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日本のソフトパワー
発信力・交渉力を高める“文化の力”

近藤誠一・前文化庁長官が語る

BIZセミナー経営戦略キャリア・人
更新日 : 2015年03月11日 (水)

第7章 日本のソフトパワー「受信」

近藤誠一氏

 
文化を受け入れる下地がある

近藤誠一: 最後は「受信」です。日本が発信したものを、相手の国民はどのように受信するのか。文化や価値観などが異なる相手となれば、なかなか予測が難しいと思います。一方で、海外において日本文化が高い評価を受けていることは、まぎれもない事実です。そこから考えていくと、1つの糸口が見つかります。日本の文化を受け入れる“下地”がある、ということです。

欧州の絵画を見ると、素晴らしい自然を描いた作品がたくさんあります。また、サン=テグジュペリの『星の王子さま』では、賢いキツネが「大切なものは、目には見えない」と、王子さまに語りかけています。「自然を大切にする」「目に見えないものにも価値がある」という感覚は、欧州では近代化のなかで科学的根拠のないものとして押しのけられてきました。しかし、心の奥底ではいまもなお、もち続けている。だからこそ、日本の文化が響くのではないでしょうか。この下地となる部分を深く掘り下げていくことが、受信を考える際の大きなポイントになると思います。



 
日本人の強みを生かす

近藤誠一: 「この島はどちらの領土か」といった国威にかかわる交渉では、ソフトパワーの効果はなかなか発揮できないかもしれません。しかし、そうしたもの以外の交渉では、人間同士の信頼関係とソフトパワーが十二分に役立つと考えています。実際に、富士山の世界文化遺産登録における「三保松原の逆転登録」でも、その力が大いに役立ちました。

先日、『ハーバード流交渉術』(三笠書房)という本を読みました。タイトルを見たときは、巧みに相手を論破する方法を解説する本だと思いましたが、まったく違いました。そこには「交渉とは互いに協力しながら、相互の利益につながる最高の答えを導き出すことだ」と書かれていました。これを読み、私は膝を打ちました。なぜなら、相手を信頼し、協調しながらWin-Winの答えを導き出すことこそ、私たち日本人が最も得意としていることだと思ったからです。

その意味でも、2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、絶好の機会になると思います。世界中から来られる方々に、日本人が大切にしてきたものに直接触れていただき、喜んでもらう。そして、彼らが感じた魅力を、彼らの視点で発信してもらう。そこから、私たちはより効果的な発信方法を学ぶことができます。まさにWin-Winです。

発信力も交渉力も、人と人とのコミュニケーションが起点となります。より良い人間関係の構築という意味でも、感性に直接訴えかけるソフトパワーの果たす役割は大きいと言えるでしょう。


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~日本人の発信力・交渉力を考える~

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近藤誠一 (元文化庁長官)

今後の日本の経済発展、国際競争力向上のためにも重要な役割を果たすと考えられているソフトパワー。その役割と日本の発信力、交渉力について近藤氏に伺います。


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