記事・レポート

再生はあり得るか?
~日本の将来の可能性と危険性~

ジェラルド・カーティス氏(コロンビア大学教授)によるライブラリートーク

ライブラリートーク政治・経済・国際
更新日 : 2011年02月10日 (木)

第7章 マスコミは反省し、知識人は声をあげよ~idea創出対策:長期編~

ジェラルド・カーティス氏

ジェラルド・カーティス: 日本のマスコミは反省しなければなりません。もちろんアメリカのマスコミにも問題はありますが、APECとG20についてのアメリカと日本の報道を比較してみてください。アメリカの新聞は、オバマさんを支持する新聞も反対する新聞も、オバマさんが何を目指して、何を得て帰ってきたか、なぜ目指したものが得られなかったのかということを客観的に分析して報道しています。

日本のマスコミの特徴は、政府を批判しますが、同時に、政府のPRの出先機関を務めるということです。その主な理由は日本の記者クラブ制度です。朝日新聞も、読売新聞も、毎日新聞も、どこも似たような見出しと同じような記事をよく出します。例えばAPECでの胡錦濤さんやメドベージェフさんとの首脳会談についての記事の見出しは、どこも大体同じで「菅総理は尖閣列島に言及した」「北方領土は日本の領土だと主張した」。これは官庁が書いたプレスリリースを記者クラブにいる記者がそのまま使っているんです。こんなのはニュースじゃないんです。そんなことはインターネットで外務省のプレスリリースを読めばわかることでしょう。

マスコミはもっと客観性と分析力を持たないといけません。日本の国民はそういう意味で、本当の情報を得ていません。マスコミの人は反省すべきだと思います。

英語では"public intellectual"という言葉がよく使われます。学者や政府で働いていた人など、政策に非常に関心があって知識のある人が政策についていろいろ発言をしたり、政府に入ったり、アドバイザーとして助言したりしているのです。アメリカにはこういう人たちがたくさんいますが、日本にはそういう人たちが少ないのです。竹中平蔵さんは政府にいた経験があって、政府を離れても政策について意見を述べて、いろいろなことをやっていますが、彼は例外であって、public intellectualはまだ日本には少ない。ブルッキングス研究所やAEIといったシンクタンクも日本にはまだありません。要は政策研究が大事なんです。

今の日本を見ていると、指導的な立場にある人たちが、真剣に考えて、反発があっても日本の将来にとって必要な政策を国民に訴える勇気があるのか疑問です。消費税の問題にしても、移民を受け入れるかどうかという問題にしても、安全保障政策にしても、何かを提案して、反対されると言い方を変えて、政策がぶれる。

教育水準が高く、いろいろな社会的強さを持っている日本人が知恵を出して、この国の潜在的な力を発揮して、より明るい将来になるように頑張ってほしいと思います。(終)

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