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環境政策キーパーソンが語る環境外交と国内政策

~『日経エコロジー』提携講座:「25%削減」への道筋

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更新日 : 2010年06月23日 (水)

第2章 京都議定書後の国際情勢の変化を見逃すな

福山哲郎氏

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福山哲郎: COP3の京都議定書で、日本は温室効果ガス排出量マイナス6%(1990年比)を受け入れました。当時は外務省も環境省も経産省も、「日本の外交の成功だ」と語っていました。ところがこの約束が果たせない状況になってくると「京都議定書は失敗だった」「日本は絞り尽くしたのだからこれ以上は絞れない」という議論が出てきました。

これを私は野党時代に、「国内対策が遅れたからといって、京都議定書を悪者にするのはルール違反じゃないか」という気分で見ていました。

EUでは2005年にEU-ETS(EU域内排出量取引制度)がスタートし、ダボス会議では異常気象が、グレンイーグルズ・G8サミットではイギリスのブレア首相を中心に気候変動が、それぞれテーマとして取り上げられました。2006年には「気候変動を放置すればGDPに損失が出る」というスターン報告が公表されました。

そうした流れの中で、私は「世界中が気候変動にコミットし、経済モデルの競争を始めている。ブッシュ政権のアメリカは京都議定書から離脱したが、その間にEUは確実に世界モデルをつくろうとしている。日本のように省エネ技術・省エネ能力を持っている国こそ早くコミットするべきだ」と国会で主張し続けたのですが、なかなか聞き入れていただけませんでした。

気候変動をめぐる状況を見ると、まず「生態系の破壊を食い止める」という目的があります。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は第4次評価報告書で、温暖化の原因は90%以上の確率で人為的起源によるものだと結論づけました。このデータには異論もありますが、現実の国際的なパワーゲームの中では、IPCCの議論を前提に物事が進んでいます。

CO2懐疑論というものもあります。私は専門家の懐疑論には一理あると思いますが、IPCCの結論は世界各国の数千人の科学者たちが10年以上にわたって検証してきたものですから、やはりこれを前提に議論を進めるべきだと考えています。

2005年のEU-ETSに続き、アメリカ、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアなどが排出量取引制度の検討を始め、国際炭素市場は確実に現実のものとなりつつあります。低炭素社会づくりのモデル競争も始まっていて、例えばドイツは太陽光パネルに固定価格買取制度を導入し、あっという間に太陽光の発電量が世界一になりました。ドイツは住宅の省エネ化の制度もつくっています。

CCS(Carbon Capture and Storage:炭素隔離貯留技術)、燃料電池、電気自動車、再生可能エネルギー、CO2の「見える化」など、技術革新の可能性は大いにあります。また、途上国の参加を踏まえて、森林伐採の再定義や投資の推進について、国際的ルールづくりなどの新たなメカニズムも検討されています。

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~鳩山政権の環境政策キーパーソンが語る環境外交と国内政策~

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福山哲郎 (外務副大臣/民主党参議院議員)

福山 哲郎(外務副大臣/民主党参議院議員)
民主党きっての環境政策通である福山議員。「CO2を2020年までに1990年対比で25%削減する」という鳩山イニシアチブを草案した人物であり、国際交渉の最前線で日本の環境行政の舵取りをしています。難航するポスト京都議定書の国際交渉における日本の方針と、国内環境政策について、鳩山政権の環境政策キーパーソンに直接伺うまたとない貴重なセッションです。


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