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どうすれば日本人は、一流のインベスターになれるのか?

三田紀房、松本大が語る「投資の意義」

更新日 : 2014年04月09日 (水)

第1章 投資の意義を日本人に伝えたい

超進学校を舞台に、投資知識ゼロの中学1年生が100億円の運用を任されるという設定が大きな話題を呼ぶ、『インベスターZ』。教育界に一石を投じた『ドラゴン桜』の作者・三田紀房氏による最新作です。そして、本物のインベスターことマネックス証券株式会社代表取締役社長CEOの松本大氏。漫画家と投資家という畑違いの世界で、それぞれトップを走るふたりの考える「投資の意義」とは何でしょうか? 一流の仕事術も明かされる異色対談をお楽しみください。

ゲスト:三田紀房(漫画家 『インベスターZ』作者)× 松本大(マネックス証券株式会社 代表取締役社長CEO)
モデレーター:佐渡島庸平(株式会社コルク代表)

写真左:佐渡島庸平(株式会社コルク代表)写真中央:三田紀房(漫画家 『インベスターZ』作者)写真右:松本大(マネックス証券株式会社 代表取締役社長CEO)
写真左:佐渡島庸平(株式会社コルク代表)写真中央:三田紀房(漫画家 『インベスターZ』作者)写真右:松本大(マネックス証券株式会社 代表取締役社長CEO)

 
生徒が莫大な資産を運用する?!

佐渡島庸平: 私は『モーニング』で連載中の漫画『インベスターZ』の編集を担当しています。連載を始める以前、松本大さんにお話をうかがいました。とはいえ、作者である三田さんも私も、投資についてはまだ素人同然です。今回は“一流のインベスター”松本さんに、投資の裏側までお聞きしたいと思います。まずは『インベスターZ』についてご説明ください。

三田紀房: 舞台は、札幌にある中高一貫の超進学校・道塾学園。この学園は、創設者が残した莫大な資産により、130年前の開校以来一貫して学費は無料です。しかし、これは表向きの理由です。実は、この学園には各学年トップの生徒、計6名で構成される「投資部」があり、生徒自身が行う投資により、学園の全経費を賄うほどの利益を生み出してきたのです。現在の総資産は3,000億円。1年間で8%の利回り、つまり240億円の利益が目標となっています。

主人公は、全教科満点でトップ入学を果たした中学1年生の財前孝史。入学早々に連れていかれた秘密の部屋。そこで突然、「投資部に入れ」と告げられ、100億円の運用を任される……。これがおおよそのストーリーです。

松本大: 漫画を拝読した当初は、非常にユニークな設定だと思いました。しかし、突飛すぎる設定でもない。ハーバード大学やイェール大学といった米国の有名私立大学には、OBからの寄付金などで構成されるエンダウメント(大学基金)があり、なかには数兆円規模の基金を運用し、数百億円の利益を上げている大学もあります。

こうした利益は、独自の奨学金制度をはじめ、研究施設や運動施設などの拡充に活用され、教育環境の向上に役立てられています。その充実ぶりは、日本の大学とは比較にならないほどです。もちろん、米国の大学では大人、投資の専門部隊が運用を行います。『インベスターZ』では生徒自身が運用する。その発想が実に面白いと感じました。



ネット証券のパイオニア

佐渡島庸平: マネックス証券は、日本におけるネット証券のパイオニア的存在です。松本さんはどのような経緯で、会社を立ち上げられたのですか?

松本大: 私はマーケットの世界にどっぷりと浸かり、そのなかで鍛えられ、キャリアをつくってきました。新卒で入ったソロモン・ブラザーズは当時キング・オブ・ウォールストリートと呼ばれていました。その後ゴールドマン・サックスに移籍するなど、外資系投資銀行に12年間務め、1999年にマネックス証券を設立しました。

18世紀イギリスの経済学者、アダム・スミスは『国富論』のなかで「見えざる手」という言葉を使い、マーケットを表現しています。マーケットを通じて、より良い形で富の再分配が行われ、企業は成長するための資金を調達する。マーケットは本来、お金の流れを望ましい状態に調節する優れた機能を持っています。

しかし、日本人はマーケットに対してあまり良いイメージを持っていません。ひとくちにマーケットと言っても、株式や為替、債券など様々な種類がありますが、その違いさえ広く知られていません。理由は、投資の意義や役割について学ぶ機会が非常に少ないからです。自分を育ててくれたマーケットへの恩返しの気持ちから、多くの日本人が簡単にマーケットの世界を理解し、気軽に参加できるような仕組みをつくろうと考え、株や債券、投資信託、為替などを売買できるオンライン証券会社を立ち上げたのです。

関連書籍


インベスターZ(1)

三田紀房
講談社