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「感動する力」でアートはここまで楽しくなる:姜尚中×竹中平蔵

もっと深くアートを感じるために、ちょっと深くアートを考える

政治・経済・国際文化教養
更新日 : 2012年10月11日 (木)

第6章 なぜアートは国や時代を超えて人の胸を打つのか

姜尚中(東京大学大学院情報学環 現代韓国研究センター長)

姜尚中: この講座は「イ・ブル展」の開催にちなんだものですから、イ・ブル(1964年~韓国生まれ)について少しお話しします。イ・ブルは、かなり普遍性を持ったアーティストだと私は思います。

大江健三郎さんと同世代で、在日韓国人で初めて芥川賞を受賞した李恢成(イ・フェソン)という作家がいます。彼はよく「我々は一人のカフカもつくり出すことができなかった」と口にします。カフカはチェコスロバキア生まれですが、チェコ語ではなく、彼にとって外国語であるドイツ語で作品を書き、世界的な文学をつくり出した作家です。民族や社会性といったもの以上に、最もパーソナルなものにこだわることを通じて、世界にたくさんの読者を広げたのです。

——万人に開かれる感動というものは、アーティストの個人的なものを掘り下げることを通じてつくられるのではないか。今まで我々は、民族やナショナリズムといったものにこだわってきた。それによって結局、世界文学のレベルまで到達できなかった——李恢成はそう言いたかったのかもしれません。

イ・ブルの作品には、カフカ的なテーマがあります。彼女は韓国の現代の不条理を極端な形で表しています。彼女の体験は、ただ単に特定の民族や国に生きた時代の体験に留まらず、いわく言い難いパーソナルな体験であるがゆえに、その作品は現代韓国という特定の領域を超えて、人の胸を打つものになっているのだと思います。

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該当講座

六本木アートカレッジ・セミナー
感動する力~アートを感じる・アートを考える~
姜尚中 (東京大学大学院情報学環 現代韓国研究センター長)
竹中平蔵 (アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学名誉教授)

姜尚中氏×竹中平蔵氏
 芸術は我々に勇気や感動、新たな発想を与えてくれ、豊かで潤いのある時間を我々は過ごしています。しかし、そこにはアートを感じる力、どのようにその作品、モノに接するかという我々の姿勢が重要になってきます。今回のセミナーでは、姜尚中氏に経験をもとに、アートを感じる力についてお話いただきます。また、後半の竹中平蔵氏との対談では、アートが社会に与える影響そして社会で担う役割・可能性についても発展させます。


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