記事・レポート
日本元気塾セミナーリーダーの本質とは? そして、東京2020へ!
変革を成功に導く“独裁力”/川淵三郎×米倉誠一郎
更新日 : 2018年03月13日
(火)
第5章 リーダーに求められる決断と覚悟
プロとしての「引き際の美しさ」
米倉誠一郎: 川淵さんは、30年にわたりサラリーマンを経験されていますが、51歳の時に子会社への出向を命じられます。これがご自身にとっても、Jリーグにとっても大きな転機になった。
川淵三郎: 当時はバブル全盛期、僕は名古屋支店の金属営業部長で、商品がどんどん売れていく。選手や監督の傍ら、仕事も一切手を抜かずに頑張ってきましたから、それが自分の実力であると錯覚していました。忘れもしない1988年5月2日、上司から子会社への出向を告げられました。妻は「それまで見たことがないほど、顔が真っ青になっていた」と言っていました。僕が真っ青になったのはこの時と、「ドーハの悲劇」の2回だけ(会場笑)。
その後、怒り心頭になり「会社なんて辞めてやる!」と思ったのですが、冷静になると「自分は会社の名刺があったから仕事ができていた」と気づき、サラリーマンとしての先が見えてしまった。そんな時、JFAから声がかかり、残りの人生をサッカーに懸けようと思ったのです。
米倉誠一郎: 退路を断ったことで、強い覚悟を生まれたわけですね。覚悟と言えば、川淵さんは監督や組織の長として、引退通告や契約解除など、マイナス面の決断も行ってきました。リーダーとしての覚悟が試される仕事ですよね。
川淵三郎: 僕は必ず1対1で話しますが、「辞めてくれ」と告げる瞬間は何度経験してもしんどい。今でも覚えているのは、日本代表を率いたハンス・オフト監督。最終的に、彼は「ドーハの悲劇」でW杯出場を逃した。それでも、アジアの大会で初優勝を果たすなど、日本サッカーを確実に強くしてくれたため、僕は監督を続けてもらおうと考えていました。しかし、JFA内部から「国際経験の豊富な監督に変えるべき」と言われ、先を見据えればそれも妥当だと思い直し、オフトを呼びました。
部屋に入ると、彼は今後のスケジュールについて話し始めた。僕はそれを遮り、「辞めてもらおうと思っている」と告げました。すると、彼はニコッと笑い、「僕もそう思っていたよ」と言ったのです。実績を盾に抗議するでもなく、プロとして結果が全てであることを理解し、さらに、僕に嫌な思いをさせないよう笑って受け入れてくれた。その引き際の美しさに、僕は感動してしまったのです。
米倉誠一郎: えー、すごい話ですね。どれほど辛くとも、プロとして覚悟を持って決断する。日本の経営者に聞かせたいお話です。バブル崩壊から現在に至るまで、リーダーには事業撤退やリストラなど、マイナス面の決断を迫られる機会が増えました。しかし、日本の経営者はその種の決断が非常に苦手で、タイミングを見誤るケースが実に多い。このあたりも、川淵さんのように覚悟を持って決断できる「プロ経営者」が求められるようになった理由だと思います。
改革すべきものはまだたくさんある!
米倉誠一郎: 川淵さんは現在、日本トップリーグ連携機構の会長を務められていますが、バスケットボールの次は何を変革されるのでしょう?
川淵三郎: 先日、日本ホッケー協会の改革が終わりました。ガバナンス改革を断行し、損害保険ジャパン日本興亜株式会社とトップパートナー契約と結び、選手のサポート体制を厚くしました。実はそれまでは協会の財政難のせいで、ホッケーの代表選手は遠征や合宿費用を数十万円も自己負担していました。これでは強くなることもできません。現在はハンドボールの改革に取り組んでいますが、こちらでも怒鳴りまくっています(笑)。その次はバレーボールを変える予定です。
米倉誠一郎: 今後も「勝利の方程式」を様々な競技団体に落とし込み、スポーツ界全体を活性化していくわけですね。
川淵三郎: 日本のあらゆるスポーツを発展させたい。それが僕の夢。だから、1つの競技だけが発展しても意味はないと考えています。あらゆるスポーツが横串でつながり、共に発展していくことが、代表の強化や競技力の向上、豊かな社会づくりにつながると信じているからです。やることは、まだたくさんあります(笑)。
米倉誠一郎: 傘寿を超えて、この心意気! 本当に圧倒されますね。例えば、カルビーの松本晃会長兼CEOは商社、医療、食品と全く脈絡のないキャリアを歩まれていますが、川淵さんと同じく「勝利の方程式」を持っているため、どこに行っても成果を出す。さらに、もはやお金や名誉のために仕事をせず、しがらみもないから、大胆な改革もどんどんやる。こうした人がスポーツをはじめ、様々な分野に広がっていくことも、日本再生、地方創生のカギになると思います。
川淵三郎: 先日、日本ホッケー協会の改革が終わりました。ガバナンス改革を断行し、損害保険ジャパン日本興亜株式会社とトップパートナー契約と結び、選手のサポート体制を厚くしました。実はそれまでは協会の財政難のせいで、ホッケーの代表選手は遠征や合宿費用を数十万円も自己負担していました。これでは強くなることもできません。現在はハンドボールの改革に取り組んでいますが、こちらでも怒鳴りまくっています(笑)。その次はバレーボールを変える予定です。
米倉誠一郎: 今後も「勝利の方程式」を様々な競技団体に落とし込み、スポーツ界全体を活性化していくわけですね。
川淵三郎: 日本のあらゆるスポーツを発展させたい。それが僕の夢。だから、1つの競技だけが発展しても意味はないと考えています。あらゆるスポーツが横串でつながり、共に発展していくことが、代表の強化や競技力の向上、豊かな社会づくりにつながると信じているからです。やることは、まだたくさんあります(笑)。
米倉誠一郎: 傘寿を超えて、この心意気! 本当に圧倒されますね。例えば、カルビーの松本晃会長兼CEOは商社、医療、食品と全く脈絡のないキャリアを歩まれていますが、川淵さんと同じく「勝利の方程式」を持っているため、どこに行っても成果を出す。さらに、もはやお金や名誉のために仕事をせず、しがらみもないから、大胆な改革もどんどんやる。こうした人がスポーツをはじめ、様々な分野に広がっていくことも、日本再生、地方創生のカギになると思います。
該当講座
川淵三郎氏が語る、リーダーの本質とは?そして、東京2020へ!
川淵三郎(日本サッカー協会キャプテン)×米倉誠一郎(日本元気塾塾長)
「解決できるのは僕しかいない」
「国内に分裂している2つのバスケットボールリーグを統合してほしい」6か月以内に国内リーグを統合しなければ、リオ五輪予選への出場が認められないという逆境下で、2016年秋にプロバスケットボール新リーグ、B.LEAGUE開幕へと導いた川淵氏が発揮したリーダーシップとは?波乱の統合劇で川淵氏を突き動かした原動力について語って頂くとともに、2020年東京オリンピック・パラリンピックはどうあるべきか、そして次世代の人材を育成する指導者として、いま考えることについて迫ります。
日本元気塾セミナーリーダーの本質とは? そして、東京2020へ! インデックス
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第1章 日本に「地域に根ざしたスポーツクラブ」を!
2018年03月13日 (火)
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第2章 解決できるのは僕しかいない!
2018年03月13日 (火)
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第3章 不可能を可能にした“独裁力”
2018年03月13日 (火)
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第4章 川淵流「勝利の方程式」とは?
2018年03月13日 (火)
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第5章 リーダーに求められる決断と覚悟
2018年03月13日 (火)
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第6章 リーダーが“協力者”を得るための方法は?
2018年03月13日 (火)
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