記事・レポート
東日本大震災で分かったソーシャルメディアのパワー!
既存メディアはどう変わる?~林信行×DJ TARO~
更新日 : 2011年10月06日
(木)
第6章 マスメディアの未来~双方向化は必然~
会場からの質問: 今回、テレビはどのチャンネルも津波の映像の繰り返しと、ACのCMばかりだったのでうんざりしました。被災地の子どもが「今日は『クレヨンしんちゃん』ないの?」って言ったという話も耳にしました。私は地震の翌日に車でラジオを聴いていて、すごく救われたんです。J-WAVEじゃなくて地元のbayfmだったんですけど(笑)。通常番組でこそありませんでしたが、2、3曲流して、その合間に千葉県内の安否情報や地震情報を流しているのを聴いて、すごくほっとしたんです。私はマスメディアの役割は報道だけじゃないと思うのですが、このあたりのことについてどう思われますか。
DJ TARO: ラジオは生活のリズムになっている方が多いんです。この番組が始まったら、そろそろ出かけなきゃいけないとか、1日のタイムコードがラジオと共にある方って非常に多いんですね。そういうラジオが災害時は緊急報道体制をとるわけです。実は僕が最初に受け持った番組があと1カ月で終わるというときに9.11事件が起きて、やはり緊急報道体制になりました。
そのときは優しい曲とニュースの繰り返しが3日間続いたのですが、4日目から「通常番組に戻します」という決定がなされたんです。でも僕は、友人がニューヨークにたくさんいましたし、貿易センタービルで仕事をしていて連絡が取れなくなった友人もいましたので、とても通常の番組をできる気分じゃありませんでした。
そんなとき「ニューヨークで大リーグとブロードウェイのミュージカルを再開する」というニュースを目にしたんです。これは海外でも論争になりました。まだ早いんじゃないかとか、不謹慎じゃないかとか。これに対してある大リーグ選手が、こんなコメントをしていました。「自分の奥さんも9.11で亡くなってしまった。だから自分も悲しみの底にいるけれど、自分たちが前向きに立ち直るためには、子どもたちに元気や勇気を持ってもらわなきゃいけない。そのために大リーグを再開するんだ。自分たちが立ち上がっていく姿をアピールしていかないといけない」
この話を知って、何か大きなことが起きたとき、どうすれば人は前向きな気持ちになれるのかと考えたら、ラジオで僕らができることもこういうことなんじゃないかと思いました。
実はDJって、結構辛い部分もあるんです。僕はブラジル出身なんですけど、ブラジルは地震がないので、ちょっとでも揺れるとやっぱり恐い(笑)。今回ラジオで「地震です、落ち着いてください」と伝えた後で、「ごめん、俺、今本当は恐かった。みんな大丈夫?」って言ったら、みなさんからも「大丈夫?」ってメッセージをもらって、僕も落ち着けました。自分をさらけ出すことで、少しずつ落ち着きを取り戻していったんです。
ラジオって、やっぱり皆さんと言葉でつながっているコミュニティーだと思うんです。僕の番組の「Hello World」はSocial Radio Companyというサブタイトルがついています。ラジオは1wayではなく、相互のソーシャルラジオを目指していくべきだと思っているんです。だからラジオを聴いて安心していただけたっていうのは、私たちラジオ人にとって大きな喜びであり、ありがたいお言葉です。そういう想いにもっとラジオは応えていかなきゃいけないと思います。
林信行: とってもいいお話の後にしづらいんですけど(笑)、テレビもインタラクティブになれば変わるんじゃないかって期待する部分はありますよね。
DJ TARO: ありますね。
林信行: 僕が仲良くしている某テレビ局のディレクターが、ツイッターで「もう全国のニュースはNHKに任せて、民放は結託して、日テレは何関係、TBSは何関係って、全部分担したらいいじゃないか」ってツイートしたんです。そしたらテレビ関係の人たちが結構それをリツイートしていたので、実現したらいいなって思いました。
最後に、今回、すごく印象に残った事例を紹介させてください。それは何かというと、NHKのニュースに対して、みんなが「字幕つけろ」って言ったら字幕がついたし、「英語を入れたほうがいいんじゃないか」って言ったら二カ国語放送になったし、「子ども向け番組やったらいいのに」って言ったら、子ども向け番組始がまったということがありました。それで「NHKすごい」っていうツイートがあったんです。
3月11日から始まった、あのUSTREAMのNHKのタイムラインでこうした提案が起きたんです。NHKの人が実際にタイムラインで反響を見ていたかどうかは分かりませんが、今回NHKは、双方向であることがどんなに重要か学んだと思います。たとえNHKがタイムラインを見ていなかったとしても、視聴者はNHKに対してツイートすることで番組に関わった気持ちになれる、するとファンになるわけですから。これからはマスメディアも必然的に双方向になっていく気がします。
DJ TARO: やっぱりリアルタイム・メディアであり続けなきゃいけないなと思います。
林信行: これからはラジオにしてもテレビにしても、ソーシャルメディアをうまく活用して双方向になっていけば、マスメディアそのものもさらに進化して、もっと親しく、皆さんがほしい情報を発信できるメディアになっていくと思います。(終)
DJ TARO: ラジオは生活のリズムになっている方が多いんです。この番組が始まったら、そろそろ出かけなきゃいけないとか、1日のタイムコードがラジオと共にある方って非常に多いんですね。そういうラジオが災害時は緊急報道体制をとるわけです。実は僕が最初に受け持った番組があと1カ月で終わるというときに9.11事件が起きて、やはり緊急報道体制になりました。
そのときは優しい曲とニュースの繰り返しが3日間続いたのですが、4日目から「通常番組に戻します」という決定がなされたんです。でも僕は、友人がニューヨークにたくさんいましたし、貿易センタービルで仕事をしていて連絡が取れなくなった友人もいましたので、とても通常の番組をできる気分じゃありませんでした。
そんなとき「ニューヨークで大リーグとブロードウェイのミュージカルを再開する」というニュースを目にしたんです。これは海外でも論争になりました。まだ早いんじゃないかとか、不謹慎じゃないかとか。これに対してある大リーグ選手が、こんなコメントをしていました。「自分の奥さんも9.11で亡くなってしまった。だから自分も悲しみの底にいるけれど、自分たちが前向きに立ち直るためには、子どもたちに元気や勇気を持ってもらわなきゃいけない。そのために大リーグを再開するんだ。自分たちが立ち上がっていく姿をアピールしていかないといけない」
この話を知って、何か大きなことが起きたとき、どうすれば人は前向きな気持ちになれるのかと考えたら、ラジオで僕らができることもこういうことなんじゃないかと思いました。
実はDJって、結構辛い部分もあるんです。僕はブラジル出身なんですけど、ブラジルは地震がないので、ちょっとでも揺れるとやっぱり恐い(笑)。今回ラジオで「地震です、落ち着いてください」と伝えた後で、「ごめん、俺、今本当は恐かった。みんな大丈夫?」って言ったら、みなさんからも「大丈夫?」ってメッセージをもらって、僕も落ち着けました。自分をさらけ出すことで、少しずつ落ち着きを取り戻していったんです。
ラジオって、やっぱり皆さんと言葉でつながっているコミュニティーだと思うんです。僕の番組の「Hello World」はSocial Radio Companyというサブタイトルがついています。ラジオは1wayではなく、相互のソーシャルラジオを目指していくべきだと思っているんです。だからラジオを聴いて安心していただけたっていうのは、私たちラジオ人にとって大きな喜びであり、ありがたいお言葉です。そういう想いにもっとラジオは応えていかなきゃいけないと思います。
林信行: とってもいいお話の後にしづらいんですけど(笑)、テレビもインタラクティブになれば変わるんじゃないかって期待する部分はありますよね。
DJ TARO: ありますね。
林信行: 僕が仲良くしている某テレビ局のディレクターが、ツイッターで「もう全国のニュースはNHKに任せて、民放は結託して、日テレは何関係、TBSは何関係って、全部分担したらいいじゃないか」ってツイートしたんです。そしたらテレビ関係の人たちが結構それをリツイートしていたので、実現したらいいなって思いました。
最後に、今回、すごく印象に残った事例を紹介させてください。それは何かというと、NHKのニュースに対して、みんなが「字幕つけろ」って言ったら字幕がついたし、「英語を入れたほうがいいんじゃないか」って言ったら二カ国語放送になったし、「子ども向け番組やったらいいのに」って言ったら、子ども向け番組始がまったということがありました。それで「NHKすごい」っていうツイートがあったんです。
3月11日から始まった、あのUSTREAMのNHKのタイムラインでこうした提案が起きたんです。NHKの人が実際にタイムラインで反響を見ていたかどうかは分かりませんが、今回NHKは、双方向であることがどんなに重要か学んだと思います。たとえNHKがタイムラインを見ていなかったとしても、視聴者はNHKに対してツイートすることで番組に関わった気持ちになれる、するとファンになるわけですから。これからはマスメディアも必然的に双方向になっていく気がします。
DJ TARO: やっぱりリアルタイム・メディアであり続けなきゃいけないなと思います。
林信行: これからはラジオにしてもテレビにしても、ソーシャルメディアをうまく活用して双方向になっていけば、マスメディアそのものもさらに進化して、もっと親しく、皆さんがほしい情報を発信できるメディアになっていくと思います。(終)
関連書籍
気軽にはじめるUSTREAM「自分」発信術
DJ TAROサンマーク出版
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