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“生きるように働く”を支援する

毎日が楽しくなる、新しい生き方・働き方:中村健太×古田秘馬

キャリア・人文化
更新日 : 2012年12月20日 (木)

第7章 太った人のコミュニティをつくったら、ものすごい価値が出た

写真左:古田秘馬(プロジェクトデザイナー/株式会社umari代表取締役)写真右:中村健太(株式会社シゴトヒト代表取締役)

古田秘馬: 高度経済成長のときは「高付加価値」の時代でした。例えば「地下2,000mから汲み上げた水を瞬間パックしました。だからこのペットボトルは1本1万円です」みたいな値段のつけ方でした。経済が右肩上がりのときはこれでいいんですけれど、これからは「多付加価値」の時代です。

中村健太: スペックが組み合わさるというよりも、しっかり結合する感じですよね。

古田秘馬: そうそう。「これってほかの役目もするよね」って、いくつもの価値を持っていることです。例えば、有機栽培でどんなにおいしいニンジンでも、1本1万円じゃ売れません。でも、それが朝鮮ニンジンだったら薬として使えるので、1本1万円の価値があります。どんな価値を、いっぱいつくっていくかです。

それともう1つ、「コミュニティでの価値」というのもあると思います。ある特定のところだけだけれど、ものすごく反応があると、それが職業になるみたいな。

中村健太: それは「小商い」みたいな言い方もされますが、今、増えているような気がします。

古田秘馬: 「日本仕事百貨」は、そういう会社が多いですよね。

中村健太: 日本中はとりこにできないけれど、ある地域ならとりこにできる、ある人たちならとりこにできる、みたいな仕事が多いですね。

古田秘馬: 僕は「D30(ディーサンジュウ)」という、太った人のためのライフスタイルマガジンをwebでやっています。メタボ健診が2008年から始まって、僕らの迫害が始まりました。時代的に「全員やせろ」みたいな雰囲気になっているんですけれど、「なんでやせなきゃいけねぇんだ?」と言いたいわけです。

それで「太ったやつらで何か仕掛けようぜ」ということで考えたのが「D30」です。「僕らは人生を楽しんでいる。その結果が、今の世界ではちょっと太って見えるだけだ」「そもそも“デブ”という言葉がよくない。名前を変えると印象が変わるから、そうだ“D”って呼ぼう!」って。それが「D30」のD。30は体脂肪30%以上ってことです。サイトオープン時に、20万アクセスもあったんですよ。

別に今まで太った人がいなかったわけじゃないですよね。でも、それを1つのコミュニティとしてくくった瞬間に、ものすごい価値が出たわけです。そういう職業というのもあると思います。

中村健太: 地域の仕事もそうですよね。普通の求人情報だと、あふれる情報の中に埋もれてしまうけれど、それを取り出して見せることで、ちゃんとつながるんです。つながることができるようになったからこそ、単純な地縁だけじゃないコミュニティが生まれています。そういう人たちにちゃんと提供できれば、仕事にもなるし、相手にもとても喜ばれる。そういうことが、今、本当に起きています。


該当講座

シリーズ「街・人を変えるソーシャルデザイン」
“生きるように働く”を支援する
中村健太 (株式会社シゴトヒト代表取締役)
古田秘馬 (プロジェクトデザイナー/株式会社umari代表)

中村健太(株式会社シゴトヒト代表取締役)× 古田秘馬(株式会社umari代表)
日々の生活、社会の問題も、ちょっとした工夫や思いつきで「楽しい毎日」になります。視点を変えるきっかけさえあれば、誰もが工夫し、参加できるのではないでしょうか。
シリーズ「街・人を変えるソーシャルデザイン」では「丸の内朝大学」「六本木農園」など、多くの街・人を巻き込む企画を実行するプロジェクトデザイナー古田秘馬氏をファシリテーターに迎えます。第1回のゲストは、WEBサイト「日本仕事百貨」を運営する中村健太氏。働いている人と、働きたい人の想いをつなぐ、新しい仕事の探し方をきっかけに、社会のありかた、生き方を考えていきます。


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