記事・レポート

女性起業家、明日への挑戦!

「想い」から生まれたイノベーション

更新日 : 2016年03月09日 (水)

第5章 住まいのキュレーションプラットフォーム「iemo」

村田マリ(iemo株式会社代表取締役CEO)

 
創業から半年で買収オファー

本荘修二: 村田マリさんは、以前からITのスタートアップ界隈では有名な方です。これまで2社を起業され、2014年10月には2社目の「iemo」をDeNAに売却し、同社の執行役員にも就任されています。

村田マリ: iemoは、家づくりからインテリア、暮らしの知恵など、住まいに関する様々な情報を提供するモバイル向けのキュレーションプラットフォームです。現在の利用者は、月間500万人ほどとなっています。iemoには建築家や工務店、ハウスメーカー、部品メーカーなど住まいを作る側の方々なら誰でも無料で情報を掲載することができます。そのため、住まいの情報を求める人と、住まいを作る人をマッチングする場としても広く活用されています。

これまで、衣食住の「住」にまつわる情報は、PCをメインとして提供されてきました。一方で、これからマンションや一軒家を購入しようと考える方々は30歳前後が中心であり、情報通信の手段はスマートフォンという世代です。不動産業界はIT化が遅れていると言われますが、そうした中で私は、スマホに最適化された不動産情報が圧倒的に不足していると気がつき、ならば自分で作ってしまおうと考え、iemoを起業しました。

2013年12月に設立し、翌年6月頃には早くも買収のオファーをいただき、10月にはDeNAに売却しました。創業から買収までの期間は、おそらくIT業界では最速だと思います。オファーがかかった理由としては、リリース直後から多くのユーザーを集めたことがあると思います。一般的にウェブサービスは、世の中に波及するまで時間を要することの多い分野ですが、事業が立ち上がるスピードが評価され、数社から買収のオファーをいただくことができました。

DeNAを選んだ理由は「このユニークな会社の中で、数年かけてしっかりとiemoの事業をやらせていただきたい」と考えたこと。もう1つは、私と同じ女性起業家であり、優れた経営者でもある南場智子さんのそばで働きながら、様々なことを学びたいと思ったからです。入社から2、3カ月ほど経った今は、当初思い描いていた以上にエキサイティングな日々を送っています。


学生起業からITサービスの世界へ

村田マリ: 私は大学生の頃にインターネットと出合い、その面白さに魅せられてしまいました。その後は自分でプログラムを書くようになり、音楽系のコミュニティサイトを立ち上げたり、サイト内のコンテンツをOEMという形で企業に販売したりと、学生起業に近いことを行っていました。やがて「いつかは自分でビジネスを作りたい」と考えるようになり、インターネットをより深く学ぶため、1999年にインターンとしてサイバーエージェントに入り、翌年正社員になりました。入社当時、社長の藤田晋さんは25歳、社員は20名ほどの小さなベンチャーでしたが、その後急激に成長していく中で6つの新規事業立ち上げに携わることができました。

そして2005年、26歳の時に満を持してコントロールプラスという会社を立ち上げました。当初は受託制作やCGMなどの事業を手掛けていましたが、後に携帯ゲームへと事業転換しました。この携帯ゲーム事業が軌道に乗り始めた頃、結婚・出産を経験したこともあり、事業体を見直そうかと考えていたタイミングで数社から買収のオファーをいただき、複数の事業を数社に分散して売却しました。

ここでM&Aや事業買収といったものを経験した後、2013年12月にiemoを立ち上げました。そして、このサービスを絶対に成功させたいと考えていたため、力いっぱいサポートしていただけると感じたDeNAに入ったという次第です。

事業を立ち上げ、会社を切り盛りすることを10年ほど続け、現在はそれをさらに大きなものとするための挑戦と共に、一部上場、社員数千人という大企業の中で経営幹部として働く経験を得るべく、日々頑張っています。

■iemo株式会社 http://iemo.jp/

該当講座


現代ビジネスコラボレーション「女性起業家、明日への挑戦!」(19:00~20:30)
現代ビジネスコラボレーション「女性起業家、明日への挑戦!」(19:00~20:30)

これからが楽しみな女性起業家に、経営コンサルタント・多摩大学客員教授の本荘修二氏がインタビューを行う連載「明日をつくる女性起業家」(講談社現代ビジネス)。この連載では、国内外問わず、20名以上の新進気鋭の女性起業家たちに、幼少時代から現在にいたるまで、これからの挑戦についてのお話を伺っています。

インタビュアーの本荘氏は、彼女たちには、生命力と行動力があって、やりたい!と思ったことに対して気づいたら走り出していたという共通点がある一方、独自の目線だからこその事業内容や、その進め方にも相違点があったと連載を振り返ります。

自ら問題意識を持って、行動し、世の中にインパクトを与えている女性起業家たち。

今回は、連載に登場したiemo株式会社代表取締役CEO・村田マリ氏、株式会社つ・い・つ・い代表取締役の遠藤貴子氏、株式会社和える代表取締役矢島里佳氏の3名をお招きし、本荘氏が彼女たちにそれぞれの起業家としての生き方に迫ります。彼女たちの挑戦の先には、どのような未来が待っているのでしょうか---。