記事・レポート
東日本大震災で分かったソーシャルメディアのパワー!
既存メディアはどう変わる?~林信行×DJ TARO~
更新日 : 2011年09月29日
(木)
第2章 ソーシャルメディアの強みと弱み~デマに惑わされないために~
林信行: マスメディアから見たソーシャルメディアの強みを僕なりの視点でいくつかまとめてみました。1つは、やはりインタラクティブです。3月13日に東電の清水社長(当時)が記者会見に初めて出てきたとき、ニコニコ動画はそれを全編生放送しました。ニコニコ動画にしてもUSTREAMにしても、すぐにコメントやチャットで視聴者から反応が返ってきます。
それから、安価であることも強みです。個人がラジオやテレビで放送するのは無理ですが、ニコニコ動画やUSTREAM、インターネットラジオのようなものなら、パソコンが1台あれば無料でできます。例えば今回なら、ガイガーカウンターを持っている人がガイガーカウンターに映し出された放射線量をUSTREAMで生中継しています。これはパソコンと数千円のWebカメラさえあれば、放送ができてしまうからこそでしょう。
もう1つの強みは、マッシュアップです。「YokosoNews」(http://yokosonews.com/)というサイトがすごかったんですけど、ご存じですか? 三重県の方がNHKのニュースを英語に同時通訳して動画配信していたんです。実は僕も地震の当日、誰が一番の情報弱者かを考えて「日本語が読めない人は何が起きているのか分からなくて不安だろうな」と思って、ツイッターでは結構英語でツイートしていました。
このマッシュアップ感というか、一緒につくっていく感じはやっぱりソーシャルメディアならではですよね。
DJ TARO: そうですね。
林信行: 逆に、ソーシャルメディアから見たマスメディアの強みも考えてみました。1つは、お金や手間を掛けた取材や確認をしていることです。
ツイッターでは20万フォロワーがいるため、よく「この情報を広げて下さい」と頼まれます。しかし、一般の方々からの情報は、未確認の噂を「重要なので広げて下さい」と頼んできたり、他がどういう状況かを無視し一方的に自分の状況を伝えてきたものだったりと、つぶやく優先順位はおろか、そもそも本当につぶやくべきかも悩ましいところがありました。そんなとき、私が信頼して読むことができたのが被災地で現場に足を運んで取材をしている現地のメディアの方々のつぶやきでした。
被災地の人から「すごく助かったので、親にもツイッターを教えました」という報告をたくさん受けたのですが、果たしてIT慣れしていない方々が急にツイッターを始めたからといって、いい情報が得られるかというと、そうとは限らないと思いました。そこで「@nobi/mar2011tohokuhokuriku」というリストをつくりました。リストというのは自分が好きなツイッターのアカウントだけを登録できる機能です。そうすることでそれだけしか見られない状況をつくることができるのです。
このリストで僕が選んだのは、現地の市役所や新聞社、ラジオ局でした。マスメディアのアカウントは看板を背負っているので、確認の取れていない情報は流さないだろうし、情報の伝え方を知っているので誤解からデマを招くような情報発信もしないだろうと踏んだからです。親の世代だと、そもそもどの人が有名かということも多分知らなので、彼らでも認知できる信頼できるブランドという点もマスメディアのアカウントを重視した理由です。
DJ TARO: 私たちが一番悩んだのも、やはりツイッターの情報の信頼性です。「radiko」がエリア規制を解除している間は、東北の皆さんからのメッセージや情報を流していましたが、1カ月経ってエリア規制が元に戻ってからは、東京としてできる後方支援の情報を扱うようにしました。でもこういう情報はツイッターで細分化されていて、拾うことすら難しい状態でした。
すると、こういう情報をまとめたサイトをつくる人たちというのが現れて、そういう人たちがツイートしてくれました。それを拝見して、私や番組のツイッターで紹介したり、ブログに載せたり、あとはオンエアには流さないけれどUSTREAMで紹介したり。二分化したような状態でやっていました。
林信行: どうしてソーシャルメディアは信頼できないのかというと、デマの問題があるからですよね。僕はデマがどういうふうに起きるのか気になって、3月の騒動の最中に「枝野官房長官が105時間ぶりに寝た」という情報を目にしたとき、「これはデマだろうな」と思って調べてみたんです。すると、初めに誰かが「枝野さん、きっと105時間は寝てないはずだ」ということをツイートしていたんです。それが伝言ゲームになって「105時間振りに就寝したらしいな」くらいに変わって、気が付いたら「105時間振りに就寝」ということになっていました。その間、約48時間くらいで、実は105時間でもなんでもありません(笑)。
ちょっと緩い事例でしたが、緊急のときは伝言ゲームが起きやすいんです。だから非公式リツイートで一言余計なことを加えてしまうと、そこから伝言ゲームになりがちです。一言加えるのは親しみやすさを増すという意味ではいい部分でもあるのですが、今回は情報を伝える難しさが浮き彫りになりました。
DJ TARO: ただ、その後に「公式リツイートを使うようにしましょう」という、皆さんの正そうとする動きもあって、早いなと思いました。あまりツイッターの使い方をよく分かっていない方が、数日の間に学習していった様子も見えましたよね。
林信行: そうですね。みんなで一緒に学習している感じがありました。
デマに巻き込まれないためには何が一番重要かというと、情報を誰が発信したか、発信元と発信された時間の確認です。これは僕が実際に経験したことですが、地震直後に女性が瓦礫の下に埋まってしまい「そろそろ携帯の電池がなくなる」という情報を目にしたんです。これはリツイートした方がいいと思って、リツイートしました。
その後ずっと彼女をチェックしていたところ、ある時点で「助かりました」というツイートがあってホッとしたのですが、助かった後も「瓦礫の下に埋まっている」というのがリツイートされていました。こうなると下手をしたら救助隊が、すでに救助されて誰もいない所に行ってしまうかもしれません。時間の確認、最新情報のチェックは大事です。
それから、安価であることも強みです。個人がラジオやテレビで放送するのは無理ですが、ニコニコ動画やUSTREAM、インターネットラジオのようなものなら、パソコンが1台あれば無料でできます。例えば今回なら、ガイガーカウンターを持っている人がガイガーカウンターに映し出された放射線量をUSTREAMで生中継しています。これはパソコンと数千円のWebカメラさえあれば、放送ができてしまうからこそでしょう。
もう1つの強みは、マッシュアップです。「YokosoNews」(http://yokosonews.com/)というサイトがすごかったんですけど、ご存じですか? 三重県の方がNHKのニュースを英語に同時通訳して動画配信していたんです。実は僕も地震の当日、誰が一番の情報弱者かを考えて「日本語が読めない人は何が起きているのか分からなくて不安だろうな」と思って、ツイッターでは結構英語でツイートしていました。
このマッシュアップ感というか、一緒につくっていく感じはやっぱりソーシャルメディアならではですよね。
DJ TARO: そうですね。
林信行: 逆に、ソーシャルメディアから見たマスメディアの強みも考えてみました。1つは、お金や手間を掛けた取材や確認をしていることです。
ツイッターでは20万フォロワーがいるため、よく「この情報を広げて下さい」と頼まれます。しかし、一般の方々からの情報は、未確認の噂を「重要なので広げて下さい」と頼んできたり、他がどういう状況かを無視し一方的に自分の状況を伝えてきたものだったりと、つぶやく優先順位はおろか、そもそも本当につぶやくべきかも悩ましいところがありました。そんなとき、私が信頼して読むことができたのが被災地で現場に足を運んで取材をしている現地のメディアの方々のつぶやきでした。
被災地の人から「すごく助かったので、親にもツイッターを教えました」という報告をたくさん受けたのですが、果たしてIT慣れしていない方々が急にツイッターを始めたからといって、いい情報が得られるかというと、そうとは限らないと思いました。そこで「@nobi/mar2011tohokuhokuriku」というリストをつくりました。リストというのは自分が好きなツイッターのアカウントだけを登録できる機能です。そうすることでそれだけしか見られない状況をつくることができるのです。
このリストで僕が選んだのは、現地の市役所や新聞社、ラジオ局でした。マスメディアのアカウントは看板を背負っているので、確認の取れていない情報は流さないだろうし、情報の伝え方を知っているので誤解からデマを招くような情報発信もしないだろうと踏んだからです。親の世代だと、そもそもどの人が有名かということも多分知らなので、彼らでも認知できる信頼できるブランドという点もマスメディアのアカウントを重視した理由です。
DJ TARO: 私たちが一番悩んだのも、やはりツイッターの情報の信頼性です。「radiko」がエリア規制を解除している間は、東北の皆さんからのメッセージや情報を流していましたが、1カ月経ってエリア規制が元に戻ってからは、東京としてできる後方支援の情報を扱うようにしました。でもこういう情報はツイッターで細分化されていて、拾うことすら難しい状態でした。
すると、こういう情報をまとめたサイトをつくる人たちというのが現れて、そういう人たちがツイートしてくれました。それを拝見して、私や番組のツイッターで紹介したり、ブログに載せたり、あとはオンエアには流さないけれどUSTREAMで紹介したり。二分化したような状態でやっていました。
林信行: どうしてソーシャルメディアは信頼できないのかというと、デマの問題があるからですよね。僕はデマがどういうふうに起きるのか気になって、3月の騒動の最中に「枝野官房長官が105時間ぶりに寝た」という情報を目にしたとき、「これはデマだろうな」と思って調べてみたんです。すると、初めに誰かが「枝野さん、きっと105時間は寝てないはずだ」ということをツイートしていたんです。それが伝言ゲームになって「105時間振りに就寝したらしいな」くらいに変わって、気が付いたら「105時間振りに就寝」ということになっていました。その間、約48時間くらいで、実は105時間でもなんでもありません(笑)。
ちょっと緩い事例でしたが、緊急のときは伝言ゲームが起きやすいんです。だから非公式リツイートで一言余計なことを加えてしまうと、そこから伝言ゲームになりがちです。一言加えるのは親しみやすさを増すという意味ではいい部分でもあるのですが、今回は情報を伝える難しさが浮き彫りになりました。
DJ TARO: ただ、その後に「公式リツイートを使うようにしましょう」という、皆さんの正そうとする動きもあって、早いなと思いました。あまりツイッターの使い方をよく分かっていない方が、数日の間に学習していった様子も見えましたよね。
林信行: そうですね。みんなで一緒に学習している感じがありました。
デマに巻き込まれないためには何が一番重要かというと、情報を誰が発信したか、発信元と発信された時間の確認です。これは僕が実際に経験したことですが、地震直後に女性が瓦礫の下に埋まってしまい「そろそろ携帯の電池がなくなる」という情報を目にしたんです。これはリツイートした方がいいと思って、リツイートしました。
その後ずっと彼女をチェックしていたところ、ある時点で「助かりました」というツイートがあってホッとしたのですが、助かった後も「瓦礫の下に埋まっている」というのがリツイートされていました。こうなると下手をしたら救助隊が、すでに救助されて誰もいない所に行ってしまうかもしれません。時間の確認、最新情報のチェックは大事です。
関連書籍
気軽にはじめるUSTREAM「自分」発信術
DJ TAROサンマーク出版
東日本大震災で分かったソーシャルメディアのパワー! インデックス
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第1章 東日本大震災を機に、マスメディアとソーシャルメディアが急接近
2011年09月27日 (火)
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第2章 ソーシャルメディアの強みと弱み~デマに惑わされないために~
2011年09月29日 (木)
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第3章 善意の情報発信が、情報ノイズになることも
2011年09月30日 (金)
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第4章 のんきなツイートは許されない?
2011年10月03日 (月)
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第5章 ソーシャルメディアはいいとこ取りで使え
2011年10月04日 (火)
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第6章 マスメディアの未来~双方向化は必然~
2011年10月06日 (木)
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