記事・レポート
異色の大ヒットビジネス書『もしドラ』はこうして生まれた
~仕掛け人が語るミリオンセラーへの軌跡と、売れる企画の法則~
BIZセミナーマーケティング・PRコンテンツビジネス
更新日 : 2011年05月27日
(金)
第6章 ベストセラーのつくり方「1%の法則」
加藤貞顕: 『もしドラ』がなぜ売れたのかについてまとめてみます。1つは、「隠れた需要」です。冒頭に申し上げた時代の流れが大きく関係するのですが、人と人とのつながりが希薄な現代において、リーマンショック以降は利益至上主義に対する抵抗感が強まりました。そういう時代の流れにぴったりはまったのではないかと思います。『もしドラ』には組織で何かを成し遂げる、人の強みを活かすという内容に加えて、「会社であっても利益より、人々を幸せにすることが大事だ」というメッセージがあったからです。
いうまでもなく「内容のよさ」がなくてははじまりません。これは著者の岩崎さんによる「女子高生とドラッカー」という組み合わせのアイデアの素晴らしさと、感動的なストーリーに全面的に支えられています。そしてまた、ドラッカー自体の理論の魅力も大きなものでしょう。そこにエッジの立ったデザイン、様々なマーケティングが加わったこと。そして、運もよかった。こんなふうにいろんなことが重なりました。
セミナーの冒頭で「ベストセラーのつくり方」なんてちょっと大きなことを言ってしまいましたが、それについても少しお話ししたいと思います。
本の部数はマーケットの大きさに依存するので、日本で出版する場合には日本の人口が上限になります。国内で本を読む人数は、おそらく1億人程度です。その1億人を相手にできる本なら、1年間に100万部程度は売れます。実際、今までのベストセラーの状況を見ると、1年間でだいたい100万部売れています。
僕は以前、過去にミリオンセラーになった本を調べたことがあるのですが、テーマはかなり限られていました。それは、家族、恋愛、青春、健康、お金です。過去のミリオンセラーはほとんどこれらのテーマか、あるいはその組み合わせで書かれています。どういうことかというと、これは1億人が興味があるテーマなんですよね。そういうテーマだけが100万部売れる可能性がある。
1億人が興味があるテーマで最高にうまくやると1%の100万人売れる。それならば、「本の市場の1%がその本の最大部数になる」という仮説が成り立つのではないかというふうに考えました。つまり、1,000万人がターゲットになる本なら、上手くやれば10万部売れる。ターゲットが100万人だったら最高で1万部売れるということです。
僕はいつもこの「1%の法則」をもとに本をつくっています。1つ例を挙げると2007年に担当した『スタバではグランデを買え! 価格と生活の経済学』があります。2006年~2008年頃は、経済の時代だったと思うのです。今よりは景気が少しはよかったし、株式市場も盛り上がっていました。しかしこの時期、経済をわかりやすく伝える本というのはありませんでした。だから、そこにおもしろくて経済がわかるようになる本を投入したら売れるだろうと考えたのです。
ターゲットとなる読者は、会社員で——会社員の数は当時、だいたい4,000万人くらいでしたから、それがビジネス系の本をつくるときのベースの数でした——その中でも平均より勉強熱心な人。正規分布していれば、おそらく2,000万人はいるはずです。その1%ということは、20万人ですから、20万部は売れる可能性があると予測しました。実際、これは27万部ほど売れました。
結構いい加減な推測なのですが、だいたい数字の桁があっていればいいと思ってやっています。このやり方のよい点は、ターゲットが明確化するということです。これは、ドラッカーがいうところの顧客の定義ですね。これによって、読者はどういう人なのか考え、デザイン、タイトル、文字の大きさ、紙の色、文章の説明のトーンなど、あらゆることを決めていくのです。
この本も、タイトルとデザインで差別化することに気をつかっています。『スタバではグランデを買え!』というキャッチーなタイトルにしましたが、中身がちゃんとわかるようにサブタイトルに『価格と生活の経済学』とつけました。おそらくこういうタイトルのつけ方をしている編集者は多いと思いますが、こういうSEO的な名づけ方は、検索のことを考えても大事な手法だと思います。
いうまでもなく「内容のよさ」がなくてははじまりません。これは著者の岩崎さんによる「女子高生とドラッカー」という組み合わせのアイデアの素晴らしさと、感動的なストーリーに全面的に支えられています。そしてまた、ドラッカー自体の理論の魅力も大きなものでしょう。そこにエッジの立ったデザイン、様々なマーケティングが加わったこと。そして、運もよかった。こんなふうにいろんなことが重なりました。
セミナーの冒頭で「ベストセラーのつくり方」なんてちょっと大きなことを言ってしまいましたが、それについても少しお話ししたいと思います。
本の部数はマーケットの大きさに依存するので、日本で出版する場合には日本の人口が上限になります。国内で本を読む人数は、おそらく1億人程度です。その1億人を相手にできる本なら、1年間に100万部程度は売れます。実際、今までのベストセラーの状況を見ると、1年間でだいたい100万部売れています。
僕は以前、過去にミリオンセラーになった本を調べたことがあるのですが、テーマはかなり限られていました。それは、家族、恋愛、青春、健康、お金です。過去のミリオンセラーはほとんどこれらのテーマか、あるいはその組み合わせで書かれています。どういうことかというと、これは1億人が興味があるテーマなんですよね。そういうテーマだけが100万部売れる可能性がある。
1億人が興味があるテーマで最高にうまくやると1%の100万人売れる。それならば、「本の市場の1%がその本の最大部数になる」という仮説が成り立つのではないかというふうに考えました。つまり、1,000万人がターゲットになる本なら、上手くやれば10万部売れる。ターゲットが100万人だったら最高で1万部売れるということです。
僕はいつもこの「1%の法則」をもとに本をつくっています。1つ例を挙げると2007年に担当した『スタバではグランデを買え! 価格と生活の経済学』があります。2006年~2008年頃は、経済の時代だったと思うのです。今よりは景気が少しはよかったし、株式市場も盛り上がっていました。しかしこの時期、経済をわかりやすく伝える本というのはありませんでした。だから、そこにおもしろくて経済がわかるようになる本を投入したら売れるだろうと考えたのです。
ターゲットとなる読者は、会社員で——会社員の数は当時、だいたい4,000万人くらいでしたから、それがビジネス系の本をつくるときのベースの数でした——その中でも平均より勉強熱心な人。正規分布していれば、おそらく2,000万人はいるはずです。その1%ということは、20万人ですから、20万部は売れる可能性があると予測しました。実際、これは27万部ほど売れました。
結構いい加減な推測なのですが、だいたい数字の桁があっていればいいと思ってやっています。このやり方のよい点は、ターゲットが明確化するということです。これは、ドラッカーがいうところの顧客の定義ですね。これによって、読者はどういう人なのか考え、デザイン、タイトル、文字の大きさ、紙の色、文章の説明のトーンなど、あらゆることを決めていくのです。
この本も、タイトルとデザインで差別化することに気をつかっています。『スタバではグランデを買え!』というキャッチーなタイトルにしましたが、中身がちゃんとわかるようにサブタイトルに『価格と生活の経済学』とつけました。おそらくこういうタイトルのつけ方をしている編集者は多いと思いますが、こういうSEO的な名づけ方は、検索のことを考えても大事な手法だと思います。
関連書籍
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」
岩崎夏海ダイヤモンド社
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第8章 電子書籍はコンテンツのつくり方が紙とはまったく違う
2011年05月31日 (火)
該当講座
異色の大ヒットビジネス書『もしドラ』はこうして生まれた
~仕掛け人が語るミリオンセラーへの軌跡と売れる企画の法則~
加藤 貞顕(ダイヤモンド社 書籍編集局 第三編集部)
田中 洋(中央大学大学院ビジネススクール教授)
本講座では発行部数が150万部を突破し、社会現象化している『もしドラ』の担当編集者であり、さまざまな販促プランニングにも携わったダイヤモンド社の加藤貞顕氏をお招きします。過去にも多くのヒット書籍を担当してきた加藤氏に、独自の「眼」で「企画の芽」を見つける方法から、Twitterを活用した新たなプロモーションの工夫、電子書籍版ヒットの裏側と今後の戦略までをお伺いします。
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