記事・レポート
異色の大ヒットビジネス書『もしドラ』はこうして生まれた
~仕掛け人が語るミリオンセラーへの軌跡と、売れる企画の法則~
BIZセミナーマーケティング・PRコンテンツビジネス
更新日 : 2011年05月30日
(月)
第7章 売れる企画の条件は「TDL」
加藤貞顕: ベストセラーをつくるためには、「その時代に合ったもので、みんなが欲しがっているもの、けれど誰も気づいていないものを、顧客に寄り添った形で、インパクトのある売り方をする!」ことが必要です。言うは易く行うは難しなんですが(笑)。
3つ目の「みんなが気づいていないもの」を見つけるのが一番難しいです。これには簡単な方法はないと思いますが、例えば僕は、インターネットで炎上しているサイトを見ても、「みんなは何が心配なのか、何が欲しいのか、何が好きなのか」、そういった根本的なことを考えます。人と話しているときは、「この世代の人たちは何が心配で、何が望みなのか」ということを見ています。もちろんそういうネガティブなことだけではなくて、みんなが好きなことは何かということを一番たくさん考えています。
そんな感じで最近、もう1つ法則みたいなことを思いついたのでお話させてください。「今の社会で売れるモノの法則」って、何だと思いますか? 僕がこのことを考えるきっかけになったのは、結婚式の引出物とかでよくもらうカタログギフトでした。あのカタログをもらうたびに思うんですけれど、結構よさそうなものがたくさん載っているにもかかわらず、欲しいものが1つもない……でしょ?(笑)だから、「どうしてだろう?」と考えたんです。
その一方で、むちゃくちゃ欲しくなるものもあるんです。その代表例は、アップル社の製品です。僕はとりこになっていて、新製品が出たら、何でも買ってしまっています。僕のような人が世界中にいっぱいいますよね。これだけ欲しいものがないところに、これだけ売れているものがあるというのは、何なのでしょうか。一体、何が違うのでしょうか。
いろいろ考えたのですが、現時点の結論はTechnologyとDesignとLife Styleではないかと思っています。アップル社の製品にはこの3つが入ってますよね。頭文字を並べて『TDLの法則』と呼んでいます。某テーマパークの略称と同じにして覚えやすくしてあるんですよ(笑)。ものが飽和した現在でも、この3つが融合した商品だと欲しくなるのだと思うのです。iPhoneがまさにそうですよね。任天堂の商品やユニクロのヒートテックもそうではないでしょうか。カタログギフトには全然欲しいものがないのに、この3つが融合すると、とたんに欲しくなるというのは、やはり現代の状況を象徴しているような気がします。
でもよく考えたら、TechnologyとLife Styleは、実は昔からセットでした。例えば、農耕というテクノロジーができて、定住というライフスタイルが生まれました。活版印刷という技術で、宗教革命やマスコミュニケーションが生まれました。とすると、現代の特徴はDesignではないかと思います。だから僕が本をつくるときは、みんなが手に取りたくなるようなデザインを一所懸命考えるんです。最近は電子書籍も手がけていますが、これもTDLが融合したものでなければ、やっぱり売れません。TDLの法則は、今後さらに有効になっていくのではないかと思っています。
最後に、出版の未来についてお話しします。出版界は、毎年市場が5%ずつシュリンクしていて、このままいくと、あと20年ほどでなくなってしまうという恐ろしい状況です。でも僕は、「未来はまったく暗くない」と思っています。
今ほど情報の流通量が多い時代というのは、おそらく歴史上なかったと思います。普通の人がTwitterをして、ブログを見て、新聞を読んで、本を読んで、メールを書いて……とやっていますが、こんなことをできる人はかつていなかったはずです。人々の情報処理能力は高くなってきています。また技術の進歩で表現力もアップしている。
というわけで、そこにまつわる仕事が減るわけはありませんよね。だから、コンテンツビジネスの未来は明るいのではないかと思っています。正直言って、既存の出版社の未来が明るいかどうかはわかりません。プレーヤーは入れ替わる可能性もあります。でも、コンテンツビジネス全体の未来は明るいだろうと考えています。そしてそういう環境では、やはり編集、デザイン、プロモーションといった部分を一所懸命考えていくしかないと思っています。
結局、大事なのは業界じゃなくて、読者であり、クリエーターであり、そこに関係した人々みんなが幸福になることなのです。そこに貢献できるようなものをつくっていけば何とかなる、そう思って今後もやっていこうと思っています。
3つ目の「みんなが気づいていないもの」を見つけるのが一番難しいです。これには簡単な方法はないと思いますが、例えば僕は、インターネットで炎上しているサイトを見ても、「みんなは何が心配なのか、何が欲しいのか、何が好きなのか」、そういった根本的なことを考えます。人と話しているときは、「この世代の人たちは何が心配で、何が望みなのか」ということを見ています。もちろんそういうネガティブなことだけではなくて、みんなが好きなことは何かということを一番たくさん考えています。
そんな感じで最近、もう1つ法則みたいなことを思いついたのでお話させてください。「今の社会で売れるモノの法則」って、何だと思いますか? 僕がこのことを考えるきっかけになったのは、結婚式の引出物とかでよくもらうカタログギフトでした。あのカタログをもらうたびに思うんですけれど、結構よさそうなものがたくさん載っているにもかかわらず、欲しいものが1つもない……でしょ?(笑)だから、「どうしてだろう?」と考えたんです。
その一方で、むちゃくちゃ欲しくなるものもあるんです。その代表例は、アップル社の製品です。僕はとりこになっていて、新製品が出たら、何でも買ってしまっています。僕のような人が世界中にいっぱいいますよね。これだけ欲しいものがないところに、これだけ売れているものがあるというのは、何なのでしょうか。一体、何が違うのでしょうか。
いろいろ考えたのですが、現時点の結論はTechnologyとDesignとLife Styleではないかと思っています。アップル社の製品にはこの3つが入ってますよね。頭文字を並べて『TDLの法則』と呼んでいます。某テーマパークの略称と同じにして覚えやすくしてあるんですよ(笑)。ものが飽和した現在でも、この3つが融合した商品だと欲しくなるのだと思うのです。iPhoneがまさにそうですよね。任天堂の商品やユニクロのヒートテックもそうではないでしょうか。カタログギフトには全然欲しいものがないのに、この3つが融合すると、とたんに欲しくなるというのは、やはり現代の状況を象徴しているような気がします。
でもよく考えたら、TechnologyとLife Styleは、実は昔からセットでした。例えば、農耕というテクノロジーができて、定住というライフスタイルが生まれました。活版印刷という技術で、宗教革命やマスコミュニケーションが生まれました。とすると、現代の特徴はDesignではないかと思います。だから僕が本をつくるときは、みんなが手に取りたくなるようなデザインを一所懸命考えるんです。最近は電子書籍も手がけていますが、これもTDLが融合したものでなければ、やっぱり売れません。TDLの法則は、今後さらに有効になっていくのではないかと思っています。
最後に、出版の未来についてお話しします。出版界は、毎年市場が5%ずつシュリンクしていて、このままいくと、あと20年ほどでなくなってしまうという恐ろしい状況です。でも僕は、「未来はまったく暗くない」と思っています。
今ほど情報の流通量が多い時代というのは、おそらく歴史上なかったと思います。普通の人がTwitterをして、ブログを見て、新聞を読んで、本を読んで、メールを書いて……とやっていますが、こんなことをできる人はかつていなかったはずです。人々の情報処理能力は高くなってきています。また技術の進歩で表現力もアップしている。
というわけで、そこにまつわる仕事が減るわけはありませんよね。だから、コンテンツビジネスの未来は明るいのではないかと思っています。正直言って、既存の出版社の未来が明るいかどうかはわかりません。プレーヤーは入れ替わる可能性もあります。でも、コンテンツビジネス全体の未来は明るいだろうと考えています。そしてそういう環境では、やはり編集、デザイン、プロモーションといった部分を一所懸命考えていくしかないと思っています。
結局、大事なのは業界じゃなくて、読者であり、クリエーターであり、そこに関係した人々みんなが幸福になることなのです。そこに貢献できるようなものをつくっていけば何とかなる、そう思って今後もやっていこうと思っています。
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該当講座
異色の大ヒットビジネス書『もしドラ』はこうして生まれた
~仕掛け人が語るミリオンセラーへの軌跡と売れる企画の法則~
加藤 貞顕(ダイヤモンド社 書籍編集局 第三編集部)
田中 洋(中央大学大学院ビジネススクール教授)
本講座では発行部数が150万部を突破し、社会現象化している『もしドラ』の担当編集者であり、さまざまな販促プランニングにも携わったダイヤモンド社の加藤貞顕氏をお招きします。過去にも多くのヒット書籍を担当してきた加藤氏に、独自の「眼」で「企画の芽」を見つける方法から、Twitterを活用した新たなプロモーションの工夫、電子書籍版ヒットの裏側と今後の戦略までをお伺いします。
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