶことができます。

この本によると、日本列島は地質学的時代区分のうち、新中世(2,300万~500万年前)にユーラシア大陸から分離し始め、その後、日本海が形成されたとしています。この時期、すでに恐竜などの巨大生物は絶滅し、人間の祖先につながる類人猿(オランウータン、ゴリラ、チンパンジーなど)がアフリカに現れていたようです。

巨大生物と言えば、「マンモス」を思い浮かべる人も多いでしょう。「ハーバード大学遺伝子研究チームの挑戦」との副題が付された『マンモスを再生せよ』〔B・メズリック/文藝春秋〕によると、マンモスは縄文時代末期(約3,000年前)まで存在していたようです。なお、本書は遺伝子編集など最新科学を総動員し、マンモスを現代に再生させるプロジェクトを描いたノンフィクションです。

日本列島は2万~1万年前にユーラシア大陸から完全に分離し、現在の形になったとされています。また、長く続いた氷河期が1万年前に終わり、その後は急激に温暖化が進んだことで、縄文時代の中期は現在よりも平均気温が数度高かったと考えられています。雨が多くなったことで、大地には実をつける落葉広葉樹の森が生まれ、それを食料とする動物も増えていきました。海では温暖化によって水位が上昇し、あちこちに浅瀬ができ、魚や貝もとれるようになったと考えられています。

縄文人以前の「先住民」はいたのか?
澁川雅俊:縄文人は1万5,000~3,000年ほど前に日本列島で栄えたと考えられていますが、それ以前、日本列島に暮らしていた先住民はいたのでしょうか?

全集 日本の歴史〈全16巻、別巻1巻〉』の第1巻にあたる『列島創世記』〔松木武彦/小学館〕では、25万~10万年前にジャワ原人や北京原人の流れを引くアジア系旧人が、日本列島に到着したと推測しています。さらに5万年前、アフリカを旅立った新人類がアジア系旧人を圧倒しながらナウマン象を追い、初めて列島に到来した可能性を指摘しています。

一方、『日本人はどこから来たのか?』〔海部陽介/文藝春秋〕では、太古の航海術を使った実験や、世界各地の遺跡の年代調査比較、DNA分析、石器の比較研究に基づいた仮説を示しています。それによると、アフリカを出た新人類は4万8,000年前、ヒマラヤ山脈を挟んで南北に別れて拡散し、その1万年後に東アジアで再会したとしています。そして、私たちの祖先は対馬ルート、沖縄ルート、シベリア経由北海道ルートという3つの経路から日本に到達したとし、次のように述べています。

「日本の遺跡は改めて吟味すれば、世界に例を見ないほど充実しています。初期のホモ・サピエンスが活動していた旧石器時代の遺跡は1万カ所以上ある。しかもそのほとんどが、3万8,000年前以降に爆発的に現われているのです。これは、我々の祖先が3万8,000年前に到来したとしか考えられません」

いずれにしても、縄文人が栄える前から〈原日本人〉が暮らしていたと考えてよさそうです。それは旧石器時代のことですから、いま想像するに、彼らはアニメ漫画で有名になった「はじめ人間ギャートルズ」のような生活をしていたのかもしれません。