記事・レポート
環境政策キーパーソンが語る環境外交と国内政策
~『日経エコロジー』提携講座:「25%削減」への道筋
注目のオピニオン
更新日 : 2010年07月21日
(水)
第5章 コペンハーゲン合意「take note(留意する)」の舞台裏
福山哲郎: COP15のコペンハーゲン合意では、「気温上昇を2度以内に抑える」と明示されました。また、先進国は2020年までの削減目標を、途上国は削減行動を2010年1月末までに提出することになりました。
掲げた目標に対するMRV(Measurable、Reportable、Verifiable:測定・報告・検証可能性)が争点になっていましたが、最終的には担保されました。先進国の支援によってなされる途上国の削減行動はMRVの対象になりますし、自主的なものについても一定程度確保されました。また、資金支援は2012年までの短期で300億ドル、2020年までの中長期で1,000億ドルを目指すことで先進国と途上国が折り合いました。
2013年以降の包括的な枠組みに関しては、COP16(メキシコ)で採択を目指すということで、「コペンハーゲン合意にtake note(留意する)」とされました。
きょうの話の核となるのは「国際交渉の変化」だと思います。京都議定書から離脱していたアメリカがオバマ大統領のもとグリーン・ニューディールを掲げ、削減義務が課せられていなかった中国がコミットしてきたのです。これは大きな変化であり、大きな前進だと思います。
それから「G77+中国」と、これまではひとくくりにされていた途上国にも変化がありました。ツバルやモルディブ、フィジーなどの脆弱な途上国と、中国のような新興国との間の利害衝突が顕在化したのです。
COP15の合意に至る道のりは、大変なものでした。開催終了予定日の前日に女王陛下の晩餐会がありましたが、そのときですら、まだ合意の原案は提出されていませんでした。そのため晩餐会が終わった夜10時過ぎに、先進国や途上国の有志約30カ国・機関の首脳らが集まって議論を始めたのです。
議論の中で鳩山総理が「1つの政治合意案をまとめよう」と発言し、各国の先進国首脳が同意する空気になり、最初の案が翌朝、明け方の3時頃にできました。しかし事務方の議論でまとまらず、午前8時に各国首脳が再度集まり、10時間以上も議論しました。その間、他の国の首脳は外の会場で待ちぼうけです。
そうして最終日の夜、ようやくまとまったものを総会にかけたのです。しかし「この案に合意してほしい」と言った途端、会議は紛糾。国連はコンセンサス方式ですから、満場一致でないとどんな案も採択されません。結局、COP15は会期を延長することになりました。
明け方の4時ぐらいに休憩になったとき、私は目の前が真っ暗になりました。アメリカもイギリスもフランスも、みんな頭を抱えていました。このときばかりは、日本、EU、オーストラリア、ロシア、アメリカは一枚岩だったと思います。そういう状況の中で、5カ国ぐらいがどうしても賛成しなかったのです。
それから6時間ぐらい断続的に非公式の協議をして、ようやく「take note(留意する)」ということでCOP決定に至ったのです。
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福山哲郎 (外務副大臣/民主党参議院議員)
福山 哲郎(外務副大臣/民主党参議院議員)
民主党きっての環境政策通である福山議員。「CO2を2020年までに1990年対比で25%削減する」という鳩山イニシアチブを草案した人物であり、国際交渉の最前線で日本の環境行政の舵取りをしています。難航するポスト京都議定書の国際交渉における日本の方針と、国内環境政策について、鳩山政権の環境政策キーパーソンに直接伺うまたとない貴重なセッションです。
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