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世界が注目! 舘鼻則孝が描く日本文化の未来

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更新日 : 2014年06月18日 (水)

第5章 「ヒールのない靴」が海外で高い評価を受けた理由

舘鼻則孝(アーティスト)

 
日米メディアの反応を比較してみる

舘鼻則孝: 現在、海外は僕自身や作品をどのように見ているのでしょうか? 米国のニュースサイトに掲載された記事には、「舘鼻は、日本人としてのアイデンティティ、日本の文化を強く押し出した作品を生み出している」と書いてあります。しかし、日本で育った人が、日本の文化にインスパイアされて作品を作るのは当たり前ですよね?

日本人は海外に目を向け、色々なものを吸収することが上手です。ある意味では、日本人の良さだと思いますし、実際に日本の文化は、海外のものを編集しながら独自の発展を遂げてきました。けれども、海外にばかり目を向け、無理に合わせようとしすぎてしまうと、生まれるものはアイデンティティが感じられないものになりがちです。なぜ、僕の作品が前述のように紹介されたのかといえば、日本の文化を前面に打ち出し、かつ新しいものを作る人が、他にいなかったからだと思います。

一方、日本のニュースサイトには「股関節炎の手術でツアーキャンセルのレディー・ガガ、原因はあのヒール?!」と書いてありました。この記事を見たとき、僕も有名になったなと思いました(笑)。つまり、これが日本のアートの捉え方なのです。日本が文化先進国になれない理由は、こうしたところにあるのではないでしょうか? 僭越ながら僕はそう思うのです。アートに関する外国人の見方と日本人の見方がこれほどに異なるのは、なぜなのでしょう? 皆さんもこの問いについて、じっくりと考えてみてください。



「ヒールのない靴」がメトロポリタン美術館に収蔵

舘鼻則孝: このほど、僕の靴がニューヨークのメトロポリタン美術館に永久収蔵されることになりました。しかし、作品自体はまだ完成していません。僕が死んだ後も作品が残るのかと思うと、非常に手が重くなり、なかなか作業が進まないのです(笑)。

一般的に、美術館はカッコいいものや美しいものが飾られている場所だと認識されていますが、本来は人類の歴史をアーカイブする場所です。「舘鼻の靴はアーカイブするだけの価値がある」と判断してくれたキュレーターは、どのように考えたのかと思いを巡らせてみました。

はじめに日本のファッションの現状を考えました。第2次世界大戦が終わり、1960年代頃までは着物を着る方もたくさんいましたが、現在は洋服が主流となっています。そうした状況にありながら、着物を着ている人も洋服を着ている人も、同じく日本人です。さらに原宿や秋葉原でコスプレを楽しむ人、ゴシックっぽい格好をしている人も皆、同じ日本人です。日本ではサブカルチャーと呼ばれていますが、海外では日本のファッションのメインストリームと報じられることも増えています。

一方で、僕の作るファッションは、伝統的なファッションの延長線上にある現代の日本のファッションを表現しています。つまり、伝統を古いままに表現せず、歴史のつながりを大切にしながら、現代の新しいスタイルへと進化させ、表現している。「日本のファッションの新しい1ページを刻んだ作品」として、海外の人々は認めてくれたのだと思います。

美術館のキュレーターは、常に「未来に残すべき価値あるものとは何か?」と考えながらさまざまな作品を見ています。彼らは僕の作品のなかに、脈々と受け継がれてきた日本のファッションの系譜を感じ、その系譜の先端にあるものとして作品を捉え、評価してくれたのだと思います。

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