記事・レポート
ミサコ・ロックス!が体現するアメリカン・ドリーム
米国発、オンリーワンの日本人漫画家が切り開くティーンコミック市場
更新日 : 2010年09月07日
(火)
第3章 ホームレス→結婚→離婚。どん底からの脱出
ミサコ・ロックス!: ニューヨークのストリート・シアターでは、人形師になるべく修行していたのですが、人形師で食べていくなんて不可能で、一時はホームレスみたいな状態でした。マンハッタンの公園で過ごしたり、ゴミ箱をあさったりしたこともあります。でも、そういう過程があったからこそ、今があるんです。
アメリカは移民の国ですから、誰も優しくなんかないんですよ。特にニューヨークなんて本当に厳しい世界で、勝ち負けがはっきりしています。自分の意見を言わなければ捨てられるというような場所なので、そこである程度サバイバルしました。ブルックリンで中学校の先生をやったり、大道芸人のようなことをやったりました。あまり治安のよくない所だったので学校は荒れていました。そこで1年以上教えたことで、随分鍛えられました。
その後、結婚してウィスコンシン州に引っ越しました。これがまたド田舎で、知らない人から「ハーイ、ミサコ!」と声を掛けられたりするような、全くプライバシーがない町でした。そういう街で(元)旦那との関係が悪化したんですけど、私の友達=彼の友達だったので味方がいなくて落ち込んで、鬱状態になりました。そのとき初めて、「私は何をしにアメリカに来たのか」と真剣に考えたんです。
その頃、町の子ども向け美術館でアルバイトをしていたのですが、子どもたちが私に、「このアニメ、知ってる?」と、『ドラゴンボールZ』や『セーラームーン』のことを聞くんです。イベントでは『ポケモン』のコスプレをしている子がいたり。私は、この日本のアニメの普及にものすごく衝撃を受けました。日本に住んでいたときは、私も『りぼん』や『なかよし』を読んでいましたけど、ビジネスになるとは思ってもいなかった分野です。
子どもたちが「今、すごいんだよ。毎日テレビでやってるよ。図書館に漫画もあるから見に行けば?」と言うので行ってみました。図書館の本棚に、英語に訳された漫画がぎっしりあるのを目にしたとき、「もしかしたら、私、これなんじゃないか?」って思ったんです。落ちるところまで落ちたから、もう怖いものはない。このまま日本に逃げ帰るより、「ここで何か一発でかいことをして、当たったらアメリカに残ろう!」と決めたんです。それで、コミックデビューを果たすことになったんです。
そのとき既に私は、『The Onion』というアメリカン・ジョークを連発する新聞でイラストを描いていました。ヨーロッパやアメリカのおしゃれな大学生が読む人気の新聞で、イラストのファンもいたので、それをきっかけにしようと思いました。それを16ページにまとめた自主出版のようなものをつくって、出版社に「プレゼンしたいから会ってくれ」と電話をかけまくりました。
アポイントが取れると、プレゼン資料をつくりました。登場人物のプロフィール、粗筋、第1話分は完結しているサンプル・ストーリー、シーンのサンプルパネル(漫画でいうコマみたいなものも)、合計50ページぐらいのものをつくりました。
6社に見せましたが、最初は断られてばかり。でもそこで引き下がらずに、「どこが悪いんですか?」と食い下がって、編集者からアドバイスをもらって描き直しました。そうして1年後にようやく「いいね」と言ってもらえるようになったんです。それがディズニー系のハイペリオン・ブックス社でした。
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http://www.academyhills.com/note/opinion/10082503misakorocks.html
ミサコ・ロックス!が体現するアメリカン・ドリーム インデックス
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第1章 「コミック=漫画」じゃない!?アメリカのコミックは多種多様
2010年08月25日 (水)
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第2章 執念とプレゼン力で、憧れのアメリカ行きを実現
2010年09月01日 (水)
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第3章 ホームレス→結婚→離婚。どん底からの脱出
2010年09月07日 (火)
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第4章 映画は過激なのに、コミックは保守的なアメリカ
2010年09月10日 (金)
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第5章 プロモーションはアーティストが自分でやる
2010年09月17日 (金)
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第6章 憧れのアメリカで受けた差別。異文化の架け橋としての使命
2010年09月21日 (火)
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第7章 キンドルやiPadの影響は、紙のコミックにはあまりない(はず)
2010年09月22日 (水)
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第8章 ファンと共に成長し、様々な世代に通じるアーティストになりたい
2010年09月24日 (金)
該当講座
米国発、オンリーワンの日本人漫画家が切り開くティーンコミック市場
~ミサコ・ロックス!が体現するアメリカン・ドリーム~
ミサコ・ロックス!(コミック・アーティスト)
西川 英彦(法政大学教授)
日本から「輸出」されたアニメ、マンガではなく、アメリカを舞台にアメリカ人の登場人物を描く「純アメリカ産・マンガ」を創作するミサコ氏。米国のティーンコミック市場を切り開き、アメリカ発・唯一の日本人漫画家として独自の地位を確立した彼女に、アメリカのコミック市場の現状・特性や「日本オタク」の生態から現代のティーンの事情まで伺う貴重なセッションです。日本のソフト・パワーの動向に関心のある方にもお勧めです。
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