記事・レポート

女性起業家、明日への挑戦!

「想い」から生まれたイノベーション

更新日 : 2016年03月16日 (水)

第8章 作る人も買う人もフラットな関係であるべき


 
価値の背景にあるストーリー

本荘修二: 今回、登壇されたお三方に共通するのは「圧倒的な品質」だと思います。一般的なものづくりであれば、ソロバンを弾いて価格が決まりますが、和えるの場合、そうしたことを一切気にせず、「とにかく最高のものを作る!」といった気概で取り組まれています。

矢島里佳: ビジネスである以上、ソロバンを弾くことは大切ですが、あくまでもそれは最後に行うことだと考えています。私は大学4年の時に起業しているため、社会人経験もなければ、ものを売ったことも商品開発の経験もない。本当に無い無い尽くしでしたが、1つだけあったのは、魅力的な職人さんとその技術を、次の世代を担う子ども達につなげたいという想いです。

もう1つ、大切にしているのが「伝える」こと。先ほど、和えるはジャーナリスト集団だと言いましたが、こだわりの詰まった最高品質の商品を紹介するだけでなく、その背景にあるものまできちんと伝えたいと考えています。

例えば、ある時、職人さんから「お客様は神様という時代があった」という話を聞きました。「お客さんはこの価格で欲しいと言っている。だから、もっと安く作ってください」と言われて市場価格が決まり、それに応じて職人さんの報酬も決まっていました。そのため、ものづくりの世界では長い間、マジシャンのような技術を持つ方々が、それに見合わない報酬で働いていました。私は何かおかしいなと思いました。

経済は、物々交換から始まっています。かつては、同等の価値を持つものどうしが非常に分かりやすい形で交換されていましたが、いつ頃からかそれが忘れられてしまった。そして、いまを生きる私達は、「お金を払う人が偉い」という不思議なヒエラルキーの下で生きているように感じていました。

和えるでは、「いくらなら、これを作り続けられますか?」「いくらなら、後継者を育てることができますか?」などと職人さんに質問し、一緒にその答えを考えることから始めます。さらに、職人さんだけでなく、デザイナー、印刷会社など商品づくりに関わる人々、そして和えるが仕事を継続していくために必要なお金を積み上げた結果、価格が決まります。とはいえ、決して法外な金額を上乗せするわけではなく、至って正直ベースで作っています。

和えるでは、かつての世界がそうだったように、作る人・買う人がフラットな関係であるべきだと考えています。買う側の人々は、自分では素晴らしい商品を作れないからこそ、職人さんから買わせていただく。作る側の人々も、喜んで使ってもらうために、最高品質の商品を一生懸命作る。互いの価値を認め、敬うという先人の知恵を伝えていくことも、和えるの使命だと考えています。

本荘修二: 色々な想いが凝縮して、価格が決まる。また、最高の品質にこだわるからこそ、ものの背景にあるストーリーまでしっかり伝えることを大切にしている。その軸足がぶれないことが、和えるの強みになっているわけですね。

該当講座


現代ビジネスコラボレーション「女性起業家、明日への挑戦!」(19:00~20:30)
現代ビジネスコラボレーション「女性起業家、明日への挑戦!」(19:00~20:30)

これからが楽しみな女性起業家に、経営コンサルタント・多摩大学客員教授の本荘修二氏がインタビューを行う連載「明日をつくる女性起業家」(講談社現代ビジネス)。この連載では、国内外問わず、20名以上の新進気鋭の女性起業家たちに、幼少時代から現在にいたるまで、これからの挑戦についてのお話を伺っています。

インタビュアーの本荘氏は、彼女たちには、生命力と行動力があって、やりたい!と思ったことに対して気づいたら走り出していたという共通点がある一方、独自の目線だからこその事業内容や、その進め方にも相違点があったと連載を振り返ります。

自ら問題意識を持って、行動し、世の中にインパクトを与えている女性起業家たち。

今回は、連載に登場したiemo株式会社代表取締役CEO・村田マリ氏、株式会社つ・い・つ・い代表取締役の遠藤貴子氏、株式会社和える代表取締役矢島里佳氏の3名をお招きし、本荘氏が彼女たちにそれぞれの起業家としての生き方に迫ります。彼女たちの挑戦の先には、どのような未来が待っているのでしょうか---。