記事・レポート

異色の大ヒットビジネス書『もしドラ』はこうして生まれた

~仕掛け人が語るミリオンセラーへの軌跡と、売れる企画の法則~

BIZセミナーマーケティング・PRコンテンツビジネス
更新日 : 2011年05月19日 (木)

第1章 『もしドラ』発売時の社会状況と、新しい読者層

女子高生とドラッカーという異色の組み合わせで大ヒットしたビジネス書『もしドラ』。その編集者の加藤貞顕氏が、企画の芽の見つけ方、Twitterを活用したPR戦略、メディアに取り上げてもらう方法などを語ります。ネタ探しから販促プランニングまで、出版界はもちろん、さまざまなビジネスの参考になる企画術が満載です。

ゲスト講師:加藤貞顕 ダイヤモンド社 書籍編集局第三編集部
講 師:田中洋 中央大学ビジネススクール教授

加藤貞顕氏

加藤貞顕: きょうは『もしドラ』ができるまでの話と、そのマーケティング、そしてベストセラーのつくり方、という流れでお話ししたいと思います。

『もしドラ』は現時点で245万部の売り上げがありますが、主人公の川島みなみが参考にしていたドラッカーの『マネジメント』は、『もしドラ』の出版後に70万部も売り上げが伸びました(※2011年4月現在)。本というのは、時代の流れや社会の状況が売り上げに大きくかかわってくる商品です。もちろんほかのさまざまな商品も同じですが、本に関しては特にそれが顕著です。『もしドラ』が発売された2009年12月当時は、未来が見えない閉塞感があり、人と人とのつながりが希薄な状況だったと思います。

そのとき出版界はどうだったかというと、2007~2008年ぐらいのときは、「仕事術」系の本がとても売れていました。例えば、「ノートパソコンを買えば仕事がうまくいく」「A4、1枚でいい」といったコンセプトの本などです。そういう本が2009年に入って一段落した、という状況だったと思います。みんなどこか不安で、何か寂しくて、どうしたらいいのか悩んでいる、そんな時期だったのではないかと思います。そんななかで『もしドラ』は出版されたのです。

この本のもとになったのは、著書の岩崎夏海さんがブログに書いた「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」というタイトルの数千字程度の記事でした。この本のあらすじ、つまりは本の出だしの部分、みなみちゃんが「『マネジメント』を買って、野球部を変えよう」と思うところまでの話が載っていました。

この記事が大変な注目を集めて、「はてなブックマーク」でたくさんブックマークされていたので、僕も見つけたのです。すごくおもしろかったので、岩崎さんに連絡を取って、「小説にしていただけませんか?」とお願いしました。

岩崎さんの執筆期間は半年ぐらいだったと思いますが、できたものを読ませてもらったとき、やっぱりすごくおもしろいと思いました。ドラッカーの本の多くは弊社、ダイヤモンド社が出版していますが、これまでのものは、企業の経営者やマネージャーといった、いわゆる“おじさん”が読む本でした。でも『もしドラ』は違ったのです。

例えば、「普段はあまり家族にかかわらない父親が、子育てに口を出して、奥さんを怒らせる」といったシチュエーションにも役に立つんです。「夫婦で家庭のビジョンを話し合って、お互いの役割について責任を分担していく」というところが、ドラッカーのマネジメントに当てはまるので。つまり、これはどんな組織にも役立つんですね。この本の帯には「家庭、学校、会社、NPO…ひとがあつまっているすべての組織で役立つ本」と書いてありますが、僕は原稿を読んだとき、本当にそう思いました。

Clip to Evernote

関連書籍

「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」

岩崎夏海
ダイヤモンド社


該当講座

異色の大ヒットビジネス書『もしドラ』はこうして生まれた

~仕掛け人が語るミリオンセラーへの軌跡と売れる企画の法則~

異色の大ヒットビジネス書『もしドラ』はこうして生まれた
加藤貞顕 (note株式会社 代表取締役 CEO)
田中洋 (中央大学大学院ビジネススクール 教授 )

加藤 貞顕(ダイヤモンド社 書籍編集局 第三編集部)
田中 洋(中央大学大学院ビジネススクール教授)
本講座では発行部数が150万部を突破し、社会現象化している『もしドラ』の担当編集者であり、さまざまな販促プランニングにも携わったダイヤモンド社の加藤貞顕氏をお招きします。過去にも多くのヒット書籍を担当してきた加藤氏に、独自の「眼」で「企画の芽」を見つける方法から、Twitterを活用した新たなプロモーションの工夫、電子書籍版ヒットの裏側と今後の戦略までをお伺いします。


BIZセミナー マーケティング・PR コンテンツビジネス