記事・レポート
意識のない死の世界へ。すでにある無意識を顕在化せよ
アートの本質に、横尾忠則と生駒芳子が迫る!
更新日 : 2013年04月11日
(木)
第4章 こんな時代だからこそ、芸術家は幸せだ
以前と同じモチーフを、いまの僕ならどう描く?
生駒芳子: 横尾先生は長い間創作活動を続けていらっしゃいます。絵に対する考え方は、徐々に変わるものなのでしょうか?
横尾忠則: もちろん。今日と明日とで同じ絵を描くことはできません。明日どういう絵を描くかなんて、その時にならなきゃ分からないですけど、常に未完なので引き続いて同じ作品を反復します。そういうことから、いまやっている展覧会タイトルは<反反復復反復>です。
生駒芳子: すごいタイトルですよね。どういう内容の展示会なのですか?
横尾忠則: 絵を描いていても、その絵が「全ての面で完成した」ということはありません。つまり、未完で終わるわけです。考え方としても、その方法で描いた作品が全てだとは思いません。絵を描き終える一方で、その絵に自分で疑いをかけているのです。「同じモチーフでも、もっと違う絵ができるんじゃないか」と。
そのようなわけで、一つのモチーフの作品を何回も何回も反復して描くのです。<反反復復反復>では、そういった絵を展示します。例えば40年前に描いた絵も、「いまの社会で、いまの僕が、どう描くことができるだろうか」ともう一度筆を執るのです。今度こそ完成させてやろうと思って描きますが、そこまではやはり行かないのです。こうして、また違った形の未完作品が続いていくことになるのです。
社会があって、初めて芸術が生まれる
生駒芳子: 時代背景によっても作品は変わるものなのでしょうか? また、先生はいまの時代をどう見ていますか?
横尾忠則: いまの時代はヤバいと思います。幸か不幸か、そういう時代こそ芸術が爛熟(らんじゅく)するものです。美術を通して、いまの世界を深く見つめてみよう。あるいは、打開していこう。そういう不思議なエネルギーが、創造に加担していくわけですね。平和な時代に作品をつくるよりも、芸術家にとってはこういう時代は幸福なのかもしれません。だから、芸術は個の世界だけでは完結しないのです。社会があってこそ、初めて芸術が生まれるわけです。
満腹になるくらい、反復しよう
生駒芳子: スクリーンには過去の作品が映っています。
横尾忠則: これは1966年の作品だから、今から46年前のもの。僕がまだ20代の頃の作品ですね。これと同じモチーフで、何回も描いていますよ。反復しすぎて、もう満腹。いわば「反反復復満腹」だね(笑)。面白いアイデアは、こういう瞬間に生まれるんですね。
生駒芳子: 70年代は永遠の憧れじゃないですか。ファッションの世界でもそうですが、時代性はループ状につながっている気がします。60年代から創作活動をされている先生は、どのように感じていますか?
横尾忠則: 時代は繰り返す。われわれの命だって転生しながら繰り返すのですから、当然のことだと思います。数年後・数十年後には、いまの時代が再現されるかもしれません。あるいは、ノスタルジックに思われる対象となるのかもしれません。だけど、ノスタルジックになるのではなく、過去を超克していかなきゃ。
けれども、いまは新しいものが生まれにくい時代でもありますよね。美術に関しては、もう出尽くしてしまった。だから、やることがなくて反復しているわけです(笑)。
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第3章 僕はあえて、時代から取り残されている
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第4章 こんな時代だからこそ、芸術家は幸せだ
2013年04月11日 (木)
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第5章 死の世界から見る、生の世界
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第6章 僕の遺言は、死んだ後の展覧会プラン
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