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東日本大震災で分かったソーシャルメディアのパワー!

既存メディアはどう変わる?~林信行×DJ TARO~

更新日 : 2011年09月30日 (金)

第3章 善意の情報発信が、情報ノイズになることも

DJ TARO氏(左)林信行氏(右)

林信行: 情報の流れは一般的には双方向が重要ですが、情報の扱い方に慣れていない方にとっては、一方通行のほうがいいんじゃないかと今回感じました。でも、ツイッターは基本的に双方向、そこでちょっとした工夫をしたことがありました。ツイッターで「#311care」というハッシュタグを使って医療情報や命に関わる情報が流されていたので、これは広げなきゃいけないなと思ったのですが、下手に広げてしまうと、あまり重要じゃない情報にもこのハッシュダグを付ける人が出てきて、重要な情報がノイズで埋もれてしまうんじゃないかと思ったんです。

そこで、Googleリアルタイム検索(※編注:2011年7月にサービス停止)を使って#311careが付いた情報を検索し、検索結果のページに新しいURLを付けて広めました。つまり、僕が広めたのは「#311careが付いた情報の検索結果ページ」なわけですから、このページからはツイートできないわけです。すぐにツイートできる状態にすると、軽い気持ちで書く人が出てしまうのではないかと思い、見るだけの形にしました。

ほかにもいろいろやったのですが、どれも「新しいURLはつくっても、新しいサービスは立ち上げない」ように注意しました。今回、僕のところにいろんな人から「震災に役立つこんなサイトをつくりました。リツイートしてください」っていうのがいっぱい来たんです。Googleの「Person Finder」( HYPERLINK "http://goo.gl/sagas" http://goo.gl/sagas)やボランティアが立ち上げた「sinsai.info」(http://www.sinsai.info/)など、有名なサイトに情報が集約されるのはいいと思うのですが、あちこちに消息情報サイトができてしまうと、せっかくの情報が分散してしまい、結局探すのが大変になってしまいます。なので、できるだけ新しいサービスは作らないほうがいいと思ったんです。

TAROさんのところにも「ラジオで紹介してほしい」とか「ツイッターで紹介してほしい」というのがいっぱい来たんじゃないですか?

DJ TARO: J-WAVEにも、僕個人宛てにも来ました。これだけ情報過多になってくると、単純にそれをリツイートするだけだと変に拡散してしまうんじゃないかという心配がやっぱりありました。

僕も自分でできる支援ということで、ちょっと行動を起こしたものがあるんですけど、DJ TARO関連でいろんなものが出てきちゃうと分かりにくくなってしまうので、ブログならブログで既存のウェブにそのまま集約した方が分散されなくていいんじゃないかと思いました。ちょっと観点が違うかもしれないですけど、似たようなことを考えましたね。

林信行: そのあたりは多分同じですね。ちなみに消息情報に関しては、1ついいことがありました。最初はGoogleが「Person Finder」、NHKが「安否情報検索」、電話会社はNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、とみんな別々にやっていたんです。このバラバラだった情報が、最後は全部つながったんです。NHKが番組でGoogleの「Person Finder」を取り上げたのがきっかけで、「どうせだったら一緒にしたほうがいいね」という話になって、自然発生的につながっていったそうです。

結局、情報を受け取るのは人なんですよね。情報をどう提供するか、デザインするのも人です。だから人間性って大事だと思います。相手がどう情報を受け取るかをちょっと考えるだけで、情報の発信の仕方は変わってくると思います。

DJ TARO: そうですね。デジタルなものに強い弱いによっても、得られる情報は全く変わってしまうので、そこもうまく分けたものが必要になってきますね。

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