記事・レポート

女性起業家、明日への挑戦!

「想い」から生まれたイノベーション

更新日 : 2016年03月30日 (水)

第11章 共感という波紋は自分で作り出すもの


 
失敗を恐れず、失敗から学ぶ

会場からの質問(1): 今まで体験した最大のピンチと、それをどのように乗り越えたのかを教えていただけますか?

村田マリ: 大変だったと感じる経験はほとんどないのですが、1つ挙げるとすれば、最初に起業した会社で事業転換をした時でしょうか。当初は受託制作とクチコミサイトの事業を行っていましたが、2008年に中国へ出張した時、携帯ゲームがブームになっている光景を目にし、同じ頃、日本ではDeNAやGREEが次々と携帯ゲームのプラットフォームを発表し始めていました。そうした状況を受け、これからは携帯ゲームの波が来ると考え、「我が社は携帯ゲームの会社になります」と宣言してしまったのです。その後は従来の仕事を徐々にフェードアウトさせつつ、スタッフを1人ずつ携帯ゲーム事業に移していきました。

とはいえ、その間もある程度の売上を確保しなければならない。さらに、完全に移行した段階で携帯ゲーム事業が軌道に乗っていなければ、会社が倒産してしまうという状況でした。当面の資金を確保するべく、個人保証で銀行から数千万円を借り入れました。売上はソフトランディングしつつも、携帯ゲーム事業が立ち上がれば、再び上昇していく。こうしたイメージを描いていました。

しかし、開発が遅れに遅れて、なかなかゲームが出ない。宣言後の1カ月目は800万円の赤字が出ました。翌月も800万円、さすがに何とかなると考えていた翌月も800万円の赤字。すでに受託制作などの仕事はなくなっていました。毎日少しずつお店のシャッターが閉まっていくような状態で、資金も底が見え始め、「来月はもうお給料が払えないな」と思いました。

その矢先、ようやくゲームをリリースすることができ、さらにそれがヒットし、途端に売上が上昇し始めたのです。本当にギリギリで事業が立ち上がりましたが、この3カ月間はさすがに生きた心地がしませんでした。しかし、結果的に再び上昇できたため、今となっては笑い話として話せます。

会場からの質問(2): 事業を立ち上げる際、他人の共感を得たり、他人を巻き込んだりするために大切なことは何でしょう?

矢島里佳: 共感とは、水面の波紋のように自然と広がっていくものです。その波紋は「共感してください」とお願いして広がるものではなく、自分自身で作り出さなければなりません。まずは自分が一生懸命頑張っている姿を見せる。自らの行動を通じて想いを発信し続けていると、興味を持ってくださる方はもちろん、「1人ではこれ以上前に進めない」と思った時に協力してくださる方も現れます。

もう1つ、皆さんが最初に感じた想いを、伝わりやすい形に言語化することも大切です。私の場合は「日本の素晴らしい伝統を次世代の子ども達につなぐ」という軸を決め、それを伝えること以外は一切やらないと決めました。軌道に乗るまでは大変なことも多く、それだけでは食べていけないかもしれませんが、それでも原点・軸を持ち続けることが、夢を実現するための支えになります。

会場からの質問(3): これから起業しようとする女性起業家へのアドバイスがあれば。

遠藤貴子: やはり、トライの数を増やすことが重要です。私自身もそうでしたが、トライの数が増えれば増えるほど、失敗することも増えていきます。しかし、前に進むために最も大切なのは、失敗を恐れないことと共に、失敗の中から学ぶことです。たくさんの失敗と学びがあったおかげで、今があると感じています。

矢島里佳: 起業において、女性・男性といった話はもはや関係ないと思います。これからの時代は、本当に人の役に立つことであれば、性別にかかわらず、それは必ず受け入れられるはず。すでにそうした社会が訪れているとも感じています。

その上でアドバイスをするのなら、自分が楽しいと思うことを素直にやり続けられるかどうか。そして、事業に関わる方々、事業の先にいる想いを受け取ってくれる方々にとって、「三方よし」になる形を探し続けることだと思います。

該当講座


現代ビジネスコラボレーション「女性起業家、明日への挑戦!」(19:00~20:30)
現代ビジネスコラボレーション「女性起業家、明日への挑戦!」(19:00~20:30)

これからが楽しみな女性起業家に、経営コンサルタント・多摩大学客員教授の本荘修二氏がインタビューを行う連載「明日をつくる女性起業家」(講談社現代ビジネス)。この連載では、国内外問わず、20名以上の新進気鋭の女性起業家たちに、幼少時代から現在にいたるまで、これからの挑戦についてのお話を伺っています。

インタビュアーの本荘氏は、彼女たちには、生命力と行動力があって、やりたい!と思ったことに対して気づいたら走り出していたという共通点がある一方、独自の目線だからこその事業内容や、その進め方にも相違点があったと連載を振り返ります。

自ら問題意識を持って、行動し、世の中にインパクトを与えている女性起業家たち。

今回は、連載に登場したiemo株式会社代表取締役CEO・村田マリ氏、株式会社つ・い・つ・い代表取締役の遠藤貴子氏、株式会社和える代表取締役矢島里佳氏の3名をお招きし、本荘氏が彼女たちにそれぞれの起業家としての生き方に迫ります。彼女たちの挑戦の先には、どのような未来が待っているのでしょうか---。