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世界が注目! 舘鼻則孝が描く日本文化の未来

最新の日本を世界に発信する

更新日 : 2014年06月23日 (月)

第6章 進むべき道は、自分の過去が知っている

舘鼻則孝(アーティスト)

 
卒業制作が大きな転機

舘鼻則孝: 僕にとっての大きな転機は、大学の卒業制作でした。卒業制作を境に、伝統的なものづくりから、過去と現在の日本の文化を融合した新しいものづくりへとシフトしたからです。

いま振り返れば、転機を迎える予兆がありました。卒業制作に取り組んでいた頃、僕は自分の進むべき方向を考えるなかで、「単純にカッコいいもの、美しいものを生み出すことが、アーティストの仕事ではない」と感じていました。ならば、何を求め、何のために作品を作り、どのようなメッセージを発信するべきなのか。

僕は「自分はどのような人物なのか?」と自問自答するなかで、自らを形づくってきたストーリーを振り返ってみました。過去を深く深く掘り下げていくと、未来の方向、つまり自分の進むべき道が明確になるのではないか、と思ったからです。そして、「自分のアイデンティティは日本人である」という最大のヒントにたどり着き、進むべき道や発信すべきメッセージが鮮明になったのです。

自分の進むべき道は、現在の自分が決めているように思われますが、実はそうではありません。答えはすでに、過去の自分の人生のなかで決まっているのです。問題は、心の深い場所に隠れているその答えを見つけられるかどうか、です。

もう1つ、自分のストーリーを振り返る行為には重要な意味があります。樹木は根っこを深く広く伸ばすことで、高く太く育っていくことができます。同じように、自分を深く掘り下げていくことは、自分のなかにある軸や信念を強く太くさせることにつながるのではないか、と思うのです。



最新の日本文化を発信する

舘鼻則孝: アーティストの役割は、作品を通じて、社会に疑問や提案を投げかけることだと考えています。「こうあるべきだ」と明確な答えを示すのではなく、「こうした可能性もあるのでは?」とメッセージを送るような。

1985年に、オノ・ヨーコさんがセントラル・パークに設けた「ストロベリー・フィールズ」という場所があります。ジョン・レノンの誕生日や命日には、たくさんの人がこの場所に集まり、花束でピースマークを描きます。人々は皆、自分の意思で集まり、平和のために花を添えています。もちろん、花を添えずに通り過ぎる人もいるでしょう。この場所は、オノ・ヨーコさんから送られた1つのメッセージです。そして人々は、メッセージに対する答えを自分なりに考え、行動しているわけです。

僕はいま、絵を描いたり、彫刻を作ったりもしていますが、基本は靴づくりです。しかも、それらはあくまでも、僕のメッセージを伝えるための手段でしかありません。僕の目的は、日本の文化、日本のファッションの最新の姿を世界に発信し、何かを感じてもらうこと。自分を深く掘り下げることで見えてきた答えです。靴の制作だけではなく、服や彫刻、絵画、あるいは作品のプロデュース、講演を通した啓発活動など、さまざまなことを通してメッセージを伝えることができればと考えています。

皆さんも同じです。進むべき道、本当に伝えたいメッセージは、皆さんの心の深い場所にあると思います。


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